テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
続編:「はじまりの言葉」
あれから何度も会った。
最初はカフェで、次は映画館、その次は中目黒を一緒に歩いた。
ニノはいつも自然体で、でもふとした瞬間に大人の余裕を感じさせる人だった。
笑って、冗談を言って、でもときどき真剣なまなざしで、何か言いかけて――
言葉を飲み込む。
そんな時間が、もう何度もあった。
その日も、代々木公園をゆっくり歩いていた。空はすっかり秋の色で、葉が舞っていた。
「最近さ、会ってない日でも、君のこと考えることが増えたんだよね。」
急にニノがそんなことを言ったから、思わず立ち止まった。
「え……?」
彼は前を向いたまま、ポケットに手を突っ込んだまま、少しだけ顔をしかめる。
「俺、芸能人だし、恋愛とか、正直めんどくさいって思ってた。でも……君といると、普通に好きって気持ちになる。」
少し風が吹いて、落ち葉が足元をかすめた。
「ちゃんと伝えようと思って。 ――
俺、君のことが好きです。付き合ってほしい。」
ストレートな言葉に、心臓が跳ねた。
一瞬、言葉が出なかった。でも、彼は焦らなかった。
そのまま、真っ直ぐにこちらを見ていた。まるで、“ちゃんと聞くよ”とでも言うように。
「……私も、好きです。ニノのこと。」
そう答えると、彼は少しだけ目を細めて、ほっとしたように笑った。
「よかった。なんか、振られたら、もうあのカフェ行けないなって思ってた。」
「そこ?」
思わず笑ってしまうと、ニノは照れくさそうに笑い返す。
「まぁ、俺らしいでしょ。」
そう言いながら、彼はそっと手を握ってきた。
あの日、偶然だったはずの出会いが――
今、ちゃんと“特別な関係”に変わった瞬間だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!