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⚠︎ご本人様たちとは関係ありません
⚠︎nmmn ⚠︎ケイン×ジョシュア
ケイン・その他 「」 ジョシュア 『』
ジョアは、いつものように868のアジトで過ごしていた。
ソファでくだらない話をしているレダーと芹沢を横目に、視線は自然とケインの背中を追ってしまう。
だけど、その目が合うたびに胸が苦しくなって、慌てて逸らす。
(……言わない。絶対言わない。俺が先輩を困らせるのは嫌だ)
そう決めていた。
ケインは868のリーダーで、皆に慕われていて、優しくて。
部下の自分が「好きだ」なんて言っても、迷惑にしかならない。
だから、心の底に押し込めた気持ちを隠したまま、仲間と笑って過ごすのが一番だと信じていた。
そんなある日——。
アジトでいつも通りの空気を過ごしていたジョアは、レダーに呼ばれた。
「なぁ、ジョア……聞いたか?」
いつになく真剣な顔。
ジョアが首を傾げると、レダーは少し躊躇ってから言った。
「ケイン……ロスサントスを離れるんだ」
『……え?』
あまりに突然で、頭が追いつかなかった。
レダーは肩をすくめ、視線を逸らした。
「別の街で仕事するらしい。いつ戻るかは……わかんねえ」
その言葉が、ジョアの胸を抉った。
(……え、ずっと……?一生……会えない……?)
喉の奥が詰まって、返事もできない。
レダーは「まあ、俺らで頑張るしかねえな」と言って話を切ったけど、ジョアの耳にはもう何も入っていなかった。
——見送りの日。
868のメンバーは港へ向かった。
けれどジョアだけは布団に潜り込み、顔を上げられなかった。
行けば泣いてしまう。
そして泣けばケインを困らせる。
(行けない……行けない……)
そう自分に言い聞かせて、ただ一人、アジトに残った。
——港。
船に乗り込む直前、ケインは周りを見渡して気付いた。
「……ジョアさんは?」
音鳴が苦い顔で答えた。
「今日起きてはいたんすけど……なんか行けないって」
「……そうですか」
ケインの声は低く落ち着いていたが、その奥に微かな寂しさが滲んでいた。
やがて船に乗り込み、受付でチケットを確認していた時。
携帯が震えた。
画面に映る名前は「ジョア」。
「……もしもし」
『……ケイン先輩、今日……行けなくてすみません』
弱々しい声。
ケインは微笑を含ませて返した。
「大丈夫ですよ。電話でも、私は嬉しいです」
『……先輩。今から言うこと……簡単に流して聞いてもらって構いません』
「なんですか?」
一呼吸のあと、震える声で。
『……ずっと、好きでした』
涙混じりに、好きなところを必死に伝える。
優しいところ、仲間想いなところ、ずっと背中を追いかけてきたこと——。
そして最後に。
『……別の街に行っても、俺のこと……忘れないでください』
沈黙。
ジョアは、胸が張り裂けそうなほど鼓動を感じていた。
そのとき——ケインが静かに言った。
「ジョアさん、少し勘違いしていませんか?」
『……え?』
「私、一年したらまた戻ってきますよ」
その言葉に、ジョアは完全に固まった。
一生会えないと思い込んで、涙ながらに告白したのに。
『……は、えっ……一年……?』
「はい。ですから、その時まで待っててくれますか?」
『……あっ、え、はい!』
訳が分からないまま、反射的に返事してしまった。
「じゃあ、また一年後」
優しい声を最後に、通話は切れた。
——静まり返るアジトの中。
ジョアは顔を両手で覆い、床に転がった。
(な、何やってんだよ俺……!死ぬほど恥ずかしい!!)
でも、胸の奥では確かに嬉しくてたまらなかった。
その夜。
恥ずかしさと嬉しさと寂しさを全部ごちゃ混ぜにして、街で大暴れすることになるのだった。
——一年の約束を胸に抱えたまま。
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