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第5話:リアリズム
目を覚ますと、校舎の中に誰もいなかった。
電気も消え、廊下の奥に光るのは非常灯だけ。
スマホの画面が震える。
通知:「8:09」
ZEROの投稿が更新されていた。
【ZERO】
「8:12まで、あと3分。」
「選べ。見たいか、見たくないか。」
心臓が嫌なリズムで鳴る。
陸は階段を駆け上がり、屋上の扉を押し開けた。
風の音。
灰色の空。
その中央に、結衣が立っていた。
足元に白いチョークで描かれた大きな円。
円の中央に、陸の名前。
「りく、全部、君のせいだよ。」
声が風に溶ける。
「ZEROは、君の記録を再生してるだけ。」
「でも、君が“それ”を信じた瞬間に、現実になるの。」
陸は叫んだ。
「ふざけるな! お前は結衣じゃない!」
結衣の瞳に、光が戻る。
そして、微笑む。
「やっと、思い出したね。」
「——僕が、ZEROだよ。」
8:12。
画面が真っ白になる。
遠くで警報が鳴り、空が光に包まれる。
音はなかった。