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「涼太、無理はなしな」
「うん」
数日後、涼太は退院してまた俺たち二人の家に戻ってきた。涼太は「ろくに何も食べてないでしょ」と言って帰って直ぐなのにもうキッチンに立っている。
「少し休みなよ」
「大好きな彼氏が痩せ細ってるの見て何もしない彼女はいないでしょ?」
「んん…あー…うん」
「大好き」と言う言葉に過剰に反応してしまった。久しぶりの涼太の口から聞いた愛の言葉。心がきゅっとなる。でも、苦しいキュッじゃない。嬉しさと小っ恥ずかしさのきゅってやつ。
「翔太が好きなグラタン。待っててね」
キッチンに立つ彼は生き生きとしていた。
「涼太、行ってくるな」
「もし外出るなら連絡入れといて。でもできる限りでないでね」
「過保護すぎだよ」
「外で一人倒れられてるのが困るんだ」
「それにナンパにあったりしたら……」
「うーん、色々言いたいことあるけど今日はそんなに用事ないから出るつもりはないよ」
「了解、じゃ、行ってきます」
「あ、まって」
「ん?」
呼び止められ、くるっと涼太の方を向く。その瞬間唇に柔らかい感触が走った。
「……行ってらっしゃい」
「…え、あ、、え??いま、涼太から…???」
「なによ、ほら早く行け」
「口悪!」
涼太からの口付けは滅多にない。心が飛び跳ねそうなくらいに嬉しかった。「もう一回!」と言ったが「早く行ってこい」ってさ。
帰ってきたらやり返すと言うと、ふふっと笑って行ってらっしゃいと言ってくれた。俺もそれに応える。
「行ってきます」
「はよざいまーす」
「おはようです。翔太くん」
「はよ、早いな」
「阿部ちゃんがいっつも早いからね」
「おはよ翔太~今日の資料置いとくねぇ」
「へいへい」
「あ、そう言えば舘さんはどうです…?」
「ん?昨日退院して今は元気だぞ」
「朝なんか俺寝起きなのに飛びついてきたからな…」
「なにそれ!かわいいじゃん!」
「阿部、耳元はやめろ」
そんな他愛もないから会話。イツメンでいつも通り始業前話す。でもここ数ヶ月はちょっと違う。だって、
「なーに楽しそうにしてんの?わら」
「ふっかか、いや別に?」
「ひでー!笑」
他部署から移動してきた深澤と
「俺も混ぜてぇ!」
新卒くんの向井が加わった5人で話すことが多くなった。まぁ教育係という立場もそうだが、この2人はとにかくコミュニケーション能力が高い。
深澤は会議なんかでも堂々と意見を言えて尚且つ回しもできる秀才。
向井は発言こそたまにヒヤヒヤするが人当たりが良く上司人からは大人気。おまけに女子社員のお悩み相談なんかにも乗っちゃって…どえらい者が来たなぁとつい考えてしまう。
「てか、しょっぴー達は恋人とおらへんの!?」
「俺みんなで恋バナしたいねーん!」
「…アホ抜かせ。こんな忙しいのに恋人なんか作れるか」
「…あはは…」
「んふ…」
阿部も目黒も苦笑い。だって俺達はこの関係を2人に打ち明けていないからだ。別に言うことじゃないし、プライバシーってもんはある。
それに世間からしたら男×男はまだまだ理解が足りない存在。仲が良かろうと言えないものは言えないのだ。
「…そういう康二はいねーの?」
「ん?おれぇ?俺はね!片思い中!」
「ほえ、誰々?笑」
「えーふっかさんには教えへん!」
「ちょ!教えろよぉ~笑!」
「…あぶねぇっすね」
「俺は言わねーからな」
「俺も極力言いたくないねぇ…」
渋い顔が抜けたい俺たち。いつまで隠し通せるだろうか…
「あぁ…!疲れた!」
仕事が終わり、帰宅準備にはいる。今日は定時を過ぎてしまっていて涼太を待たせている。早く帰らないと「寂しかった」って拗ねるから。拗ねたらずっと拗ねっぱなしで俺のハグさえ受け付けない。最終的に甘いものを渡して機嫌を戻しる。
…身体が心配なんだけどなぁ…
「ふぅ…じゃ、お疲れさまです」
「お疲れ様翔太くん」
「早く帰んなぁ(舘さん拗ねちゃうよ)口パク」
「わかってるって」
会社を出てすぐ、涼太に連絡を入れようとした時だった。聞き覚えのある声が2個、重なって聞こえてきた。
「…は?なんで」
『やだ…!来ないで!』
『なんでなん…涼ちゃん?せっかく会えたんに!』
俺の前には言い争いをしている“涼太と康二”の姿があった。周りから見たらただの喧嘩みたいだが俺は違う疑問が浮かんだ。
“なぜ康二は涼太をしってる?”
この疑問。涼太の話はしたことがない。それ前提に写真も見せたことがない。じゃあなぜ知っている?「涼ちゃん」と呼ぶ間柄…何かあったのは確実だろう。
「涼太!」
「!翔太!」
「涼太…どうしているの?」
「しょた…の為に、お迎え来たのっ…でも…でも…っ…」
「…そっか、ありがとう」
俺は小さく震える涼太の体を抱き寄せた。俺の腕のなかで震える涼太はまるで小動物。そんな子をなだめながら、俺は問題源…向井康二に話しかけた。
「…康二、どういうつもりだ…?」
「…そっちこそ…どういうことなん?」
「…」
色々言いたいことがあったが、涼太の震えはさらに増す一方。康二の声に反応しているのか、康二が喋りだすとびくっと身体が動くのを感じる。
「もういい、俺は帰る。じゃあな」
俺は涼太を抱っこし、そこを後にした。その場を離れても、康二の声が聞こえなくなっても、涼太はまだ震えていた。
「…涼太」
「翔太…ごめっ…ん」
「…まず、聞きたいこと何個かあって」
「うん…」
「…なんで会社の前にいたの?」
「…翔太の、会社…にお迎えに行って…サプライズしようと思って…」
「そのまま、翔太が好きなお店で、ご飯食べようと思って…」
涙交じりの声。怖くて語尾が「思って」ばっかりになっている。涼太の癖だ。
「うん…それは凄い嬉しいよ。涼太は俺のこと思ってくれたんだよね…ありがとう」
「でもね、俺朝も言ったけど、お外に出るときは必ず連絡して?」
「涼太が会社前にいて、俺びっくりしちゃったからさ‥?」
「うん…っぅん…ごめん、なさ、い……」
「泣かないで…怒ってないから…」
やっぱり泣いてしまった。こちらが怒ってなくても、涼太は自分を責めて責めて責めて…結局崩れちゃう。今も罪悪感でか俺の顔は見てくれない。でも俺は無理やり涼太と目を合わせる。
「涼太、無事でよかった。」
「俺が涼太を嫌いになることは絶対にないから、もう泣かないで?」
「っ……ぅんっ」
「…あと、もう一つ聞いてもいいかな?」
「…コクッ」
「…康二とは…どんな関係なの?」
「……」
「怒んない…?」
「怒んない」
「嫌いにならない…?」
「言っただろ?嫌いにならないって」
「っ……あの、ね…?」
そして、涼太はぽつりぽつりと話し始めた。
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続きがハラハラする(⑉• •⑉)

どんな関係何だろ〜😶🌫️😶🌫️元恋人⁉️⁉️