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「あれ? 友美先輩のパソコンって……タフブックですよね? 自前のですか?」
友美がスポーツバックからデコボコしたデザインの分厚いノートPCを取り出して長机に置くと、設置してあったハブにLANケーブルを手際よく繋いでいた。
「友美よ! 敬語なし!」
「あ、はい。ああ……」
書也はまた敬語を言いそうになって、口をつぐむ。
「そう、業務用のタフブックよ。前は部活のノートPCをレンタルしてたんだけどね。コーヒーを零して壊したり、新人賞の長編の紙束を落として、キーボードを壊したり、大変だったわ」
「どれもエロスが親の会社で使わなくなったノートPCを提供してくれた物だが……データがなかなか復旧しない、キーボードが押せないと熱情が騒いで大変だった」
教子先生は頭を押さえて言う。
「友美ちゃんのパソコンって、丈夫なの?」
愛が首を傾げるように友美のノートPCを覗き込む。
「アメリカでは軍や警察でも使われている。防水はもちろん、落下にも強い。高さ八十センチの落下にも耐えるとか……さすがに高いんだろ?」
と、書也が解説しつつ、友美に聞く。
「さすがに中古よ。最新のゲーム機ぐらいの値段はしたけど。高いノートPCに興味あるんだったら、エロスのパソコンはマックブックよ」
書也がエロスの席を見ると、リンゴのマークが付いたノートPCをカタカタとキーボードを操作する姿があった。
「そんなに高い物は使っていませんわよ。お古のノートPCをお父様に頂いただけですし」
「そうなんですか? そのマックブック、大きめの奴ですよね? 十六インチぐらいありそうな気がするんですが」
「私のが14インチだから、確かにエロスのパソコン、私のより少し大きい気がする」
友美がノートPCを持ち上げ、大きさを確認して言う。
「確かに16インチですけど……」
エロスが首を傾げる。
「16インチのモデルですと……中古でも二十万近くしますよ。ちなみにスペックは?」
「ゲーム開発用のPCですから、メモリ64ギガバイト、SSD8テラバイトの平凡なスペックだと思っていましたわ」
「化物じゃない! 私のタフブックでもメモリ4ギガバイト、HDD500ギガバイト程度よ!」
思わず友美が叫ぶように言う。
「そういえば、エロス先輩がラノケンを援助してくださってると聞いたんですが……ラノケンがよっぽど好きなんですね」
「そうですわね。私、子供の時からお父様のゲーム会社に遊びに行っていたのですが……レッドムーンでは好きな事ができて、好きにコーヒーを飲めたり、お菓子を食べたり……笑い合って話し合うのが当たり前で……そんな環境を作りたかったのかもしれませんわね」
エロスはそう言って、微笑する。
「じゃあ、この部室って、ゲーム会社に近い環境なんですね」
書也が周囲を見回す。
「エロスが中等部の頃からラノケンに通い詰めていてな。援助するから、一緒に活動させてくれと……エロスの父もPTAの役員で、備品の寄付という事でこうした環境になっている。一応は企業で使い古した物と聞いてはいるが……ここまで環境が変えられるとはな」
「でも、正直、私はお父様にこうした物でいらない物があったら、くださいと言っただけですのよ」
「いらない物でここまで揃うって……凄いですよ」
「そういえば……まだ、幽美ちゃんと理香ちゃんが来てないね」
愛がスマホを何度か見て言った。
「怪奇はまた吐血して倒れたと聞いたな……保健室で寝てるそうだが、無理せずに帰れとは言っているんだが、いつもの事ながら無理して来るだろうな。論理屋は科学部に少し顔を出してから来るそうだ」
「そうなんですね。幽美ちゃん、大変そう」
愛はカバンからピンク色のモバイルノートPCを取り出し、USB対応のLANケーブルに繋いだ。
「愛はモバイルノートなんだな。結構、高かっただろ? 親にねだったのか?」
「友達のお古を譲ってもらったんだよ。お母さんにお小遣い前借して買ったんだよ。小さい方が何処でも執筆できるし、持ち運びに便利だからね」
「そういえばみんなLANケーブルに繋いでいるな……という事は……」
書也がきょろきょろ見回していると、教子先生が手招きする。
「そうだ。語部お前、ノートPCは持ってるか? 無ければ部室の物を使って良い。申請すれば、レンタルもできるぞ」
教子先生が長机に置いてあったノートPCを指し示す。長机には何台かノートPCが並んでいる。
「いいえ、必要と聞いていたので、持ってきました」
書也が予備のバックから傷だらけの分厚くでかいノートPCを取り出した。
「何よそれ!? でかっ!? 17インチ? しかもフロッピーディスクドライブが付いているじゃない!? まだそんな物が残っていたの……」
友美が立ち上がり、あり得ないと言った風に目を丸くする。
「これでもちゃんと動くぜ。フロッピーも稼働できるし、USBもディスクドライブもある。もちろんOSも10まではインストールできてる。こんなんだからフリマアプリで値切って、一万以下にしてもらった」
「その骨董品が壊れなきゃ良いけどね」
「LANケーブルか無線LANが使えれば問題ない」
教子先生が書也のノートPⅭの横の端子部分を覗き込むように確認する。
「無線LANはUSBの子機を持っているので、どちらも使えます」
「なら、問題ないな」
書也はハブとLANケーブルをノートPCに繋ぐ。
「もしかしてパソコン室と同じような形式でNASに繋いだりします? それともLANケーブルで共有設定をしたりとか……」
「いや、ネットに繋いでファイル共有サービスを使ってる。学校外でもアクセスできるし、企業でも使っているやり方の方が勉強になるだろ?」
「なるほど」
書也がパソコンを立ち上げると、教子先生にファイル共有サービスのIDとパスワードを教えてもらう。
「おや、もうやっているね」
妙な機械音と共にドアのロックが開錠され、白衣を着た眼鏡少女が入ってくる。ロングの白髪に黒い肌、口調的に日本人だとは思うが、何処か異国の科学者を思わせる。
「こんにちは! 理香ちゃん」
愛が入ってきた先輩らしき白衣の女子生徒に笑顔で会釈する。
「おやおや、もう新人が入っているのかい? 熱心だねぇ。しかも男性とは……」
理香はそう言って、妙な笑みを書也に向ける。
「こんにちは、愛と同じ科の一年、語部書也です。呼びは理香先輩で良かったですか?」
「心理学科、二年の論理屋理香だ。好きに呼んで良いよ」
「心理学科ですか?」
書也が不思議そうに見ると、理香は何かを察した。
「ああ、最初は文学に興味はなかったんだ。最初は科学部に入部していてね。だけど論文を書いていくうちに小説にも興味を持つようになった。私の心理学と科学の知識が何処まで小説に通用するのか、それにラノベと言えばSFとファンタジーだろ? 私の知識が何処まで読者に通用するのか、試したくもある」