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朝。
いつものように教室へ入る。
昨日までと変わらない。
窓際の席。
机の上に鞄を置く。
椅子を引く。
「……」
ふと、隣を見る。
誰もいない。
「⋯あれ、」
まだ来てないのか。
時計を見る。
いつもなら、もう来ている時間だった。
まぁ、そんな日もあるか。
そう思って、教科書を取り出す。
けれど。
「……」
なんとなく、静かだった。
教室にはまだ人が少ない。
窓の外を見る。
昨日まで降っていた雨は止んでいて、空には薄い雲が残っていた。
「おはよー。」
「おはよう。」
クラスメイトの声が聞こえる。
少しずつ教室が賑やかになっていく。
それでも。
隣の席だけが、ずっと空いていた。
一時間目が始まる。
先生が黒板に文字を書く。
俺はノートを取る。
いつも通り。
……のはずなのに。
なんとなく落ち着かない。
横を見る。
やっぱり、いない。
「……、」
別に。
隣の席に誰が座っていようが、授業には関係ない。
そう思って前を向く。
けれど、数分もしないうちにまた時計を見る。
まだ来ていない。
二時間目。
三時間目。
気付けば午前の授業が終わっていた。
昼休み。
弁当を取り出して、いつものように窓際を見る。
やっぱり空席。
「……」
なんとなく、パンを一つ余計に買ってきたような気分になる。
別に買ってないけど。
その時。
教室の後ろの扉が開いた。
「ごめんごめん。」
少し低めの、穏やかな声。
振り返る。
らっだぁが立っていた。
「……」
「おはよ。」
「もう昼やぞ。」
「ごめんて。」
「遅すぎやろ。」
「ちょっと寝坊した。」
「珍しいな。」
「昨日雨だったから疲れちゃって。」
「⋯雨で?」
「雨で。」
「雨好きって言っとったやん。」
「好きと疲れるは別ですー。」
らっだぁは笑いながら席に座る。
「きょーさん、待っててくれた?」
「……別に。」
「そっか。」
「そっちこそ。」
「ん?」
「昼、一緒に食べるんやろ。」
「⋯あ、」
らっだぁが少し目を丸くする。
「もちろん。」
その笑顔を見て、なんとなく安心した。
「今日何食べるの?」
「パン。」
「また?」
「悪いか?」
「悪くないよ。」
「ならええやろ。」
「はいはい。」
いつも通りの会話。
それだけなのに。
さっきまで感じていた妙な静けさが、なくなっていく。
「あ、ねぇ。」
らっだぁがパンを開けながら言う。
「今日、放課後どうする?」
「帰るやろ。」
「そっか。」
「なんや。」
「いや。」
少しだけ笑う。
「今日も、一緒に帰ってくれるんかなって思って。」
「……」
「⋯え、なんか変?」
「いや、」
少しだけ間を置いて。
「帰ろ。」
「よっしゃ。」
らっだぁが笑う。
午後の授業。
隣には、いつものようにらっだぁがいる。
先生の話を聞きながら、ふと横を見る。
真面目にノートを取っている。
昨日と同じ。
一昨日と同じ。
でも。
今日は、少し違って見えた。
放課後。
二人で教室を出る。
「今日何食べる?」
「お前は⋯またアイスか?」
「うん。」
「よく飽きんな。」
「飽きないでしょ。」
「そうか。」
「きょーさんも食べる?」
「……今日は食べる。」
「やった。」
また、らっだぁが笑う。
その笑顔を見ながら、ふと思う。
朝からずっと。
隣が空いていた。
たったそれだけなのに。
いつもより一日が長く感じた。
「きょーさん?」
「ん?」
「どうしたの?」
「⋯いや。」
そう言って、歩き出す。
隣には、ちゃんと誰かがいる。
それだけで。
少しだけ帰り道が明るく感じた。
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