注意!フラ菊です。没になるかも。
それでもいい方どうぞ!
1番奥の1番狭い、でも窓から眺める景色はとても絵的で、、、そんな部屋。そんな部屋に君はいる。
目を閉じて深呼吸をスゥっとする。そしてドアを開ける、少し消毒臭い空気が顔にあたると思えば優しい風が後から包んだ。
「また来てくださったんですか、ボヌフォアさん。」
「まぁね。」
本田菊、俺の恋人、、、だった人。さらりと黒髪を揺らして何かの本を読んでいる。
「窓開けて、、、寒くない?」
「少し、、、でも今は風にあたりたい気分でして」
「そっか。」
「調子はどう?その、、、記憶は、さ。」
「、、、いえ。」
菊は、記憶がない。
全くないというわけではない。が、もちろん俺の記憶は無く、ほとんどの事は思い出すのに時間がかかるそうだ。菊は昔から体が弱い。その為、入院すること自体慣れっこだった。けれど、薬の量が増えるたびに心への負担はかかっていった。
「菊ちゃん、また痩せた?」
「あら、バレてしまいました?」
「バレるさ。誰の目から見ても、、、」
会うたび、菊は痩せてゆく。目元にも隈がある。寝ていないのか、、、。
「ねぇ、食べてよ。頼むからさ。」
「、、、そ、うですね。頑張って今度は食べてみます。」
そのセリフ、、、何回目だよ。
「あ、お花。今日もありがとうございます。こんな私のために何度も何度も来てくださって、、、。」
そう何度も何度も。これじゃぁ別れた意味がない。俺は、菊が弱ってく姿を見たくなくて、この先を見たくなくて、幸せのまんま終わりたかったから、別れたのに。今もこうして花を理由に会いに行く。この調子じゃぁきっと、、、どうせ思い出してはくれないのに。
「じゃぁ俺行くよ」
「もう行ってしまわれるのですか」
「、、、うん。」
「そうですか、、、それではまた。お気をつけて。」
「菊ちゃんも体調にはちゃんと気をつけて。じゃね。」
ガラリとドアを閉める。来た時よりも強く閉めた。君がこんなんになってから俺は、、、君と話すといつも腹が立つよ。あぁ、こんな気持ちになるならもう辞めてしまおう。辞めてしまえれば、、、
「楽なんだけどなぁ。」
「そんで、また来ちゃうんだよな。」
毎度毎度、俺もご苦労さんだよ。だってあんな寂しそうな顔でさ、またなんて言われたら、、、。
「はぁぁあ、、、。」
静かに大きくため息を吐いた。そして俺は君にまた花を届けるため、会いに行くため、憂鬱な気持ちでドアノブに手をかける。俺はいつも考えてる”もしも”がある。ドアを開けたら君が泣きながら言うんだ。「ただいま、フランシスさん。」ってね。前会った時よりも顔色も良くて、弱々しくなく、真っ直ぐと俺を見て、呼んでくれる君の姿を。そのまんまよりを戻して、、、なんてね。憂鬱な気持ちの中に期待を今日も込めてドアを開く。
「いらっしゃい、ボヌフォアさん。」
「うーん、そんなわけないもんねぇ。」
「?」
小さな期待はすぐに溶けた。まぁそうだよな。
1人がっかりしてる俺を見て菊は不思議そうにしていた。そしてフッと微笑む。
「なにか残念な事でもあったのですか?」
「まぁね、すごぉく残念なことがね。」
「なんです?」
「教えな〜い。」
「あら、そんなに行っておいて。」
菊はぷくりと頬を膨らます。その姿がなんとも愛おし、、、いや元恋人に何を考えているんだか。
「お花、ありがとうございます。」
「いえいえ〜。どういたしまして。」
「可愛いお花ですね。小さくて、、、」
「ん?あぁ、これはクリスマスローズ。」
「クリスマスローズ?」
「そ。」
どうやら菊は今日持ってきた花が気になるようだ。まぁいつも大きめの花を持ってきてたからかな。
「もう3月なのにクリスマスなんですか?」
「それは、ヨーロッパでは12月ごろに咲くからさ。日本ではどうやら3月に咲くみたいだね。」
「へぇ。」
興味津々に手元の花を見つめる菊は、記憶はなくした前とそんなに変わらないと思った。
「そうそう、花言葉は確か、、、、っぁ」
「どうされました?」
「いや、、、忘れちゃった。」
「?そうですか。」
そ、忘れた事にしとこ。
「これ、、、気に入った?」
「えぇ。というかあなたからいただいた花は全部私のお気に入りです。」
菊は優しく俺の手から花をとって微笑んでみせた。
「!!うっわ、、、。」
「ボヌフォアさん?」
「い、いやぁ、、、菊はずるいなぁって、、、。」
「え?」
「いや、なんでもない。」
ずるいよなぁ。俺の気も知らないでさ。
その後も2人で少し話して気づいたらもう日は落ちかけてた。しまった。長居しすぎた。
「じゃぁ俺もう行くよ。」
「え?、、、あら、もうこんな時間でしたか。」
「うん、じゃぁね。」
「えぇ、お話できて楽しかったです。」
「おー、俺も。それじゃ」
「ねぇボヌフォアさん。」
「ん?」
「へ?、っえ、、と、、、。」
ドキッと心臓から音が出た。突然そんな事をいうから俺は明らかに焦っている。菊には俺と恋人だったということは言っていない。友達という事にしてある。菊のことだ、きっと物凄くショックだろう。友達と言った時でさえあんなに苦しそうだったのだから。俺は焦りを隠すように気を取り直す。
「なにいってるの、菊ちゃん。俺とお前はただの友達だよ。いきなりどうしたんだよ。」
「そう、ですよね。そうですよね。すみません、変な事を言ってしまって。さようなら。」
「いや、いいんだ。そんじゃ、、、。」
今日は少し弱めにドアを閉めた。俺は変な感じになったまま病室を後にした。
「そういえば、飯食ったかな。」
帰りにふと浮かんだ一つの疑問は5歩も歩かないうちに頭から消えた。
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