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今日も、何も起きないことを願いたい。
そうして、歩く。
『にしても、目を覚ましてくれてよかったよ。』
皆、心配していた。
だから、記憶喪失とはいえ、特に問題は無さそうでよかった。
今のところは、だけど。
『そうですね。』
一つ、問題があるとすれば…
注射器。
トラウマになっていることも問題ではあるけど、検査の結果も気になる。
結果によっては…
『・・・』
考えたくない。
きっと大丈夫だ。
きっと。
僕は、茜さんの方を見ようとした。
『え?』
僕は立ち止まった。
『うぐぅ…』
茜さんがぶつかってきた。
でも、
それどころではない。
あそこにいるのは…
十字路の横、
その奥に、
『アイツは。』
レインだ。
刀が、腰にぶら下がっている。
『ん?どうした、銅。』
皆がこちらにくる。
『少し、気になる人がいたので…』
アイツ、ここで何をしているんだ?
と、
こちらに気づいたようで、振り返る。
レインは、僕の方を見て笑う。
こちらに歩いてくる。
-僕は思うんだ。本当に人を傷つけ、殺し合うことが悪いことなのかと。-
レインの言葉。
いつ、誰かを殺してもおかしくない男。
『やあ、こんなところで会えるなんて思ってなかったよ。』
レインは、いつものように振る舞っている。
『何をしようとしてるんだ?』
僕は、目を細める。
『僕だって人間だよ?外を出歩くくらいするよ。』
『その刀を持ってか?』
刃物を持って外に行くことは、やむを得ない時や許可されている場合ではないと違反だ。
自分も、人のことは言えないけど、
『君も銃をずっと持ってるみたいだけど?それと同じさ。人狼だし、武器を持ってないと危険だからね。』
そう言われるのは仕方ない。
でも、前のことがあったせいで怪しく見える。
『お前、何かするつもりなんじゃないか?そんなことはさせないけどな。』
如月さんが僕の横に並ぶ。
皆が、レインを警戒していた。
『琥珀さんと茜さんは少し下がっていてください。』
レインの余裕そうな表情と態度。
明らかに戦い慣れていたり、実力に自信があるんだろう。
つまり、
強い。
『ごめんけど僕は、銅と話がしたいんだ。他の人は、下がってくれないかな。』
『嫌だね。私の実力を見せてあげる。』
『手を出すのなら、止める。』
皆は、僕の横に並んでくれた。
と、
レインが、片手を少し上げて、
パチン!
手を鳴らした。
!
後ろから、複数の人が現れた。
その人たちは剣や刀を持っている。
そして、武器を構えてこちらに走ってきた。
琥珀さんと茜さんが危ない!
皆が、そちらに走った。
僕も、そちらに行こうとした。
が、
『君は僕のことを止めなくていいのかい?』
!
レインも、刀に手を添えていた。
僕も、剣に手を添える。
『君はまだ、人を殺すことが悪いと思っているのかい?』
『当たり前だ。』
『人を殺したのに、かい?』
それは!
『僕は、情報屋と殺し屋みたいなのをしてるのさ。だから、君のことを監視してた。だから、隠していても無駄さ。』
情報屋と、
殺し屋?
『これから、殺し屋の仕事をするんだ。ある人を殺せと言われてね。だから、今からその場所に行くんだよ。』
何を言ってんだ?
そんなことをペラペラと、
『殺しに行くだと?僕にそれを言って、止められないと思ったのか?』
『今の君には止められない。前に言ったでしょ?君の弱点は、自分から相手を傷つけないってことだと。僕は君に手を出すつもりはないよ。君が手を出してこない限りね。』
っ、
『あの時も迷っていたのか止められなかった。だから、何を言っても君は止められない。』
そうだった。
あの時、僕は何もできなかった。
危険だとわかっていても止められなかった。
『それなら、剣術を磨いても無駄だよ。』
なら、どうすれば…
そんなの、
僕はレインに向けて走り、腕を掴もうとする。
『ほぉ、そう来たか。』
だが、避けられる。
僕はレインを追いかける。
『それで、捕まえられるかな?』
ヘラヘラとしている。
レインは、余裕そうだった。
『くそぉっ!』
まだ追いかける。
必死に捕まえようとする。
けど、
全て、ギリギリのところで避けられる。
と、
『やあっ!』
琥珀さんがレインを捕まえようとした。
茜さんも、必死に追いかけている。
『2人とも、離れるんだ!』
僕は必死に言う。
何をされるかわからない。
『安心してくれよ。僕だって別に、関係のない人を傷つけたいわけじゃない。』
そんなの、
信じられるわけがない。
『また1人増えてるね。でも弱い。また負け犬のお世話をいているのかい?君はお人好しなんだね。』
『くっ!舐めるな!』
僕は、レインの動きを見て、
ここだ!
レインの腕を掴んだ。
『おぉ、やるねぇ。でも、掴んだだけ。』
!
足を引っ掛けてきた。
『あっ!』
僕は、その場に倒れた。
その時に、レインの腕を離してしまった。
『また、0からだね。』
レインは、笑っていた。
やはり、戦い慣れている。
まだ、全然本気を出していないだろう。
なのに止められなかった。
でも!
まだ、立ち上がる。
そして、追いかける。
と、
『お?』
茜さんが、レインを捕まえた。
『君は新しい子だね?茜、だっけ?人狼かと思ったけど、弱いなぁ。ほら。』
レインが茜さんの腕を掴んだ。
『やめろ!』
僕も、捕まえようとする。
けど、
避けられる。
『やめて、離して…』
茜さんが怯えている。
『おいおい、暴れちゃダメだよ。うおっ!』
レインが、バランスを崩した。
そして、
‼︎
『え?』
茜さんが、橋の柵にぶつかり、
その奥に、
『茜さん!』
僕は、追いかける。
僕も、柵を越えて、
茜さんの手を掴む。
けど、
落ちる。
ザバーン!
下には、水があった。
『ぷはぁ!』
水から顔を出す。
それほど落ちる高さがなかったことと、水深が深めだったことで、なんとか助かった。
けど、
『自ら落ちてまで助けようとするなんて、流石だね。』
レインはそれだけ言って、どこかへ行ってしまった。
それより、
『茜さん!』
周りを見てみる。
と、
『ぷはぁ、』
茜さんが水面から顔を出した。
と、
ザブーン‼︎
『え?』
何か落ちてきたみたいだ。
?
そして、
『ぱぁっ、』
『え?』
琥珀さんが顔を出した。
『え?』
まさか、レインが?
『甘ちゃんと茜ちゃん、大丈夫?』
琥珀さんが心配してくれた。
『あ…うん、大丈夫…』
『琥珀ちゃんも大丈夫?』
『うん、大丈夫だよ。』
皆、大丈夫みたいだ。
よかっ…
あ、
『琥珀ちゃん、頭に水草が…』
僕は、琥珀さんの頭に乗っている水草を取る。
『えへへ、甘ちゃん、今琥珀のこと琥珀ちゃんって言った。』
『あ、』
しまった。
つい、つられて言ってしまった。
でも、琥珀さんは嬉しそうだった。
『これからも、琥珀ちゃんって呼んで欲しいな。』
『えぇ…』
それは…
『おーい、大丈夫かー?』
上を見ると、如月さんがいた。
とりあえず上がらないと。
どこから上がろう。
周りを見てみると、
なんとか、近くにある階段を見つけた。
うわぁー、べちゃべちゃだ…
気持ち悪い…
そして、
『くしゅん!』
寒い…
『へくちゅ!』
琥珀さんも茜さんも寒いのだろう。
『一旦戻るか。』
剣士署に戻ることになった。