テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『首すじに落ちる熱 ― 続き』
「……なんで、そんなに震えてんの?」
耳元で囁く声は、さっきよりも低くて、わざとらしく甘かった。
「ちが……っ、そんなつもりじゃ……」
「“そんなつもり”って、どんなつもり?」
ゆっくり、あなたの顎先を持ち上げる指。逃げられない。いや、逃げたくないのかもしれない。
「元貴くん……どうして……」
「ねぇ……俺が、誰にでもこんなことすると思ってる?」
「……っ、ちが……」
「なら、なんで目そらすの? 俺のこと、見て?」
目の前にあるのは、真剣な眼差し。いつものふわっとした雰囲気じゃない。まるで獣のような鋭さと、熱を孕んだ瞳。
「……ずっと、こうしたかったんだよ?」
「え……」
「気づかなかった? 俺が、どれだけ君のこと見てたか」
「……」
「君が笑うたびに、他の誰かと話すたびに……嫉妬して、馬鹿みたいにイライラしてさ」
彼の顔がさらに近づいて、額が触れる。
「もう我慢したくない」
「も、元貴くん、こんなの……」
「“こんなの”って、どういう意味?」
「こんなふうにされたら……私、もう……」
「もう、何?」
少し笑って、彼の指がそっとあなたの手を取る。
「言って。言ってくれないと、キスするよ?」
「……っ、ひどい」
「うん、ひどいよ。……君のこと、こんなに欲しがってるんだから」
彼の唇が、今度は首すじじゃなくて、あなたの唇にすっと近づいて――
「……ねぇ。もう、俺のになってよ」
そう囁いた瞬間、世界がそっと、甘くとろけた。