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「俺らはーーーと信じてる。ーーーでほしい。ーーーない。約束だ。」
よく晴れた空、容赦なく照りつける太陽。
とても暑く感じそうな夏の日だ。
「今年も、この季節が来たか…。」
私は、そう思いながらフラフラしていた。
すると、幼なじみの鏡草(あきしげ)を見つけた。
鏡草(あきしげ)はとても暗い顔をしていて、手には仏花と白い朝顔が植わっている鉢も持っている。
何処に行くのか気になって、私は付いて行くことにした。
行き先は知らないが誰かに会うのなら、そんな顔をするなと言いたくなるくらい顔が暗い。
私が何か楽しくなるような話をしても、ずっと暗いままだ。
どうしたものかと思っていると目的地に着いた。
そこは……墓地だった。
墓地に入ると鏡草は、ある家のお墓で止まり花をお供えした。
鏡草の家のお墓かなと思い後ろから覗くと、鏡草の家ではなく私の家のお墓だった。
鏡草は私のお墓参りをしに来てくれたらしい。
私はこの時、暗い顔になるのが理解した。
自分が人間ではないことは理解はしていたけど、改めて目の前にすると辛くなる。
「秋朝(あきゆ)、今日も来たよ。今日は、白い朝顔も持ってきた。綺麗だろ?俺が育てたんだ、秋朝(あきゆ)のために。」
そうなんだ…とても綺麗だよ。
「病弱だった秋朝はよく入退院を繰り返していて入院する度に俺がお見舞いに行ってたの覚えてるか?」
勿論、覚えているよ。
来てくれた時は凄く嬉しかった。
「俺がお見舞いに行くと秋朝は凄く嬉しそうにしてたよな。それを見て俺も嬉しかったよ。」
そうなんだ。
「なぁ…白い朝顔を秋朝にあげたこと覚えてるか?」
覚えてるよ。
その時、嬉しくてそこから白い朝顔が好きになったんだから。
それに、自分の名前にも関係あるからね。
「その時に約束したこと覚えてるか?」
約束…?
そう言えばこの季節になると、あれを思い出す。
「俺らはーーーと信じてる。ーーーでほしい。ーーーないから。約束だ。」
多分このことだろう。
だけど、肝心な部分が思い出せない。
「その約束なんだけど、この白い朝顔に関係しているんだ。」
えっ?
そうなの?
「白い朝顔の花言葉は、固い絆、溢れる喜び。最初はただの幼なじみだと思っていた。でも秋朝と関わって色んな事を知っていくうちに、秋朝のことが気になった。それは俺だけではないと知ってお互い助け合う関係になったよな。それから俺らは色んな苦難を乗り越えてきた。俺らの絆は固くなっていってるって感じた。」
鏡草…。
「実はあの時は言えなかったことがある。」えっ?
何?
「そりゃ…気になるよな。あの時、俺は仕事もプライベートも上手くいかなくて少し自暴自棄になりかけていた。だけど日に日に弱っていく秋朝を見ていたら、せめて秋朝の前ではいつも通りでいなきゃと思って、いつも通りでいた。」
そう…だったんだ…。
「うん…。約束した日、突然不安になった。秋朝が遠くへ行くように感じたから。」
そっか…まぁ、今は遠くには行ってないけど、鏡草の前からはいなくなっちゃったね。
鏡草からしたら遠くに行ったことになるかもしれないけど。
「そうだな。なぁ…もう一度聞く。秋朝は、あの約束覚えてるか?」
うーん…肝心な部分が思い出せない。
「そっか…。じゃあ…もう一度、言うよ。」
鏡草はそう言うと、いきなり私の方へ向いた。
私は驚いた。
「俺らは固い絆で結ばれてると信じてる。なのに、こんな事を言うのは可笑しいかもしれないが…この先ずっと俺のこと忘れないでほしい。俺も秋朝のことは絶対に忘れない。約束だ。」
私は驚きと同時に思い出した。
あの時、鏡草はこんなことを言っていた。
何で、こんなことを忘れていたんだろう…。
私は申し訳なさと思い出せたという喜びが溢れてきた。
無いはずの涙が溢れてくる…。
「泣いてるところ悪いが続き言っても良いか?」
うん、良いよ。
「秋朝がいなくなってから数年経つ。今の俺の気持ちを伝えても良いか?」
うん、良いよ。
聞く。
「ありがとう。あの時は不安からあんなことを言ってしまった。だけど…あれから数年経っても俺は秋朝のことを忘れたことはない。勿論、俺らは白い朝顔の花言葉にある 固い絆 で結ばれてると今でも信じてる。もし、あっちに逝くことになっても俺のことを忘れないで。」
うん。私も鏡草のこと忘れたことはないよ。
ありがとう。
私だって、鏡草とは固い絆で結ばれてると今でも信じてる。
ずっと忘れない。
「ありがとう…秋朝。」
それから私達は久し振りに他愛ない話をした。
「にしても驚いているな。俺が霊感体質なの忘れたのか?」
鏡草はそう言うと笑った。
完全に忘れてました…。
いつから気付いていたのか…。
「秋朝が俺に付いてきたところから。」
えっ…早くからバレてるじゃん…。
「相手が悪かったな。」
そうだね。
「そう言えば…何で現世にいるんだ?」
何年も現世にいたから少しずつ忘れていたが思い出した。
鏡草と約束した言葉を思い出すため、そして…鏡草を見守りたかったから。
「そうか…ということは、まだ現世にいるってことだな。」
そうなるね。
「じゃあ、俺の家においでよ。今、独り暮らししてるからさ。」
えっ、良いの?
じゃあ、お邪魔します!
「おいで。あっ…そうだ、秋朝これからもよろしくな。」
うん!
こちらこそ、よろしくね。
私は鏡草との約束の言葉を思い出せずフラフラしていたが、今日は鏡草に会って思い出すことができた。
もうこれで未練はないと思っていたが、もう1つの未練である鏡草を見守っていこう。