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〜もう少しだけ、距離を縮めて1〜
ここはとある5人兄弟の住まう家。先日、新しく5歳の妹、千空が仲間入りしたばかりである。そんな石神家のリビングには長男と長女の2人がいた。
羽京(うーん…やっぱりまだ慣れないのかなぁ…)
現在土曜日の朝。食卓テーブルにて羽京はコップに入れた水を飲みながら横に座る幼い妹にじっと見つめられている。
2人が何故こんなに早い時間に起きているのかと言うと数分前に遡る。
“カタッ”
羽京「…ん…、?」
寝室で睡眠をしていた羽京は1階のリビングの方から音を拾い、目を覚ました。
羽京(…今何時だろ…)
時計は4時46分を示しており本来目覚ましをセットしている時間からすれば1時間以上早い時間だった。
羽京(…誰か目が覚めちゃって水を飲みに行ったのかな…まだ時間あるし寝よう…)
そう思った羽京は時計を見るために少しだけ起こした体を再び布団の中に埋めようとした。が、そのタイミングで奇妙な音が聞こえだした。
“ガタッガタガタッ”
羽京(…ん?)
その音は相変わらずリビングから聞こえており、木製の椅子を一生懸命動かそうとしている音に聞こえた。
羽京(…あぁ、これは弟達じゃないなぁ )
そう思い、音の発生源に検討を付けた羽京は布団に沈みかけた体をグッと起こし、リビングで困っているであろう小さなお姫様の元へと向かった。
羽京を含む兄弟達の部屋は2階にある。そこから階段を降りて左側に見えるのが最近迎え入れたお姫様と父、百夜の部屋だ。まだ幼いお姫様はもう少し大きくなるまで百夜と同室で過ごすだろう。そして、そんなお姫様の部屋の扉を見ると少しだけ隙間が空いている。中を覗けば案の定仕事で疲れて爆睡中の父、百夜の姿のみ。小さなお姫様の姿は見受けられなかった。そのため羽京は体をリビングへ向け、小さな光の灯るキッチンへと向かった。
羽京「おはよう、千空。お水を飲みに起きたの?」
羽京は小さなお姫様を見つけると”千空”と名前を呼んだ。千空はちょうど冷蔵庫の前へと椅子をくっ付け、その上へと乗ろうとしているところだった。羽京の呼び掛けに千空は居たことに気がついていなかったのか物凄く驚いた表情で羽京を見つめた。その手には百夜のスマホが握られている。暗闇を照らすライトとして百夜から拝借したらしい。
千空「ぁ…羽京…ぉ、はよ」
羽京「うん、おはよう。早起きだね〜。水を取りたいのかな?椅子の上は危ないから僕が取ってもいい?」
千空「…ぉう、、頼む」
そう言うと千空は椅子の上に乗り上げていた片足をスっと下ろした。そして羽京は冷蔵庫を開け水を取り出し2人分のコップを用意して水を注ぐ。注ぎ終わったコップを千空へと手渡した。
羽京「ここで飲むのは危ないから机に行って飲もっか」
千空「わかった」
羽京は随分と物分りのいい5歳児だなと未だに慣れない千空の頭脳に関心しつつ、千空を椅子へと座らせ、自分もその横に腰掛けた。
羽京「寝てる途中で起きちゃった?5月とは言えど今日寒いもんね」
千空「おう、百夜が布団全部持ってくから寒くて起きちまった」
羽京「あはは…百夜には気をつけるよう言わないとだね…」
ここで少し小さな話題で盛り上がって行くうちに千空は水を飲むのに夢中になり、お互い口を噤んだ。そして千空はコップの中身が無くなると手持ち無沙汰なのか羽京の方を見つめ出した。
ここで冒頭へと戻る。
羽京はまだ慣れていないのだろうなと検討を付け好きに観察をさせているが未だに少し照れくさいなと感じる。こんなにマジマジ見られることもあまりないから対処法がよく分からなくてとりあえず微笑みを浮かべてみた。すると千空は羽京のことを自分が見つめていたことがバレたと察知したのか急いで前を向いた。
羽京「…ねぇ千空?ここでの生活には慣れてきた?」
千空「…ん、だいぶな 」
羽京「そっか。ご飯とかも大丈夫?今更だけど嫌いなものとか…」
千空「嫌いなものは特にねぇ。出されたものは食べるから大丈夫だ」
この千空の発言で羽京はあぁ、まだここの人間を完全に信用してくれた訳ではないのだなと思う。出されたものは食べる。小さな子供はもっと好き嫌いがあって食べたくないものは食べなくないとしっかり主張することが多いが千空にはそれがない。それがこちらとの線引きをされているようで少し胸が痛む。
羽京「…じゃあ好きな食べ物は?」
千空「ラーメンが好きだ」
羽京「へぇ!ラーメン!うーん、家で作れるかなぁ」
千空「…!?作る気なのか!?」
羽京「うん、家で作ったら節約にもなるしそれがお手軽レシピだったら家で食べたい時に食べれるだろう?」
千空「…!!!」
羽京「だから今度兄弟全員で作ってみようか。初めてだから上手くいくかわからないけどラーメンを作るなんて楽しそうだしね」
千空「…羽京は…?」
羽京「…え?」
千空「羽京の、好きな食べ物」
羽京「えっ、僕…?そうだなぁ…強いて言うならパン類かな?」
千空「パン類…?クククっ、そんなのありかよ」
小さな妹の笑い声が響く、羽京は少しずつこうやって心を開いて行ってくれればいいなぁと小さな願望を抱くのだ。
そうこうと2人で会話をしているうちに眠気は何処かへと吹き飛んでしまった為、これから起きてくる父と弟達の為に朝食を作ることにした。今日の朝食は羽京の好物がパン類だと知った千空からのリクエストで、朝ごはんにはお米が出ることが多い石神家では珍しくパンを焼くことが決定した。 羽京が目玉焼き、千空が野菜を千切る係。パンは各々食べる直前に焼いて熱々を食べられるようにする。
カチャカチャっと食器の音が鳴り響き、千空が最後のお皿を机に置いた時、時刻は6時3分。6時30分になれば龍水、幻、百夜、クロムの順番で起きてくるだろう。
だからその前に、長男と長女2人きりの朝食を楽しんでおこう。羽京は、この短い時間の中で家族の中の誰よりも先に千空と仲良くなってやろうと笑うのだった。あと、今日のお昼ご飯には兄弟全員でラーメンを作らなくてはと予定を立てるのであった。