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ハートの泥棒

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ハートの泥棒

4 - 毎日、ずっと

♥

155

2025年08月13日

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⚠️注意書き

・恋愛

・緑黄

・魔女設定

・下手っぴ注意報







あれから、お父様達と口をきかなくなった。


だって、プレゼントを壊されたんだもん。

それくらいいいよね。


すちくんとも、会わなくなった。


俺が会いたくないって言っちゃったんだし、当然だよね。



👑「…はぁ」



ベッド広げただけの絵本をただ見つめる。

ページは初めのところからひとつも進んでいないまま。


部屋を出るのは、食事と入浴の時だけ。


お父様の合鍵を発見して以来、

部屋に入られたくない時はチェーンをつけるようにしている。


家族の顔を見るのも、ほんのちょっとの時間。


こんなの、” 家族 “ って言うのかな…。






入浴まで済ませた23:30。


いつも通り、布団にくるまって、眠気が来るまで、時間が過ぎるのを待つ。


襟の中からペンダントを取り出した。

千切れたチェーンは、部屋にあった別の紐で代用した。


ぎゅっと握って、おでこに当てる。


唯一、すちくんを感じられるこの瞬間が大好きだ。



👑「…すき」



かも。しれない。


外へ零れないよう、小さく呟いた。


今日も長い夜になりそうだけど、耐えればいつか朝が来る。


冴えきった脳でそう考え、静かに目を瞑った。






翌朝、また屋敷内が騒がしかった。


今日はどうやら、昼間に他国の大臣なんかが屋敷に訪れる予定らしく、

使用人たちは客間を片付けていた。


まあ、俺には関係ないけれど。


用意された朝食を一口付けて、すぐに食器を所定の位置に戻した。


ほんとにお腹が空かない。


両親には目もくれず、部屋に戻った。






黒いカーテンを開けて、部屋の中に、白い光を取り込む。


今日も本棚から、絵本を数冊選び取った。


ベッドの上に適当に広げて、一つ一つ、ページを捲っていく。


どれもこれも、ハッピーエンドばかりでつまらない。


次のページを捲ろうとする手が止まった。


操られるようにベッドから離れ、引き出しからあのお花を手に取る。


鏡の前に立って、耳の近くにそっと挿した。


首にかけたペンダントを服の中に隠して、慎重にドアを開ける。


周りに注意を払いながら長い廊下を渡って、足早に屋敷の外へ出た。






花畑の上に座り込む。


今が何時なのかはもう分からないけれど、太陽が真ん中ら辺だから、

多分12:00過ぎてるのかな。


もうすぐ昼食の用意がされるかも。


でも、今日は大人の偉い人が沢山来るみたいだし、

今更帰る気にもなれないし。


暫くはここにいよう。


優しい風が流れ、花畑一面が音を立てながら揺れた。


ここは少し小高い丘の上にあるから、少し遠くには、栄えた街が見える。


小さい頃、よく劇場とかに連れてってもらってたな。


近くに生えている、シロツメクサの白い花とミツバを千切って花冠を作りながら、昔のことを思い出していた。






教会の美しい鐘の音が街に響いた。

14:00の合図だ。


そろそろ帰ろう。


作った冠を潰さないように掴んで、その場を後にした。






客間の前を通らないよう、外から廊下に通じる渡り廊下を通って、

足音を立てないように階段を一歩一歩上がる。


部屋に入ったらすぐに鍵をかけて、

白い冠と黄色いお花は引き出しにしまって、鍵をかける。

ペンダントは首から外して、机に置いた。


ベッドに散らかった絵本でも片付けようと思って、手を伸ばした時。


部屋の外が随分と騒がしくなった。

話し声が聞こえるし、物音も一段と大きい。


何かあったのか、ドアの方を振り返ると、ちょうどドアが勢いよく開いた。



👑「なっ、なに…?」



お父様だった。

憤慨した様子で、部屋の中に入ってくる。



「お前、さっきまでどこにいたんだ」



憤慨した様子で聞いてきた。


別に、どこにいてもいいでしょ。

そう言いたかったけれど、流石にそんな喧嘩を売るようなことは言えない。

正直に本当のことを言うつもりだった。



👑「どこって…っ」

👑「近くの__」


「魔女に会いに行っていたんだろ!」



お父様が、今までになく声を荒らげた。



👑「行ってないよ、!」



絵本を持つ手に力を込めて、お父様の言葉に反発する。


でも、そんなのひとつも効果なんてなくて。


お父様の視線が机の上のペンダントに移動した。



「…やはり、これを処分するべきだったか」



俺の真横を通り過ぎて、ペンダントを掴むと、腕を振り上げて思いっきり床に投げつけた。


目の前で粉々になった水晶。

青く美しい硝子の欠片が散乱した。



👑「…へ?」



目の前に広がった光景が信じられなかった。

力が抜けて、持っていた絵本が腕から滑り落ちた。


なんで…。



👑「……っ、(涙目」


👑「きらい、っ!」



ただ一言、言葉を放り投げる。


部屋にどんどん集まり、お父様を落ち着かせる使用人達も、

そんな様子を面白そうに眺めるだけのお母様も、

俺の気持ちなんて知らずに罵声を浴びせてくるお父様も、

毎日毎日、騒がしくて狭くて苦しいこの屋敷も、

全部全部、鬱陶しい。


雑に鍵を掴んで引き出しを開けて、中からお花を出した。


落ちた絵本から一冊のお気に入りを拾って、部屋を出ようとする。


その時。



🍵「みことちゃん、っ!」



後ろから大好きな声が聞こえてきた。

振り返ると、ずっと会いたかった人の姿。

いつの間にか窓が全開に開いていた。



👑「…っ、すちく、、(泣」



差し出された手に、俺の手を重ねて絡める。



「魔女…っ、!」


🍵「わっ、…(ビクッ」



お父様の声に反応して、すちくんが顔を上げる。



「貴様…っ、俺の息子に何を吹き込んだんだ!?」


🍵「ぇ…、えっと…、、(困」



焦ったように言葉に詰まっているすちくんの代わりに、俺が口を開いた。



👑「すちくんは何もしてないよ」

👑「俺が好きで一緒にいたいの、!」



窓の縁を思いっきり蹴って、外に出た。

さっきまでいた部屋がどんどん遠ざかっていく。



👑「…さようなら」



もう、帰って来ないかな。






賑やかな街の上空、高い高いところを飛ぶ。



👑「…ごめん、」

👑「ペンダント、壊しちゃった」



申し訳なさそうに隣から聞こえる暗い声。

そんな顔、君には似合わないのに。



🍵「いいのいいの、」

🍵「もうあれも脆かったしね」



みことちゃんの手を握り直して、

そう言い聞かせる。



🍵「それより、」

🍵「これからどうする?」


部屋から持ち出した絵本の表紙を見つめているみことちゃんに尋ねる。



👑「…連れてって、」


🍵「え?」



どこに?

そう聞く前に、みことちゃんが肩に寄りかかって静かに言った。



👑「俺、すちくんと一緒がいい」

👑「すちくんのおうち、連れてって欲しい」

👑「ダメ、?」



お願いされると断れない性格。

それとも、君だからなのかな。



🍵「…分かった、」



みことちゃんの頭に、自分の頭を重ねる。



👑「…好きです、⸝⸝」


🍵「俺も、(照笑」



これからは、毎日会えるよね。


夜中だけじゃなくて、

一日中、ずっと、一緒に____。





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