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※この物語はフィクションです。
実在の人物及び団体、事件などとは一切関係ありません。
〈File74:今日、君だけがいない〉
「アイツは逃げたんだ!!裏切者なんだよ!!」
黒い津波のように、憎悪の込められた言葉は打ち寄せてきた。
「アイツの、アイツのせいでオレは……」
淀んだ眼差しの奥底で、まるで轟々と炎が燃え盛るように瞳が揺らめいていた。
それ以上の言葉はいらなかった。
自分を置いて家を出た兄を恨めしく思う気持ちは、血の滲む唇からも、血走った白目からも伝わってくる。
草麻さんの濁流に呑み込まれた智世の手が、ソファの背凭れを固く握りしめる。
怒りとも悲しみともつかない感情を顔いっぱいに湛えていた。
「それなら、なぜ兄を探して欲しいなんて言い出したんだ?助け合って来た兄がいなくなって心配だったからじゃないのか?」
「家を出てオレを苦しめて、また逃げたアイツを******
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