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「この姿…どこかで見たことがある…そうだ、地球防衛軍のモンスターだ!」彼の脳裏には、
ゲーム内で見たハエのようなクリーチャーが浮かんだ。あのモンスターは強くはないが、
口から産み落とす卵が厄介だった。卵がすぐに孵化し、
小さなハエ型モンスターの群れが襲いかかってくる。守の声が震えた。
「な、なんで小百合さんがモンスターに…」
小百合は「キェェェェェ!」と奇声をあげ、突進してきた。
「うわぁああ!」守はとっさに倒れている天城をかばい、その場に転がった。
その瞬間――。
「ズガガガガガッ!!」
耳をつんざくようなマシンガンの轟音が響き渡る。
目を見開くと、小百合が口から産み落とした卵が次々と破裂していた。
「ブシュッ!ブシュッ!」
「ギャーぁぁぁぁ!」小百合が苦しげに叫び、卵をかばうようにして倒れ込む。
守は耳を抑えながら何が起きたのかわからず混乱していた。
視界が開けると、そこに立っていたのは二人の女性――見覚えのある顔だった。
「マリアさん、ルナさん…?」
マリアが守に視線を向けると、不思議そうに眉をひそめた。
「ん?誰だっけ?」
守は焦りながら答えた。「ボ、ボクです、フクです!」
マリアは一瞬きょとんとしたが、すぐに思い出したように笑みを浮かべた。
「あー、フクちゃんなんだ。久しぶり!」
「ど、どうしてゲームのアバターキャラがここに…?」守は信じられないものを見るような目をしていた。
マリアは肩をすくめて答えた。「あれ、防衛軍の通知来なかった?」
「通知?」
「そう、入隊しますか?ってやつ。」
守はその言葉に思い当たり、愕然とする。「来たけど…まさか!そんな…ありえないよ!」
マリアは軽く笑って答える。「まぁ、普通はそう思うよね。でもね、こうなるのよ。」
彼女たちの会話が続く中、小百合が「ガガガ」と異様な音を立てながらゆっくりと立ち上がってきた。
血の気の引いた顔で守は叫んだ。「小百合さん…」
ルナが即座に銃を構える。冷徹な視線が小百合に向けられた。
「ま、待ってください!小百合さんを殺さないで!」守は必死に手を広げてルナを制した。
マリアは冷静な声で問いかけた。「フクちゃん、それ、本当に人間だと思う?」
守は声を震わせながらも答えた。「小百合さんです!」
ルナの指が銃の引き金にかかる。緊迫した空気の中、誰もが次の瞬間に何が起こるかを予感していた――。
小百合は頭を抱えもがきだした。「うぅ・・・うぅ・・・!!」
「小百合さん大丈夫ですか!?」
マリア「まだ完璧にモンスターになってないのね。そのうち戻るよ」
そう言うと、守の目の前で、小百合の姿がモンスターから人間に戻っていった。
そのまま力を失い、地面に倒れ込む小百合。慌てて彼女を抱きかかえる守。
「小百合さん!」声を震わせながら呼びかけても、彼女は反応しない。
守の胸に、何とも言えない不安が広がる。
「マリアさん!」守は振り返り、目の前のアバターたちに問いかけた。
「説明してください!どうしてマリアさんたちがここにいるんですか?
それに、小百合さんがどうしてモンスターになったんですか?」
マリアは守の問いかけに肩をすくめながら、気楽そうに答えた。
「うーん、説明してもいいけど、ここじゃ目立つでしょ?フクちゃんの家に行こうか」
「ボ、ボクの家?」守は目を見開いて驚く。
「うん。私たち、この格好だからさ、これ以上目立ちたくないんだよね」マリアはさらりと言い放つ。
その場の惨状を一瞥して、
「さぁ行こうか、この卵とかは防衛軍が後で処理してくれるから心配しなくていいよ」と付け加えた。
マリアの視線が天城に向けられる。「で、この人はどうするの?ケガしてるようには見えないけど?」
守は迷ったが、天城を安全な場所まで運ぶことにした。「天城君は……とりあえず安全な場所へ運びます」
小百合をおんぶし、守はマリアとルナを連れてアパートへ向かうことにした。
道中、バスと電車を利用することにしたが、目立ちすぎる2人の姿が問題だった。
ルナはサイバーパンク風の衣装に全身のタトゥーが目立ち、まるで映画から飛び出してきたような存在感。
対して、マリアは子供のようなあどけない顔に不釣り合いなボディアーマーを身にまとっていた。
車内の視線を一身に浴びながら、守は内心で嘆く。
(この2人、どうやってここに来たんだよ……)
ようやくアパートに到着すると、守は小百合をベッドに寝かせてリビングに向かった。
しかし、そこで見た光景に、思わずため息をつく。
マリアとルナはテレビの前で、完全にくつろいでいた。
「フクちゃん、ピザ頼もうよ」マリアは振り返り、何の悪びれもなく言った。
「くつろぎすぎだろ……」守は呆れながらも言い返す。
「あとコーラもね。ルナも食べるよね?」マリアがルナに尋ねると、ルナは無言で頷いた。
「友達の家かよ……」守はぼやきながらも、結局ピザを注文する羽目になった。
ピザを一口食べてくつろぐ2人を見ながら、守は意を決して尋ねた。
「あの、そろそろ説明をお願いしてもいいですか?」
マリアとルナはピザをもしゃもしゃと頬張りながら、「いいよ」と気軽に答え、コーラを一口飲むと話し始めた。
「防衛軍に入るとね、現実世界でも任務が来るんだよ」
「任務?」守は眉をひそめる。
「そう。スマホにメッセージが来てるはずだよ。確認してみて」
言われるまま、守はスマホを取り出して確認すると、そこには見慣れないメッセージが表示されていた。
「モンスターが近くにいます。至急応戦してください。ログイン」
「ログイン?」守は困惑しながらも画面を見つめる。
「そう、それを押すとね、私たちみたいにゲームのアバターになって、
モンスターを退治できるのよ」マリアが軽い口調で答える。
頭が混乱している守。しかし、つい先ほど襲ってきたモンスターや
ここにいるマリアとルナの存在を考えると、否定できない。半信半疑のまま彼は口を開いた。
「それで、小百合さんはどうしてモンスターに?」
マリアは少し眉をひそめながら説明を続けた。
「う~ん・・・あの子も防衛軍のメンバーだったのかな
あのハエみたいなモンスタースウォームフライに寄生されちゃったみたいね
たぶん、こっちの世界で卵を産むのが目的だったんだと思う」
「寄生された……?」守の脳裏に過去の記憶がよぎる。ゲームの初期にシンシアと共に戦った、
うねうねと動く触手のモンスター。あの時、守の大事な部分を執拗に狙っていたのを鮮明に思い出した。
「あれは……体の中に入って寄生させるためだったのか……」守は冷や汗を浮かべながらつぶやいた。
マリアがピザの一切れを取りながら軽く頷く。
「そうそう。そのまま放置してたら、寄生されてモンスターになっちゃうんだよね」
その言葉に、守は背筋がゾクッとした。想像するだけで恐ろしい光景が脳裏に浮かび、思わず体を震わせる。