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八雲瑠月
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『やはり予測した通りになってしまいましたね』
花美先生が溜息をついたように言う。
『と、言いますと?』
聞姫が首を傾げて花美に質問する。
『ロボ太君は設定ありきの漫画を描いてしまったんです。短編の漫画ではその設定を活かしきれずに続編を匂わすような展開で終わってしまいました。出す予定のパワードアーマーも予告通りに出せずに炎上してしまった。そして運が悪かったのは、風の噂か何処かで調べたのか、ラノケンとマンケンと勝負する話を知った読者が、炎上するようにツンデレさんが工作していると噂しました』
『しかし、対戦相手は事前に告知される訳ではないのに……ツンデレに飛び火したんです?』
『彼女の過去にネット小説にアップされていた題材が同じ巨大ロボットだったからです。しかも、ツンデレさんは多くのSNSを利用し、宣伝していた為に偶然にもピックアップされてしまったのです』
『そんな偶然が!? しかし、そしたらツンデレの方もポイントを下げるのでは?』
『いいえ、彼女にとってはそれが起爆剤となりました。敵を知るにはまず、その作品を知って、批評をしなければならない。ですが、彼女の小説はロボ太君のそれより面白く、味方につけてしまったんです。それにツンデレさんに飛び火した時の対応も良かった。一人一人に炎上工作をしてないと、真摯に対応していました。メンタルの強さとそして運、力作を書いた彼女の完全勝利です。敵ながらあっぱれでしたツンデレさん』
『勝者ツンデレ! ラノケン、この勝利で見事にイーブンにした!』
口姫が勝者を告げると、観客席から歓声が上がる。
『ツンデレ! お前の確蟹VⅤ、面白かったぞ!』
『次の確蟹VⅤの続編も期待してるぞ!』
観客席のコメントに友美アバターは頭を掻き、照れながらも手を振って、エレベーターに戻っていく。
それから次は幽美ことヤンデレの番となり、対戦相手は明智紗麓ことペンネーム、シャーロック・クィーンのアバターが対戦相手となった。
シャーロックはペンネームの通りにガチガチで王道な推理漫画で勝負を仕掛けてきた。対するヤンデレはホラー小説で、異能を持った少年の力が暴走し、家族や親戚が殺されていく話であった。シャーロックは推理小説家の娘で強敵であったが、探偵の主人公ホームズが犯人をはめて陥れる手法で解決させ、自殺させた事が原因で読後感を悪くさせた事が敗因となり、僅差のポイントでヤンデレが勝利となった。
次に理香のペンネーム、マッドサイエンティストと神狐晴明こと白面九尾との対戦となった。マッドサイエンティストの小説は地球に来た異星人が人間にオーバーテクノロジーを与え、破滅するさまを描くダークコメディで、倫理観はやはり無かった。対して白面九尾が描く漫画は神様が不幸な人間に神通力で手助けをするが、失敗して大事件になるドタバタコメディであった。初回はマッドサイエンティストが数値を上げていたが、白面九尾が二週目から数値を押し返し、三週目、四週目と数値をさらに上げていき、マッドサイエンティストは完全敗北となった。やはりマッドサイエンティストの倫理観が崩れた小説よりも白面九尾の明るいドタバタコメディ漫画が読者に受け入れられたのだ。
そして問題の愛ことペンネーム、ドジっ子食いしん坊の番となった。
「大丈夫かドジっ子食いしん坊?」
上昇していくエレベーター内でキューピッドの愛のアバターは自分の頬を両手で叩き、自ら気合を入れた。
「うん! 大丈夫! 書也君のアドバイス通りにやったら、良い感じになったと思うよ」
「おい、名前」
シェヘラザードのアバターの書也が思わず頭を押さえる。メタバース内では生徒だけでなく、一般人もアバターで参加でき、ラノケン対マンケンの対戦状況は動画でもリアルタイムで視聴できる為、プライバシーを考慮して、ペンネーム呼びを推奨していた。
「ご、ごめん!? 中二病君」
「疑う訳ではありませんが、本当に大丈夫ですの? 確かに面白くなりますが、諸刃の刃ですわ。誤字脱字がバレましたら、大惨事ですわ」
エロスのアバターが心配そうに言う。
「大丈夫です。俺自身も誤字脱字チェックしましたし、トリプルチェックはマッドサイエンティスト先輩やツンデレにも協力してもらいました」
「まさか私の提案を受け入れるとは思わなかったよ中二病君。でも、ドジっ子食いしん坊は芸人で言えば天然素材。それを活かす手はないからね」
理香のアバターが笑みを浮かべて言う。まさしくペンネーム通りにマッドサイエンティストが倫理を無視した実験でも成功させたような不気味な微笑みであった。
「本当にゲスな発想……わたしも本当は反対! でも、ドジっ子食いしん坊がどうしてもと言うから、許可した!」
幽美アバターが機嫌を悪くしたかのように頬を膨らませ、理香の提案を受け入れた書也を見た。
「ごめんなさい|ヤンデレ先輩。でも、この方法でないとドジっ子食いしん坊は勝てないと思ったんです。それにこの方法はコメディと相性が良いのは確かなんです」
「そ・れ・で・も!」
幽美の幽霊アバターが書也のアバターに憑りつく勢いで迫る。すると、愛のアバターが優しく幽美アバターの背中を抱きしめる。
「大丈夫だよ。ヤンデレちゃん。わたしがこの方法が良いって、決めたんだよ。それにわたしはどんな手段を使っても勝って、この部活にいたいから!」
エレベーターのチーンという音と共に止まると、愛のアバターは力強く足を踏み込み、開いた扉を通り抜けた。