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続編②:「君の知らない二宮和也」
付き合って初めてのデートは、ニノの提案で浅草。
「渋いでしょ?でも、たまに行きたくなるんだよね。」
人混みを避けて、午前中のまだ静かな時間に集合した。
いつもよりちょっとカジュアルな格好のニノは、黒のキャップにシンプルなシャツ、そしてどこか少年っぽい笑顔を浮かべていた。
「たい焼き、食べたい。」
いきなりそう言って、ニノはたい焼き屋の前にすたすた歩いていく。
芸能人なのにまったく気取らないその姿に、つい見惚れてしまう。
「甘いの好きなんだ?」
「うん。あんことか最高じゃん。」
たい焼きを嬉しそうに頬張る姿は、テレビで見るクールなニノとはまるで別人だった。
「……ニノって、意外と子どもっぽいとこあるよね。」
「それ、今の褒めてる?」
「……たぶん、褒めてる。」
そんなやり取りも、なんだか心地よくて。
浅草寺でおみくじを引いたり、商店街をぶらぶら歩いたり、ニノは終始リラックスしていた。
でも、ふとした瞬間に手をつないでくる。
信号待ちのときも、混雑した通りでも、自然とあなたの手を探してくる。
――それがあまりにも優しくて、胸がぎゅっとなる。
夕方、隅田川沿いを歩いているとき、ニノが不意に言った。
「今日は楽しかった?」
「うん、すごく。ニノのこと、もっと好きになった。」
「……そっか。」
そのとき、彼は少し黙って空を見上げた。
夕焼けが川面に映っていて、風が心地よく吹いていた。
「じゃあ、次のデートは――
俺の家、来て。」
「え?」
あまりにも自然に言われたから、すぐには意味が飲み込めなかった。
「別に変な意味じゃないよ? ただ、もっと俺のこと、知ってほしいなって思って。」
そう言って、ニノは少し照れたように笑った。
でもその目は真剣で、少しだけいたずらっぽかった。
「俺の素、いっぱい見せてやるから、覚悟しといて。」
その言葉に、心が跳ねた。
デートの終わり――
手を繋いだまま、次の約束を交わす。
その距離は、少しずつ、でも確実に縮まっていく。
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