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第22話:繰り返される改変
国家管理庁の中枢施設──秩序の塔。
墨染めの壁に覆われ、無数の光線が網の目のように走るその場所は、市民にとって「完全なる未来修正の象徴」だった。
塔の入口には灰色の制服を纏った管理職トピオワンダーたちが整列し、無表情のまま群衆を睨んでいた。
市民たちは端末で「今日の修正ログ」を確認しながら、安心した笑顔を浮かべている。
「昨日の火災はなかったことになったらしいわ」
「国家が管理してくれてるから、安全なんだ」
クオンは灰色の外套を翻し、群衆の影に紛れて塔の内部へ足を踏み入れた。
灰色の瞳は冷ややかに輝き、額の第三の眼が脈打っている。
そこにいたのは協力者のサフィールだった。
灰色の髪を編み込み、モカのドレスを纏った彼女は紫の瞳でクオンを見据える。
「ここにある記録を見ればわかる。国家が何を隠してきたのか。」
案内された部屋の中央には、巨大な水晶状の記録装置があった。
そこに触れた瞬間、クオンの第三の眼に膨大な映像が流れ込む。
──大規模事故の記録。だが数秒後、まるで上書きされたように「事故は未然に防がれた」と置き換わる。
──戦争の痕跡。だがその記録も塗り潰され、平和的な交渉の映像に変わる。
──「鏡の世界」という言葉が発せられた記録。次の瞬間、その部分だけが消去されている。
「……これは……」
クオンの唇が震える。
サフィールは低く告げた。
「国家はタブーを隠すために、過去を何度も改変しているの。
秩序を守るためじゃない。都合の悪い“真実”を消すために。」
クオンの灰色の瞳が強く光った。
「つまり……人々が信じている未来も過去も、すべては“偽りの秩序”か。」
その時、背後の扉が音を立てて開いた。
ラディウスが立っていた。
灰色の髪を短く刈り、緑の瞳は氷のように冷たい。
濃墨のマントを翻し、第三の眼を鋭く光らせている。
「クオン。国家の記録に触れるとは、死より重い罪だ。」
群衆の外では、市民たちが今日の未来修正報告を眺めていた。
「今日も平和だね」
「過去はきれいに整えられるものだ」
だがクオンの視界には、確かに「鏡の世界」の残像が重なっていた。
その歪んだ都市は、秩序が繰り返し隠してきたものの証だった。
「俺は……偽りの秩序には従わない。
命を守る正義のために、この真実を暴く。」
第三の眼が閃光のように光を放ち、塔の内部が揺らいだ。
秩序の根幹に刻まれた歪みが、ついに表に出ようとしていた。
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