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私は自分が一番子供だったことに気がついた。
私はこの世界のことも分かっていないし、誰より恵まれている7歳の男の子に惚れない自信も無くなっていた。
「今度は唇に口づけしてくださいね、ミランダ。今のあなたはミラ国を守らなければいけないと焦っているように見えます。僕をうまく利用してください。血を見て失神して情けない男に見えたかもしれません。でも、これでも帝国の皇子です。もし他国からミラ国が攻められれば、帝国から援軍を出します」
見惚れるほど美しいラキアスは、私の悩みを吸い取るような言葉を言ってくれる。
そして、彼は大人の世界を見てきた美少年だからか言うことが一々ませている。
私は彼のような男に元の世界ではあったことがない。
だからだろうか、とうとう息子のミライと同じ年のラキアスにときめいてしまっている。
夫は最初から世の中は金だと偉そうにふんぞりかえっていて嫌な感じがした。
そもそも、夫は誰かを愛するような人間ではなく自分のことしか好きではない。
そのようなことは、出会った時から気がついていた。
彼のことが嫌いだったはずなのに、体を許してしまったのが全ての間違いだ。
でも、ミライに出会えたのだから全てが間違いとは言いたくない。
ラキアスを夫と一緒にするのは間違っているだろう。
彼は純粋で人を愛したいと思っている人だ。
差別感情はあっても、それは彼の生まれから考えると仕方がないと思えることで別にマウントを取っている訳ではない。
「ラキアス、相談に乗ってくれますか? あなたの言うとおり強い騎士団を作りたかったのです。身体能力の優れているミラリネを騎士団に取り込めればと思いました。しかし、彼らのミラ王家への恨みまで頭が回ってませんでした。謝罪をすれば、彼らは許してくれるでしょうか?」
「ミランダ、決してミラリネに謝罪してはなりません。謝罪をしたら、彼らはつけあがるだけです。自分とは違う考え方をする生き物だと捉えた方が良いと思います。今日襲ってきた彼も同胞の多くが明日ミラ国の騎士になるという試験を目指しているのにも関わらず、自分の遺恨を優先させて王族であるミランダを攻撃してきました。今日のミランダへの殺害未遂の事実が露見すれば、ミラリネ全員に責任が及ぶ行動です。そういった衝動的手段に出てしまうから、全員がそうでなくても彼らは野蛮だと捉えられてしまうのです。僕も初めて彼らの力を見ましたが、人間とは思えない強さですね。彼らの力を活用したいと考えたミランダの着眼点は良いと思います。ミラ王家がミラリネを差別してきたのには、それなりに理由があります。過去、ミラリネはその力によりミラ王家を長きに渡り脅かしてきました。ミラ王家は彼らの野蛮な攻撃に抵抗してきたに過ぎません。彼らを受け入れたいのならば、あくまでミラリネとしてではなくミラ国の一員として王家に仕えるように忠誠を誓わせた方が良いかと思います」
ラキアスはエイダンにヤキモチを妬いたのが理由ではなく、ちゃんとミラリネを拒否した方が良いという理由があったのだ。
ふと見るとラキアスの手に巻いた包帯が目に入った。
彼が守ってくれなければ、私はきり殺されていたかもしれない。
「ラキアス、紫の瞳のことを非難したようなことを言って申し訳ございませんでした。エスパルにしても、サオ国にしても周辺諸国の信仰が私にはどうも理解できません。知らないものというのは怖いものですね」
私はスピリチュアルな話が苦手だ。
そのせいで紫色の瞳の話を聞きた時もついスピリチュアル系の話だと決めつけて拒否反応を示してしまった。
義祖母がスピリチュアルにハマっていて、常に何たら様の言うことを聞いた方が良いと言う方だった。
お金持ちというのは、お金が有り余っていてそういう怪しい人に目をつけられやすいのだ。
ミライの名前も私は昔から子供の名前は未来にしたいと思っていたが、何たら様が画数が悪いと言ったことでミライになった。
「サオ国は本当に注意した方が良いですよ。サオ国の国民は何もかもが、サオ神のおかげだと言います。悪いことがあればサオ神の怒りに触れたと言い出すのです」
ラキアスは私を笑わせるように大袈裟に言った。
多分、私の顔が度重なる出来事の緊張で強張っていると察してくれたのだろう。
「サオ国の方はミラ国に見えてません。やはりサオ神のお膝元ではない国には住めないのでしょうか」
私がそう言うとラキアスは微笑んで、「多分そうです」と言いながら笑った。
本当に彼は身も心も綺麗な男の子だ。
恋に盲目になっているように見えて、実はよく周りが見えている。
男に紐づかない生き方をしたいと決心したのに、彼に一生愛される保証があれば彼に寄りかかりたいと思ってしまった。