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俺は真辺翔。高校1年生。可も不可もなく、平凡な人生を送っている普通の学生。
俺には親友がいる。同じクラスの柳春人。
今日はそんな春人と委員会の日、図書室に集まっていた。
最初に、図書委員の自己紹介をするらしい。
「じゃあ、委員長からお願いします」
「こんにちは。図書委員長の坂部愛斗です。当番制だし、あんまり関わることもないかもしれないけど、よろしくね」
優しそうな人だなと思った。
この時はまだ、この人の事を好きになるなんて思ってもなかった。
そして6月。俺は図書当番で昼休みに図書室に行った。
図書室に入ると、もう委員長がもう居て。思わず慌ててカウンターの中に滑り込んだ。
「すみません!」
「そんなに急がなくて大丈夫だよ。ゆっくりで大丈夫だから。ね?」
心がじんわりするような笑顔でさ。思わず見とれて、動けなくなった。
「真辺くん?」
「…あ、すみません!えっと…」
「ここ、座って」
って言いながら、委員長が座ってる横のイスをトントンってしてた。だから俺は急いで座ったんだよね。
そんな俺を見て、委員長はふふって笑ってた。
「真辺くんってなんか可愛いね」
「そうなんですよ。俺、可愛いんです」
そう言って両頬に人差し指を添えて見せると委員長は目をぱちぱちさせた。
…しまった。やりすぎた。
今の滑ったよね。うん。
「あっ、えっと…今のは何でもなくて!ほんと、忘れてください!」
俺が焦ってそう言ったら、委員長はふふって笑った。
「なんで?可愛かったよ。真辺くん」
そんなふうに言われたら、流石に照れる。
「…ありがとうございます」
「あれ。照れちゃったかな。やっぱり可愛いね」
「やめてくださいよ。そんなに褒められたら、俺でも照れちゃいます」
「じゃあ、可愛い真辺くん。早速お仕事だよ」
そう言って委員長はカウンターの外を見る。そんな先輩を見て俺も見たら、カウンターの前に生徒が立っていた。
「返却お願いします」
「はい!」
俺は本を受け取り、貸し出しカードに判子を押した。
「返却完了です!」
「ありがとうございました」
生徒はそう言って立ち去る。
「真辺くん、元気だね」
「あ、いや…こんなに褒められるの久しぶりでテンション上がっちゃって…」
「真辺くんは褒めるとテンションが上がるんだね」
「はい!上がります!委員長はテンション上がらないんですか?」
「どうだろう。最近別に褒められるようなことしてないからな…」
委員長はそう言って考え込む。そんな委員長に俺はすかさず言う。
「委員長の笑顔は人の心を穏やかにさせますね。それに、優しくて心がポカポカになります」
「本当?嬉しいな」
そう言って委員長は嬉しそうに笑った。
「委員長は素直に喜ぶタイプなんですね」
「そうみたいだね」
そう言って委員長はニコッと笑う。
自分の事なのに、他人事みたいにそう言う委員長に少し疑問に思いながらも、図書委員の仕事を続けてやった。
次の日の昼休み、俺は人が来ない時に読むための一冊の本を片手に図書室に向かった。
図書室にはまだ委員長は来ていなかった。俺はカウンターの中に入り、椅子に座る。そして、本をそっとカウンターの端に置いた。
仕事をこなして人が来ず暇になった時、俺はカウンターの端に置いた本を手に取る。
その様子を見ていた委員長は不思議そうに聞く。
「なにそれ?」
「人来ない時暇じゃないですか。なんで、これ!」
そう言って俺は本を委員長に見せる。
「それ…」
委員長は驚いたような顔でそう言う。
「これ、知ってるんですか?」
「うん。昔から大好きで、何回も読んじゃうんだよね」
「分かります!俺も何回も読んでて、また読みたいな〜って思って持ってきたんです」
「おぉ〜。これ知ってる人初めて会った」
「俺もです!すげぇ嬉しいです」
この本がきっかけで、俺たちは仲良くなった。
当番が終わってからも先輩の教室に行ったり、二人で映画を見に行ったりしていた。
そして秋。文化祭の時期がやってきた。
俺は文化祭で開催される”女装・男装コンテスト”に出ることになった。
そして、その女装コンテストで着る服を買いに、愛斗先輩と一緒にショッピングモールに行くことになった。
当日。俺は女装用のウィッグを被り、メイクをして集合場所に向かった。
愛斗先輩を見つけ、先輩の元へ歩いていく。目が合い、手を振ろうとすると、サッと目を逸らされた。
多分、俺だって気づいてない。そこで俺は少しふざけて見る事にした。
「お兄さん、かっこいいですね」
女の子っぽい声にして、そう言ってみる。
先輩はチラッとこっちを見た後、再び目を逸らした。
こんな可愛い俺を無視するなんて、なんか悔しい。
そう思った俺は、女の子っぽい声にしたまま言う。
「あの、聞いてます?お兄さんかっこいいですねって言ってるんですけど」
俺がそう言うと、先輩は面倒くさそうな顔で言う。
「逆ナンですか?悪いですけど、俺あなたに興味ないので、ごめんなさい」
少し怒った口調だ。ふざけすぎたかな。
俺は慌てて元の声に戻す。
「すみませんふざけました。俺です。翔です」
俺がそういうと、先輩は驚いた表情を浮かべる。
「嘘。翔くん?ごめんっ。知らない女の人かと思って…」
「いいんですよ!俺がふざけたのが悪いんで」
俺がそう言うと、先輩の視線が、俺の顔からゆっくりと下に落ちる。
「めっちゃ可愛い」
さっきの態度が嘘かのように、先輩の目の色が変わる。
その視線に、冗談の気配はなかった。
やばい。好きだ。
不意にそう思った。俺は、その気持ちを誤魔化すように口を開く。
「な、なんですか。さっきは興味無いとか言ってたくせに」
「翔くんなら話が別だし、俺はいつもの翔くんの方が可愛くて好きかな」
そう言って愛斗先輩はニコッと笑う。
やばい。この人、やばい。さっきから俺の心を撃ち抜いてくる。
「そ、そうですか」
身体が熱い。俺は手で自分の顔を仰ぐ。
「翔くん大丈夫?顔赤いけど」
「えっ。だ、大丈夫です!なんか、暑くて!」
「暑いの?なら…」
愛斗先輩はそう言った後、カバンからペットボトルを取り出す。
「はい。これ。俺の飲みかけだけど飲む?」
そう言って愛斗先輩は俺にペットボトルを差し出す。
関節キス。すぐにそう思った。なんでそんな事気にしてんだ。なんかさっきから自分がおかしい。
「あっ…すみませんっ。ありがとうございます」
俺は慌ててペットボトルを受け取る。そして慌てたままペットボトルの水を飲むと、水が変な所に入ってしまい、咳き込む。
「ちょっ、大丈夫?」
「すみませんほんと。ぜんっぜん大丈夫なんで!とりあえず行きましょう!ね!」
俺はそう言って逃げるように歩き出した。
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