テラーノベル
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4話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
映画館に着くと ひんやりとした空気が肌に触れた。
外の眩しさとは違う 少しだけ暗い空間。
人のざわめき。
ポップコーンの匂い。
「……で?」
映画の上映予定の画面を見ながらぶっきらぼうに言う。
「どれ見るの?」
けれど――
死神の返事は、ない。
「……?」
怪訝に思い振り返って 視線を巡らせる。
すると壁に貼られた 一枚のポスターを 死神は 見つめていた。
その横顔は まるで、 何かに引き寄せられているみたいで。
ほんの少しだけ、 真剣だった。
レトルトは死神の 隣まで歩み寄る。
ポスターを一瞥してから死神 を見る。
「……これにすんの?」
問いかける。
少しの沈黙。
そして――
『……うん』
小さな声。
いつもみたいにふざけた声ではなく、 どこか真剣で 迷いのない返事。
レトルトは もう一度ポスターを見る。
(……恋愛映画か)
「……全然アクションでも ホラーでもないやん」
呆れたように呟く。
けれど――
それ以上、何も言わない。
そのまま チケット売り場へ向かい、
「大人一枚お願いします」
短く告げ、 差し出されたチケットを受け取る。
一枚だけ。
死神は 他の人間には見えない。
だから、 チケットはいらない。
レトルトはそれを知っていて、
当然のように一枚だけ買った。
振り返ると死神 がすぐ後ろに立っていた。
さっきまでの 騒がしさはなくて、 ただ 静かにチケットを見ていた。
「……行くで」
レトルトが言う。
『……うん』
期待を滲ませた声で死神は返事をして
レトルトの後を追っていく。
スクリーンの光が 暗い館内をゆらゆらと照らす。
流れる音楽。
重なる言葉。
物語は どこにでもあるような純愛だった。
片想い。
すれ違い。
ようやく想いが届いて――
両想い。
「ずっと一緒にいよう」
そんな言葉とともに 二人はキスをする。
ありきたりで、 どこかで見たことのある展開。
レトルトは ただ黙ってそれを見ていた。
感情を動かすこともなく、 淡々と。
その時、 何気なく 隣を見た。
そして――
レトルトは、
わずかに目を見開いた。
死神の頬に 一筋の光。
スクリーンの光じゃない。
それは―― 涙だった。
ぽろぽろと 次から次へと溢れている。
隠そうともしない。
拭おうともしない。
ただ、死神は 静かに泣いていた。
赤い瞳が 濡れて揺れている。
その横顔を レトルトは 何も言わずにそれを見つめる。
(……死神でも、泣くんや)
そんなことを思いながら画面に視線を戻した。
スクリーンの中では 二人が抱き合っている。
“永遠”を誓うように。
(永遠なんかあるわけないやん)
冷めた表情で隣を見ると、まだ死神は泣いていて、 死神の涙はなぜかレトルトの 胸の奥をざわつかせた。
毎日、人の死と向き合ってきた。
冷たくなった身体。
裂いた皮膚の下にある、
“死んだ理由”。
それを―― 何度も、何度も、 見続けてきた。
いつからだろう。
涙を流さなくなったのは。
いつからだろう。
死に対して、
何も思わなくなったのは。
悲しいとも。
怖いとも。
何も―― 感じなくなった。
ただ 事実として受け入れるだけ。
それが、 当たり前になっていた。
なのに 隣で 死神が泣いている。
感情を隠す事もなく、ぽろぽろと 子どもみたいに泣いている。
スクリーンの中の “ありきたりな恋” に
心を揺らして。
レトルトは その横顔を見つめた。
そして 思った。
(……俺の方が よっぽど、死神やな。)
誰よりも死を知っていて、
誰よりも死を見てきて。
なのに―― 何も感じない。
生きているくせに、 どこか“終わっている”みたいな自分と
隣で涙を流す、 “死神”。
どちらが 人間らしいのか….。
映画が終わり 館内の明かりがゆっくりと灯る。
ざわざわと、人が動き出す。
席を立つ音。
話し声。
その中で――
『いや〜よかったなぁ!』
後ろから、 やけに明るい声が響く。
死神は一人で ずっと喋っていた。
『二人が両想いになれたシーン、 めっちゃ
よかったよなぁ』
身振り手振りを交えて 興奮気味に続ける。
『片想いって あんな感じなんだな!』
そして、レトルトの顔を覗き込んで、
『レトさんは どこがよかった?』
突然の問い。
レトルトは、 一瞬だけど言葉に詰まってしまった。
「……え?」
こんな質問、 されると思っていなかった。
「あぁ……えぇと….」
浮かばない。
正直、 特に何も思っていない。
「……最後のキスのところかな」
適当に答える。
その瞬間、
『キスのとこな!』
死神の顔が ぱっと明るくなった。
『わかるー!!あそこ、俺も感動した!』
まるで、 同じものを好きだと分かって
喜んでいるみたいに死神は嬉しそうに笑った。
(適当に言っただけなのにそんな顔するんや)
「……そっか」
レトルトは短く返す。
それでも死神は 満足そうに頷いた。
レトルトは 何も言わずに歩き出す。
その隣に 当たり前のように死神が並ぶ。
人混みの中。
誰にも見えない死神と、 並んで歩く。
その状況が――
少しだけ 現実じゃないみたいに感じた。
しかし、
『なぁレトさん!!次はどこ行く?』
楽しそうに話しかけてくる死神の声にレトルトは一気に現実へと引き戻され、 また大きなため息をついた。
続く
コメント
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なんか、レトさんがちょーっとだけキヨに積極的になってる気が……?気のせいかな…。 てか、死神も泣くんだ…………