「すみませんっ!お待たせしました!」
静かな図書室に私の声が響く。少し恥ずかしさもあるけど、人は1人しかいない。
「ん。お疲れ」
カウンターで本を読んでいる男の人。この人が音色くん。
すこし冷たい部分もあるけれど、すごく優しい人。こんな私に対して優しく接してくれるから。
「これ、ありがと。面白かった。」
あ、そうだった、この前私のお気に入りの小説を貸したんだった。
茶色のブックカバーで包まれた本。
実は、音色くんは恋愛ものの小説が好きなんだ。
それを知った時は、初めて仲間を見つけたような感じで嬉しかった。
でも、音色くんは誰にも言っていないらしい。
たしかに、男の子が恋愛ものの小説って、恥ずかしいのかもしれない。
「そうだ!次の本なんだけど!」
私がそう言って音色くんの方を見ると、バチッと目が合う。
音色くんは顔を赤くしてすぐに私から目を逸らした。…メガネ掛けているからあまり分からないけれど!
最近、こんなことがよく続く。なんか、見られている気分で恥ずかしいな
……自意識過剰すぎた、
「で、何?次の本って。」
「あっ!そうそう!この本なんだけどね、舞台は戦争時代のお話で…」
私が熱心に説明すると音色くんは興味深く聞いてくれるからつい熱が入ってしまう。
「まぁ、そんな感じの本なんだ!」
「ん。ありがと。」
ふふっ!今回の本はとっても面白いから、読んで欲しいな…!
「じゃあ、そろそろ閉めるか。」
約1時間ほど時間が経ち音色くんが席を立った。
もうこんな時間か。
図書室にいると、時間が経つの早く感じるなぁ、
「気をつけろよ。」
そう言って背を向けた音色くん。
私も帰ろう、
最後に人がいないか確認して図書室を出た。
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