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#探偵
橘靖竜
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おだんご🍡
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二月十一日。国内クルージング旅行当日の朝。月呼は身なりをととのえると、エジプトで買った香水をつける。それはいちばんお気に入りの匂いでもあった。
ドレッサーの前で座っていると、鏡の中の自分と目が合う。
「はーあ。ここまでたれ目じゃなかったならなあ」
父親ゆずりのたれた目じり。同性からは愛らしく見えてうらやましいと言われることもあるが、他人からみくびられやすいような気がして、月呼自身は好ましく思っていなかった。
鏡で自分の姿をまじまじと見ると、前髪の長さが気になった。美容院で定期的に明るい茶色に染めてもらったり、毛先をカットしてもらっているが、前髪だけは頻繁に自分で切っている。本人としては眉毛の位置と同じ長さを望ましく思うのだが、今はそれより二ミリメートルほど伸びていた。月呼はそのわずかな差にこだわる。
「そろそろ前髪を切らなきゃなあ――旅行が終わってからでいいか」
そろそろ家を出た方がいい時刻がせまっていた。月呼は荷物に不備がないか、最終確認する。
「あっ!」
ふと、ベッドの上にあるものが目に映った。
「いけない、忘れるところだった! 荷物になるのはわかっているけれど、これがないと眠れないんだよね」
あわててメジェドのデザインをした抱き枕を入れる。それは小学生の頃から愛用していた。親に買ってもらった時は真っ白だったそれも、今では最初からそうであったようにくすんでいる。
一階におりて、家族にしばしの別れを告げた。
「月呼お姉ちゃんが一週間もいないとなると、寂しいなあ」
末っ子の詞央は甘えん坊だ。
「毎日連絡するから」
月呼は左肩にボストンバッグの吊りひもをさげ、右手でキャリーケースを押しながら歩く。成人女性の一週間分の荷物となると、ひとりで持つには結構重くなっていた。
「あっ! もしかして、あれかな?」
ウェブページに書かれていた場所に着くと、寄港地までの無料循環バスを見つける。そこにいた女性バスガイドにチケットを見せる。一応、老紳士から譲り受けたことも説明した。その老紳士はパーティーの出し物の景品でこれをもらったと。バスガイドは「ああ、はい、はい」と理解しているようだった。
大型クルーズ船旅行となると、全国から乗客が集まるはず。だが、最終的に集まったのは月呼を含めて三人だけだった。この地区からの参加者はあまりいないのだろうと、月呼は自分以外の客が少ないことを気にもとめない。
「サービスです」
月呼はバスガイドから透明のペットボトルを渡された。手で触ると、それは白湯であることがわかる。
「ありがとうございます」
月呼はバスのシートに座ってから、ペットボトルのふたを開け、すぐに飲む。白湯のほのかなあたたかさは、外の寒さで冷えた月呼の体をあたためた。
バスが出発してから二十分。月呼の瞼が重くなる。
「眠くなってきちゃった……」
瞼を何度こすっても眠気が取れない。バスの窓からさし込む日の光と、昨日はいつもより寝つきが悪かったことが影響しているのだろう。月呼はそのままバスの窓側に上半身を傾けた。
コメント
1件
読んだよ!!第4話、もう朝から月呼ちゃんの細かいこだわりが可愛すぎて悶えた😭💕 たれ目コンプレックスとか前髪2ミリのこだわりとか、女子あるあるすぎて共感しかない…!そしてメジェド抱き枕、小学生の頃から愛用してるってギャップ萌え〜!!白湯で眠くなっちゃうラスト、何か起きそうで続きが気になる…!次話も絶対読むね!!🌸