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放課後。
体育館の片隅で、何やら危険な香りのする光景 が繰り広げられていた。
「……先輩、何やってるんですか。」
鈴はドン引きした顔で、目の前の光景を見つめていた。
倉斗が、バレーボールの的にされていた。
「っく……! いいぞ、その調子だ……!」
彼は壁に背をつけ、顔を輝かせながらバレー部の練習の邪魔になっていた。いや、むしろ 積極的に邪魔になりに行っている。
「ほら、もっと正確に俺を狙ってこい!!罵倒を追加してくれてもいいんだぞ!」
「いや、どんな指導法ですかそれ!?」
「違う、これは俺のための訓練なんだ……!」
倉斗は熱く語る。
「人は困難を乗り越えることで成長する……つまり! このボールの衝撃が、俺をより強くしてくれるんだ!!」
「えええ……」
鈴は本気で帰りたくなった。しかし、それよりも驚くべきは バレー部のメンバーが完全に倉斗の異常性を理解してしまい、誰も止めていない ことだった。
「……あの、バレー部の皆さん? 普通に止めません?」
「ああ、大丈夫大丈夫。最初は止めてたんだけどね……」
バレー部のキャプテンが、遠い目をしながら答える。
「倉斗先輩、避けるのめっちゃ上手いから、逆にいい練習になるんだよね。」
「えっ、それで許可しちゃったんですか!?」
「ていうか、たまにわざと当たりに行くし……」
「……うわぁ……」
鈴は顔を覆った。
この人、本物のドMだ……!!
「……っていうか、よく見たら先輩、腕とか赤くなってません?」
「はははっ、いいだろう? 俺の努力の証だ!」
爽やかな笑顔で自慢げに見せてくる倉斗の腕には、明らかに ボールの跡がくっきり 残っていた。
「いや、誇ることじゃないですよ!? 普通に痛そうじゃないですか!!」
「痛みこそ成長の糧……この痛みが俺をさらに高みへと導いてくれるんだ……!堪らないだろ…ははは…!」
「いや、導かれてるのはただの病院ですよね!?」
鈴が全力でツッコむと、倉斗は満足げに頷く。
「ふふ……やっぱり後輩ちゃんはツッコミが鋭いな。」
「いや、嬉しそうに言わないでください!?!?」
しかし、鈴の言葉などお構いなしに、倉斗は 爽やかすぎるドMオーラ を放ちながら宣言する。
「さあ、次の一撃をくれ! Let’sバレー!!」
「も~~~~~無理~~~~~~!!!!」
体育館には、鈴の悲痛な叫びが響き渡るのだった。