コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
そうだ。黒崎さんから返事、来ているかな。
スマホを見るが、何も通知はない。
やっぱり……。返事なんて、期待しない方がいいよね。
帰宅をし、今日はシャワーで済ますのではなく、湯舟に浸かった。
お風呂の中でいろいろと考える。
連絡先を教えてくれたけど、これからどうすればいいのかな。
黒崎さんと少しでも仲良くなれるのだろうか。
ベッドに横になり、スマホを見る。
一件の通知があった。
優菜かな?
アプリを開いてみると、黒崎さんからだった。
返事が来たぁ!
ベッドから飛び起きる。
黒崎さんからの内容は
<お疲れ様です。残業で返信が遅くなりました。急に連絡先を聞いてしまいすみません。でも、嫌じゃないなら良かった。今度、時間が合えば食事にでも行きませんか?>
嘘、食事……?
「きゃあー!!」
嬉しさの余り、悲鳴をあげながらベッドを叩く。
ご近所迷惑だと思い、落ち着こうと深呼吸をした。
「食事に行きませんか?」は気を遣って言ってくれたのかな。
男性経験がないため、マイナスに考えてしまう。
でも、返信をしてくれただけで、第一歩だと考えなきゃ。
私は黒崎さんに返事をした。
<こんな時間までお仕事お疲れ様です。私で良かったらぜひご飯に行きたいです!>
送信ボタンをタップする。
ドキドキしながら返事を待っていたが、その日は返信がなかった。
大学に行き、優菜に黒崎さんとのやり取りについて話をした。
「良かったじゃん!ご飯、行ってきなよ!」
優菜は、自分のことのように喜んでくれた。
「まだ返事がないの。忙しいのかな」
食事は社交辞令だったのではと正直自信がない。
「向こうから誘ってきたんでしょ。嫌だと思っている女《ひと》にそんなことわざわざ送らないよ。焦らないで、ちょっと待ってみたら?」
優菜の言葉は、私の考え方をプラスにしてくれる。
「うん、ありがとう。待ってみる」
良い返事が来ればいいな。
淡い期待が膨らむ。
ああそうだ。もう一つ優菜に話したいことがあったんだ。
「実は、昨日。バイト先でもお客さんに連絡先を教えられて」
「すごいじゃん!モテ期なんじゃない?」
優菜は興味津々のようだが、こっちの話は気が重くなる。
優菜に、川口さん《おきゃくさん》の話をした。
「うげ、気持ち悪い。なんか、勘違いしてない?気をつけなよ」
さっきの態度とは一遍、話を聞いて気持ち悪い、恐い、そう優菜は繰り返した。
「店長も気を遣ってくれて、もうオーダーとか関わらなくていいって言ってくれてるから助かる」
「そりゃそうだよ。若い子が好きなのかな。結婚はしてそう?」
そういえば、指輪はしていなかったような気がする。
「カフェに何回も来ているのも、愛が目当てかもよ。気をつけな」
私のどこが良いのだろう、そう思う。
今日はアルバイトが休みだったため、優菜と一緒に買い物に出かけた。
「黒崎さんにいつでも誘われてもいいように、洋服を買いに行こ!」
優菜の提案からだった。
大型ショッピングモールを歩いて、何軒か気になるお店を巡る。
「これ、可愛い!」
優菜はもともとファッションに興味があるため、いろんなお店を紹介してくれる。
私はある店の水色のワンピースが目に入った。
「優菜。あれ、可愛くない?」
近くに行き、手にとってみる。
「可愛い!値段もそんなに高くないよ。夏らしくていいじゃん。愛、試着してみれば?」
確かに値段もそれほど高くはなかった。店員さんに声をかけ試着をしてみたが、サイズもぴったりだ。
「愛、似合うよ!買っちゃいなよ」
たまには、良いよね?
自分のために洋服を買うのは、何か月ぶりだった。
「これでいつ誘われても大丈夫だね」
カフェに入り、休憩をする。
本当に私なんかを誘ってくれるのだろうか。
黒崎さんとはちゃんと会話もしたことがないし、どんな人かも正直わからない。
困っているところを手伝ってくれたから、悪い人ではないよね。
優菜と別れ、帰宅をする。
アルバイトがある時は、夕ご飯はカフェで作ってもらうことが多い。
店長からの好意で、余った食材でいつも何か作ってくれた。食費が浮くため、有難かった。
自炊ができないわけではない。
凝った料理はそんなに作ることはないが、年相応にはできる方だと思う。
夕食を作りながら、ふとスマホを見た。
「あっ!」
黒崎さんから返信が届いていた。
ドキドキしながら文章を読む。
<良かったら今度の土曜日、ご飯に行きませんか?>
「やったぁぁぁ!!」
私は喜びの余り、一人叫んでしまった。
急いで返事をする。
<はい、大丈夫です。よろしくお願いします>
すぐ彼から返信が届き
<良かったです。詳細はまた連絡しますね>
<楽しみに待っています>
返事をした。
黒崎さんとご飯に行ける、嬉しすぎて夕食のことをすっかり忘れてしまい、焼いていたハンバーグを焦がしてしまった。
次の土曜日が待ち遠しい。
木曜日を迎えた。
明後日は、ついに黒崎さんとご飯に行ける日だ。
そう考えると、日常生活が明るくなる。
黒崎さんからの連絡はあまり来ないが、土曜日の十一時に駅前で待ち合わせをしている。
食事場所は黒崎さんが考えてくれると言ってくれた。
「いいな。ついに明後日デートじゃん」
表情が明るい私を見て、優菜がツッコんできた。
「そうなんだ。でも緊張する。男の人と二人でご飯行くの、初めてなんだ」
ご飯をこぼさず食べれるだろうか、箸の持ち方が汚いと思われないだろうか、いつも出来ていることが緊張で当日できなくなってしまったら……。そんなことばかり考えてしまう。