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夜中に、ふと目が覚めると、彼が私を抱いたまま穏やかな寝息を立てていた。
彼の眠りが深いように感じて、後ろ向きに抱かれていた腕の中で体をぐるりと回して正面を向く。
「よかった……。起こさなかったみたい……」
独り小さく呟く。
私、本当に貴仁さんと結婚式を挙げたんだ……。
端正な彼の顔をじっと見つめて思う。
初めて会った時には、こんな日が来るなんて考えもしなかったのに……。
初顔合わせの際のドライな彼の言動が頭をよぎると、後々になって告げられた『その道のプロに聞いた』という真意に、思わずふふっと笑みがこぼれた。
最初のデートでは、私のコーデで彼にカジュアルな白のパーカーを着てもらったんだよね……。すごく似合っていて、カッコよくて……。
二度目に公園に行った時には、私の作ったお弁当を『シェフのように上手で』だなんて、褒めてくれて、美味しそうに食べてくれたっけ。……本当に、嬉しかったな。
次々と浮かぶ彼との思い出は数え切れなくて、
「貴仁さん、ありがとう」
満たされた気持ちで、そう口にすると、
「うん……」
と、答えるように彼が声を洩らして、尽きることのない想いのままに、その胸元に頬を寄せ広い背中をギュッと抱え込んだ……。
翌朝、貴仁さんと食卓へ着くと、迎えてくれた源治さんから、
「改めて、ご結婚おめでとうございます」
と、お祝いの言葉が投げかけられた。
「あ、ありがとうございます」
笑顔で応えて、ふと長テーブルの上を見ると、前撮りをしたウェディングの写真がテーブルフラワーと共に飾られていた。
それは源治さんに猫のミルクちゃんも交えて、最後に揃って皆で撮ったものだった。
「写真、飾っていただいたんですね……」
昨夜、結婚のことをつい気にしていたこともあって、ちょっと感慨深い思いで口にすると、
「ええ、大切なお写真ですので」
笑みを浮かべた源治さんから、そう頷いて返された。
そこへ、貴仁さんがふっと微笑って、
「大切な、家族写真だろう」
と、一言を口添えた。
「ああ、そうでしたね……。家族として撮った、本当に大切な写真で……」
目を潤ませて言う源治さんに、私自身も思わず涙が零れそうにもなって、
これから貴仁さんと、この家で暮らしていくという思いを、新たに噛みしめた──。