テラーノベル
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朝、オンボロ寮の窓から差し込む光で、ユウは目を覚ました。
天井には相変わらずのヒビ、壁はちょっと寒い。でも――
「おはよう、ユウ!」
グリムの声が、やけに元気だ。
昨日の夕飯がツナ缶だったからかもしれない。
「今日は錬金術のテストだろ?早く行かねーと、またアズールにバカにされるぞ!」
「それが一番嫌なんだけど……」
二人で簡単な朝食を済ませ、オンボロ寮を出る。
古びた門をくぐると、そこから先は別世界。
黒い尖塔がそびえる、ナイトレイブンカレッジだ。
授業中の教室は、今日も騒がしい。
錬金術の授業では、トレイが完璧な手順で魔法薬を完成させ、
隣ではケイトが「写真映えする色にしたいよね〜」なんて言い出して爆発寸前。
「ユウ、大丈夫か?」
デュースが心配そうに覗き込んでくる。
「うん、多分……色が変だけど」
結果はギリギリ成功。
クロウリー校長は満足そうに頷きつつ、なぜか後片付けは全部ユウ任せだった。
昼休みは中庭でのんびり。
リドルの厳しい規則の話を聞いたり、レオナが木陰で昼寝していたり。
騒がしくて、ちょっと大変だけど――
不思議と、ここでの生活は嫌いじゃなかった。
夕方、授業が終わるとオンボロ寮へ帰る。
「は〜、やっぱ家は落ち着くな」
ボロいけど、ここは自分の居場所だ。
掃除をして、壊れた棚を直して、グリムとケンカして、仲直りして。
夜になると、窓の外に学園の明かりが見える。
遠くで誰かの笑い声がして、魔法の光が一瞬だけ空を照らす。
「なあユウ」
グリムが静かに言う。
「ここ、最初は最悪だと思ったけどさ……
悪くねーよな」
ユウは少し考えて、微笑んだ。
「うん。学校も、家も。
どっちも大変だけど……今は、ちゃんと“生活”してる気がする」
オンボロ寮の夜は静かで、少し肌寒い。
でもその静けさは、明日もまた学園で生きていくための、
大切な時間だった。
オンボロ寮の夜は静かだった。
グリムはもう寝息を立てていて、ユウは机の上で今日の授業の復習をしていた。
……コンコン。
「はーい?」
ドアを開けると、そこに立っていたのはエースだった。
「よっ。まだ起きてると思ってさ」
「こんな時間にどうしたの?」
「んー、ちょっと逃げてきた。デュースとトランプでケンカして」
相変わらずだな、と思いながらも、ユウは中に招き入れた。
オンボロ寮の部屋を見回して、エースは肩をすくめる。
「何回見てもすげー部屋だよな。よく住めるわ」
「ひどいな。でも……慣れると落ち着くよ」
エースはベッドに腰を下ろして、少し真面目な顔になる。
「今日さ、錬金術。お前、結構頑張ってたよな」
「え?」
「失敗しそうでも諦めないとこ。
……そういうの、嫌いじゃない」
不意にそんなことを言われて、ユウの心臓が跳ねた。
「からかってる?」
「半分本気、半分冗談。いつもの俺」
そう言って笑うけど、視線は外れている。
いつもより、少しだけ素直な空気だった。
窓の外から、ナイトレイブンカレッジの灯りが見える。
二人並んでそれを眺めていると、エースがぽつりと言った。
「なあユウ。
最初はさ、お前のこと“面白い転校生”くらいにしか思ってなかった」
「うん……」
「でも今は、オンボロ寮に灯りついてないと、ちょっと気になる」
その言葉に、胸の奥がじんわり熱くなる。
「エース……」
「別に今すぐどうこうって話じゃねーけどさ」
そう前置きしてから、照れ隠しみたいに笑った。
「お前がここにいる間、俺は味方でいる。
それだけは本当」
ユウは少し迷ってから、素直に答えた。
「ありがとう。私も……エースが来てくれると、安心する」
一瞬、時間が止まったみたいだった。
エースは驚いた顔をして、それから小さく笑う。
「それ、反則だろ」
立ち上がって、ドアの方へ向かいながら振り返る。
「じゃ、今日は帰るわ。
また明日な、オンボロ寮の監督生」
「うん。おやすみ、エース」
ドアが閉まったあと、ユウは胸に手を当てた。
ドキドキが、なかなか収まらない。
オンボロ寮は相変わらずボロボロで、
学校生活も大変で、先のことはわからない。
それでも――
誰かと心を通わせながら過ごすこの日々は、
確かに特別なものになり始めていた。
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