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「ん?なんかあんの?」
早朝のオフィス。社員たちがソワソワざわざわしているこの空間。何があるのかわからない俺は阿部と目黒に問う。
「今日は中途採用者と他部署から移動してくる人達が来る日でしょ?」
「あー…そんなのあったな」
「始まるみたいっすよ」
そして、部長と一声で場が静まり返る。中途採用者たちと異動者たちの自己紹介が始まった。そのなかでもひときわ目立った奴もいた。それは…
「システム部から異動してきました。」
「深澤辰哉です、お願いしまぁす」
システム部から総務部ってあんまりないのに、だから目立って見えたのもそうだが、なんだろう…やけに女子たちの声が聞こえてくる。挨拶は元気がよく人当たりが良さそう。隠れイケメン的な感じなのだろうか。
それともう一人…
「はよございます!中途採用の向井康二です!」
「関西出身で関西弁しゃべりますが気軽に話しかけてください!」
彼もなかなかに目立っていた。関西出身でこれまた元気がよく犬系男子とでも言うんだろう。標準語だらけの会社で関西弁が1つ混じるだけで周りが明るくなるのが分かる。
「こりゃ騒がしくなるぞ 」
「ですね」
「__じゃあ深澤の指導係を阿部、向井は渡辺。頼むぞ」
「はぁ!?俺っすか!」
「お前、阿部と同期だろ。そのくらいできる」
「どういう理由だよぉ~…!」
なぜか指導係へと昇格した俺。あの陽キャと常に横にいないといけない。考えただけで疲れてしまう。目黒は小声で「応援してます」と言ってくれた。
…なんていい後輩なんだ。それに比べ、阿部はニコニコ笑顔で「頑張ろうねぇ」と言ってくる。うざいな。そんな事をしていたら、新人、向井に話しかけられた。
「あの、渡辺…先輩で合ってます?」
「あ、はい。そうです。渡辺翔太です」
「翔太先輩!改めまして向井康二です!」
「おう、元気だなお前」
「そこだけは昔から褒められます笑」
思っていた以上に礼儀がしっかりしている。
「んま、俺には敬語使わなくていいから」
「て?いいんです?」
「逆に俺が嫌だから。上司たちにはちゃんとしろよ」
「はーい!ありがとなしょっぴー!」
急にあだ名呼び。えぇ…と思ったが許してしまった手前、注意するのも違うなと思い突っ込みは入れなかった。
「あ…目黒。俺先に」
「はい、お気をつけて」
「え、しょっぴーもう帰るん?」
「俺はちょっと用事あるの。分からんとこあったら目黒か阿部に聞いて」
「ほーい。気をつけてなぁ~…」
「…なぁめめ?」
「?なに?」
俺は一度家に戻り病院へと向かった。部長たちに涼太の存在は伝えておらず、そのためか親の介護だと勘違いしている。何となく彼女を知られたくなくて、涼太を知られたくなくてうやむやにしている。
だからといって新人任せるのは違くないか?と一瞬考えたがなってしまったものはしょうがない。
…切り替えないと涼太に「いつまで同じ事言ってるの」って怒られそうな気がして。
「涼…太っ…?」
「あ、しょーた」
「…起き、たの?」
「うん。ずぅ~と寝ててごめんね」
「…ほんとだよ…笑」
「寂しかったでしょ~?ほらおいで?」
病室を開けたそこには、ずっと眠っていた涼太が起きていた。もちろん驚いた。
でも、それ以上に「ほらね」って気持ちが勝った。目を覚ます、俺をおいてかないって信じてたから。
「ばーか…起きるのおせーわ…」
「んふふ…ごめんね翔太」
涼太は俺を優しく包み込んでくれた。
あぁ…久しぶりの涼太の温もりだ。俺がずっと待ってた温かみ。おかえり涼太。おはよ涼太…いつまでもこうしていたい。離したくない彼のことを…
コメント
2件
そうだそうだ一生離すなー