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戻ってきたら、好きって言って

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戻ってきたら、好きって言って

2 - 第2話 待つ時間の重み

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2025年08月21日

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ケインが街を出てから半年が経ったある日



ジョアはJDと一緒にパレトに向けて準備をしていた。


「そういえばケインさん、帰ってくるの後半年ですね」


JDが何気なく口にした。


ジョアの手が止まる。半年。もう半年で、あの日約束した「一年」が終わる。

自然と口元が緩んだ。


(あと半年……やっと会えるんだ。そしたら、先輩は俺に――)


胸がふわふわして、つい浮かれた気持ちになる。


そんなジョアの心を知ってか知らずか、JDは続ける。


「なんかケインさんがいる街から来た人に聞いたんすけど、ケインさんその街でも有名になってるらしいですよ」


『えっ……そうなんすか、すごい……』


誇らしくて、嬉しくて。ジョアの胸が高鳴る。


( やっぱり先輩はすごい人だ……。俺なんかが好きになったの、場違いかもしれないけど……でも、でも……)


だが。


「あと……彼女?出来たらしいっす」


JDの口から、さらりと爆弾が落ちた。


『……え?』


ジョアは間抜けな声を出してしまった。


『か、彼女……?』


「はい。ホントかどうか分からないらしいんすけど。なんか女性と一緒に歩いてるとこ、何回も見られたとか」


JDは軽く笑いながら言うが、ジョアの心には重く突き刺さった。


頭が真っ白になって、言葉が出ない。

考えるのをやめて、ただ黙々と準備に集中するしかなかった。


――パレトは大成功。

だが達成感に浮かれる仲間たちの横で、ジョアは無理に笑みを作っていた。


夜、自分の部屋に戻り、ドアを閉める。

ベッドに仰向けで寝転がり、天井を見つめる。


(……やっぱり俺のこと好きなんて、勘違いだったのかな)

(あのとき「1年後まで待っててください」って言ったのは、ただその場を終わらせるための言葉だったんじゃ……)


胸が締め付けられる。

涙がにじみ、頬を伝い、枕を濡らした。


『……ケイン先輩……』


名前を呼ぶ声は、震えていた。


ある日の、大型犯罪からの帰り、車の中はいつも通り笑いに包まれていた。

レダーが大声で冗談を飛ばせば、音鳴が乗っかって笑いを誘う。JDもはしゃぎながら、「今日もバッチリ成功っすね!」と拳を突き上げていた。


――俺も、一緒に笑っていたはずだった。


「そういやさぁ」ハンドルを握るレダーがふと思い出したように言う。


「ケインさ、そっちの街でも相当モテてるらしいぞ?なんか女の人と歩いてるの、何回も見られてるって聞いたわ」


「え、マジっすか?」音鳴が笑いながら反応する。


「ケインさんってああ見えてけっこうスマートだし、そりゃ女の人も放っとかないすよね」


と、JDが笑いながら言う。


みんなの笑い声は遠く感じた。

耳に入ってくるのは、さっきの言葉だけ。

――ケイン先輩に、彼女。


誤解だと思いたい。

でも「何度も見たらしい」という一言が、胸の奥でずっと重く響いていた。


その夜。

ベッドに転がって天井を見つめていると、スマホが震えた。


画面に浮かぶ名前。

――ケイン先輩。


鼓動が一気に速くなる。

慌てて受けると、あの優しい声が耳に届いた。


「ジョアさん。今日もお疲れさまです」


『っ……せ、先輩。こんばんは』


声が少し震えた。隠せない。


「どうですか?みんな元気にしてますか?」


『……はい。相変わらずです』


先輩の声は温かくて、包み込むようで。

それなのに俺の胸には、チクリとした痛みが広がっていく。


――この優しさは、俺だけに向けられたものじゃない。

――きっと、彼女にも同じように優しいんだ。


「……ジョアさん?」


『っ、あ、すいません。ちょっと考えごとを』


「大丈夫ですか?無理してないですか?」


『大丈夫っすよ!俺は全然』


元気に返したつもりだった。けど、声は裏返っていた。


電話を切ったあと、スマホを胸に押し当てて目を閉じる。

熱い涙が頬を伝った。


先輩がいない1年を、俺は「待つ」って決めた。

でも本当に待っていいのか、分からなくなっていく。

心の中で揺れる。


――信じたい。けど、怖い。

――俺は、本当に先輩にとって特別なのか?


嗚咽が漏れそうになり、枕に顔を押しつけた。

部屋の中は静かで、俺の泣き声だけが小さく響いていた。


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