テラーノベル
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私、瀧沢庸一はどうにもならない男だった。
祖父が経営者をしていた事もあり、何事に対しても必死にならず、中途半端な生き方をし続けた。
幼稚園児の頃からお手伝いさんを頼り、その様子を級友たちにバカにされた。
精神的に甘ったれた私は、他の男子生徒のように先陣を切って駆け抜ける勢いや強さ、元気を持てなかった。
『つらい目に遭ったらどうしよう。痛い事は嫌だ。歩きたくない。面倒臭い事は嫌だ』
そんな思いを抱いた消極的な私は、友達の誘いを断って自宅でゲームをし、爪弾きにされてしまった。
小学生頃ならまだ軌道修正ができたかもしれない。
だが中学生に入っても変わらない私は、完全に陰キャの負け組になってしまった。
そのうち、祖父と父が会社経営をしている話が、どこから流れたのだろうか。
高校に入ったあと、私は上級生に目を付けられてかつあげされる日々を送るようになった。
そこで私を助けてくれたのが、優那だった。
『彼は私の友達なんです。お願いですから乱暴な事はやめてください』
ある日、学校の裏庭で絡まれていた私を、優那は果敢にも一人で立ち向かって助けてくれた。
『へぇ? じゃあ、北条は俺たちにどうしてくれるわけ?』
『学校一の美女って呼ばれてるぐらいだから、ナニかしてくれる?』
優那が先輩たちの餌食になると悟った私は、必死に抵抗しようとする。
『北條さん……っ、やめ……っ』
『ヒョロガリは黙っとけよ』
だが体格のいい先輩にミドルキックを食らい、私は七転八倒する。
『その件については後日お話しましょう。今は瀧沢くんを解放してくれませんか? そして二度と手を出さないでください』
優那はキリリとした眉の下にある大きな目で先輩たちを見つめ、強い意志を込める。
その様子を見て興が削がれたのか、先輩たちは『あとで話をつけるからな』と言ってゾロゾロと連れだって行った。
『瀧沢くん、大丈夫?』
優那は私に笑いかけ、学生服についた泥をパンパンと払う。
『ありがとう。……でも、どうして僕なんかを……』
そう尋ねると、彼女は女神のように笑って言う。
『困ってる人を助けるのは当たり前じゃない』
当たり前のように言うその姿を見て、私は心からの感動を得た。
――世の中には、見た目だけじゃなくて心まで清らかな人がいるんだ。
『……ありがとう。なんてお礼を言えばいいのか……』
#男主人公
パラレル・ゲーマー
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女子に守られて情けない気持ちはあるものの、その時の私は運命の相手を見つけたと思った。
――彼女のためなら、何だってできる。
その時の私は、唯一神を見つけた気持ちになっていた。
それまで確固たる信念を持たなかった私は、初めて『彼女の言う事だけは何があっても聞こう』と自分に誓ったのだ。
それからの三年間はとても楽しかった。
優那は常に目立つ系の男子と付き合っていて、私は最初から自分が彼女の〝相手〟になる事はないと分かっていた。
最初こそ『もしかしたら』と身の丈に合わない想いを抱いた。
だがみんなの中心でにいる太陽のような優那を見るたびに、『彼女の側にはいられない』と痛感するようになっていった。
だがその代わりに、私は彼女に必要とされる〝陰〟になろうとした。
優那の帰りが遅くなった日は、彼女の家の最寄り駅まで駆けつけて送った。
『今ってこういうのが流行っているんだよね』と優那が流行のアクセサリーやブランド品をスマホで見せてくると、貯金を崩してでもプレゼントした。
『悪いからいいよ』と言われたが、彼女から得た恩を返せるなら何でもできる。
彼女が助けてくれなかったら、私は高校三年間、ずっと弱者として虐められ続けていただろう。
それを思えば、優那に感謝の証として贈り物をするぐらいどうって事はない。
加えて、優那は私に褒美を与えなかったわけではなかった。
家まで送った帰り、優那は『じゃあね』と私の頬にキスをしてくれる。
それだけで全身を言い知れぬ高揚感が包み、この上ない幸せを得た。
一度は、高ぶった想いのまま告白した事があった。
『北條さんが好きです! あなたのためなら何だってできる』
愛の告白を受けた彼女はキョトンとしたあと、申し訳なさそうに笑って首を左右に振った。
『勘違いさせたならごめんね。私、好きな人がいるの。……瀧沢くんの頬にキスをしていたのは、……何もできないからせめてものお礼と思ってだけど……。誤解を与えるぐらいならやめる。……それに、こういう関係も良くないよね』
優那が関係を断とうとしているのに気づいた私は、焦って否定した。
『ごめん! そんなつもりはなかったんだ! 今まで通りでいよう! 僕はこれ以上、何も望まない。ただ、君の側にいられたら、それでいいんだ』
『でも……』
優那は申し訳なさそうに眉を寄せる。
『もう何も言わない! だから……、側に置いてほしい』
私はクシャリと顔を歪め、頭を下げた。
しばらく経ったあと、優那は溜め息をつき『参ったな』と笑う。
『……私なんかの側にいてもいいの? 瀧沢くんだって他に目を向ければ、彼女ができるんじゃない? ……ほら、同じ図書委員の後輩の……、長瀬涼子ちゃん? 彼女、瀧沢くんの事が好きそうじゃない』
確かに長瀬は同じ図書委員で懇意にしているが、そういう関係ではない。
彼女が私をどう思っているかは知らないが、私は長瀬を異性として見ていなかった。
『長瀬は関係ない。……君にそう思ってもらいたくない』
苦しげに言うと、優那は『ごめん』と謝る。
『……じゃあ、今後もこういう関係を続けてもいいの? 私は瀧沢くんを好きにならないと思う。もう嫌だと思ったら、いつでも離れていいから』
『嫌じゃないし、都合のいい相手でも構わない。……北條さんの側にいさせてください』
再度頭を下げると、彼女は溜め息混じりに苦笑いをした。
『……変な人だね』
話がついたあと、私たちはまた歩き始める。
北條家は立派な一軒家で、豪邸と言っていい。
金持ちの家に生まれた彼女は愛されるべき存在と思っていたが、そう簡単な話でもないようだった。
『……私の家、医者の家系なの。父は開業医で、兄もそれを継ぐべく今はインターンをしている。母はお嬢様育ちで、今は病院の手伝いをしてる。……周りの人は私を〝恵まれた家に生まれた子供〟と言うけれど、……そうじゃない』
優那はポツポツと語り始め、溜め息をつく。
コメント
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臣桜さん、第32話読みました!✨ 庸一くんの自己肯定感の低さと、優那さんへの盲目的な崇拝が痛いほど伝わってきて胸が締め付けられたよ…「都合のいい相手でもいい」って歪んだ関係性に驚いたけど、それでも優那さんの側にいたいって気持ちが切なすぎる😭💔 最後の優那さんの家庭の話で、彼女にも複雑な事情がありそうで続きが気になる〜!次回も楽しみにしてるね!🌸