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八雲瑠月
3,936
「くうっ!? 思ったより速い!? さすが人気の同人漫画家は集客力が段違いね……」
サラマンダー娘のアバターの友美は肩を押さえ、一歩を踏み出すが、その左足はびっこを引き、肩と左足から水漏れのように血が滴り落ち、舞台の木床に血だまりを作り始めた。
「ツンデレ!?」
思わず書也は女性化したシェヘラザードのアバターを動かし、友美のアバターに駆け寄ろうとしていた。それだけVRの世界でも、リアルに近いほどの表現力だった。幽美の幽霊アバターに肩を掴まれるまでは友美のアバターに駆け寄っていただろう。
『中二病、落ち着いて。ここはVRだからリアルのツンデレに何も起きない』
「分かっています。でも……」
「大丈夫……ツンデレの作品は教子先生の言う通り、本当に力作。だって私も批評したもの」
「じゃあ、ヤンデレ先輩の所にも」
友美のサラマンダー娘の友美のアバターは落ち着いているように思えた。グラフィックデザイナー部によれば、このVRゴーグルは確かモーションキャブチャーにより、表情すらもアバターに反映されるはずだった。
『おっと!? ロボ太の攻撃エフェクトがツンデレに命中した事から考え、ロボ太が大幅にリードか? ロボ太の漫画をアップロードしてからの一週間後の閲覧数は5101、ブックマーク数350、いいね数144、コメント数8。対するツンデレの閲覧数は2502、ブックマーク数155、いいね数77、コメント数0と大きく差をつけられた!?』
「くく。君の小説はやっぱりたいした事ないじゃないか。いや、当然かな。だって漫画と小説じゃ、絶対に漫画の方が上だ。絵と文字じゃ、絵の方が見たくなるし、読みやすい。君もそう思うだろ? この現状を見れば、尚更だ」
ロボ太がニヤケ顔を見せるが、それでもツンデレのアバターは余裕な表情を見せる。
「そうは思わないわ! どんなジャンルでも、作品は面白い方が勝つわ!」
「やっぱり認知数じゃ、ロボ太の方が上だ。いくらツンデレの小説が面白くても、読者が集まらなければ勝てないんじゃ……」
書也が思わず不安な声を漏らす。
ボロボロのサラマンダー娘のアバターの友美。見た目通りにこんな大差をつけられたら、友美の精神もだいぶやられているだろう。
「ふふ。書也君。君も彼女の負けず嫌いは知っているだろ? ツンデレは私にも小説を見せに来たよ。彼女は君が思ったより本番に強く、負けず嫌い、そして努力家でもある。勝つ為にはどんな手段をも使うだろう。もちろん私と違って、正々堂々とね」
メカ娘のアバターの理香は新しくできた実験生物でも見るかのように気味悪い笑みを浮かべた。
「マッドサイエンティスト先輩。ツンデレはここから巻き返せるって言うんですか!?」
「へこたれない精神はさすがだツンデレ! だが、ここからの巻き返しはない!」
ロボ太のアバターのベルトから、今度はレーザーソードを取り出し、神速で居合のように友美のサラマンダー娘の腹部を斬り裂いていた。鮮血と共に友美アバターは膝を突いた。胸を押さえる手からは、さらに血が滴り落ちる。
『二週間目もやはりロボ太がリード! 閲覧数は6666、ブックマーク数450、いいね数200、コメント数20。対するツンデレの閲覧数は5555、ブックマーク数356、いいね数160、コメント数8』
「またリードされたか……でも! ここからよ!」
「また強がりか。いい加減に諦めなよ。ボクの作品の人気度から分かるだろ? 絶対に勝てないってさ」
「そうかしら?」
それでも余裕な表情を見せる友美アバターにロボ太のアバターは思わず舌打ちをする。
「いいだろう! 君がそういう態度をとるなら、君の作品を真っ二つにするまでだ!」
ロボ太はレーザーソードを振り下ろし、マイクのハウリングのようなを音を上げ、そのレーザーの刃を構え直した。
友美のアバターは指で火の魔法陣を描き、そこから燃え続ける火剣を取り出し、構えた。
「今更、反撃か? もう無駄だ! 作品と一緒に真っ二つになれ!」
ロボ太のアバターのレーザーソードが友美の頭上に迫る刹那。友美アバターの火剣がレーザーソードを受け止め、刃がバチバチと火花を散らす。その友美アバターの炎の刃はロボ太のレーザーソードをわずかに押し返しているように思えた。
「馬鹿な!? 受け止めただと!? しかも、このボクが押されている!?」
『おっと!? 三週間目にきて、いきなりツンデレが巻き返したのか!? ロボ太の閲覧数は6766、ブックマーク数470、いいね数205、コメント数30。対するツンデレの閲覧数は6800、ブックマーク数475、いいね数210、コメント数25! ツンデレがコメント数以外を上回った!』
「そんな馬鹿な!? 後半からどうやってボクの知名度を上回った!? 分かったぞツンデレ! お、お前は密かにエロ同人小説でも書いていて、ペンネームを晒したんだろ! そうでなければ、ボクに追いつけない!」
「何を言ってんのよ? いろんなSNSを使って、URLのリンクを貼って、読者を集めただけよ。ドジっ子食いしん坊の表紙絵も良かったから、読者がついてきてくれたかもね」
「たかがリンクと表紙絵で読者が集まったって言うのか!?」
「それより、あんたのSNS、炎上してない? わたしのところに飛び火しているけど?」
「はっ? 何を言ってるんだ? ボクが炎上する事なんてない!? こうやって信頼できる読者が集まって……何だこの数値は!? 三週間目からは閲覧数が100しか上がってない? いや、それどころかブックマーク数も10しか上がってないし、いいねも5しか上がってないじゃないか!? ど、どうして?」
「そう。それはご愁傷様!」
友美アバターが火剣を力強く押すと、そのレーザーソードとロボ太アバターは炎の刃に斬り裂かれ、炎上し、爆発した。
「ばかなああああっ!?」
『四週間目でツンデレが逆転勝利! な、何が起こったんだ!? ロボ太の閲覧数は6866、ブックマーク数476、いいね数207、コメント数40。対するツンデレの閲覧数は8850、ブックマーク数512、いいね数324、コメント数30! ロボ太の総合ポイントは13351ポイント。ツンデレの総合ポイントは16190ポイントとなり、まさかのツンデレの圧勝だ!』
「……どうして……どうして……どうして……」
倒れたロボ太のアバターは燃え続け、機械がショートしたように身体中に火花を散らし、壊れたロボットのように同じ言葉を連呼する。
『審査員会から報告があった。ロボ太が投稿サイトにアップした漫画作品はツンデレの言う通りに本当に炎上しているようだな。しかも、指摘コメントでマイナス100ポイントの減点だ。どうして、こうなっちまったんだろうね』
聞姫が思わず苦笑いして言う。
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