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「っい…いやああああああああああ!!!!」
その悲鳴は紛れもない、ローラであった───。
「──何よ、うるっさいわね」
こうも耳元で叫ばれてはびっくりして心臓が止まりそうだ。
「あ、だ、だって…!!」
ローラはなんかすごい焦りながら、だってだってと連呼する。
「とりあえず眠いから寝る。おやすみ」
そう言い捨て、また温かくてかったい布団へ潜り込む。
「待ってヘレン!!!」
それでもめげずにローラはまた待て待てと連呼する。
「だーーーー!何よ!!!」
「何よ、じゃない!!なんっで、なんで…」
「なんっでアンタは血塗れなのよおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!」
ローラは叫んだ。私の正面で。
耳鳴りが止まない。
それに一瞬意味が分からなかった。
はー?と言いながら服を見ると、
血塗れだった。
流石に焦った。
「…うわぁぁ?!」
ヘンな声が出た。
─それと同時に、前の殴り合いを思い出す。
あとで父さんに全力で謝ることにした。
病人殴るとか、私どんな神経してるのよ。
とか思ったが、最初に手ェ出してきたのは父さんなので普通の謝罪にすることにした。
とりあえず顔を洗うために外に向かおうとしたその時。
「いや、ちょ、その顔で外に出ちゃ駄目。本当に。」
さっきの騒がしい声とはうってかわり、ものすごく真剣な顔で言われた。
「私水汲んでくるから待っておよし。
……絶対に動くなよ。動いたら裂けた右腕、爪立てて揉むから」
…私は正直この子のテンションが未だ分からない。
(ローラ視点)
自分の姿が川の水面に映る。
「…分かんないわぁ…。」
そう零したのは私ことローラ。
とある劇団のとあるかわいい女の子。
私の家系は裕福でもないし、貧乏でもない。
いわゆる平民ってやつだ。
今日はヘレン親子のとこに行ったら、なぜか二人とも血みどろでぶっ倒れてた。
ヘレンの頬は私じゃ見逃しちゃうくらいには赤くなっていたが跡は残らなそうだった。
……殴り合いをしたのかなんなのか分からないけど、あの父親は跡が付かない殴り方を知っているようだ。
もしや昔やんちゃしてたとか?
…あの親バカな人が、そんなわけないか。
にしても何故殴り合いにまで発展したのだろう。
親子喧嘩ってそういうものなのかな?
いやでも娘以前に女殴るとか。
…ま、どうせヘレンが言う事聞かなかったんでしょ。
私だって親の立場になったら拳のひとつくらい出る。かも。
あの子って変に真面目なところあるからねぇ。
無理してほしくもないし、親父さんが殴ったのはわかる気がする。
ほんとはだめだけど。
⋯あの親父さんも不器用だなぁ?
起きた途端「ローラちゃんローラちゃん、うちのヘレン、オレの事嫌いになっちゃったかなぁぁ?」って半泣きで相談してくるのだもの。
みんな、素直に「あいしてる」って言えばいいのに。
言えるときに言わないと後悔するし。
ふと、昔の記憶が蘇る
⋯⋯はーやだやだ。この話まだ引きずっていたのね私⋯⋯
とりあえず、汲んだ水をヘレンのとこに持って行く事にする。
私の周り不器用な奴が多すぎるのよね全く。
「ヘレーン、水。」
私がバケツいっぱいの水を差し出すと、ヘレンはなぜか恐ろしそうな顔をした。
「……こんな量の水、どこから持ってきたの……???」
まさか買った?嘘でしょ???とすごく驚いている。
こっちだよ、嘘でしょ??
井戸水すらも?満足に飲めない使えないの?
どんな境遇で生きてたらそんなになるのよ…
…店長にヘレンの給料上げてもらうよう言うか…
「とりあえず、この布で顔拭いて。」
布を差し出す。
「う、うん…」
そう言いながらヘレンは遠慮がちに顔面を拭いた。
この子どんな生活してるの?
(ヘレン視点)
私はひとつ、疑問に思うことがあった。
「ところでなんだけどさ、ローラ」
「うん」
「あのクソゴリラはどうなった?」
そう聞くと、何故かアメリカ人かぶれに唸りだし、数秒後に答える。
「ah〜…oh………私もさっぱり。まぁクビは妥当ってトコじゃない?」
と、上手く躱された。
目が泳いでるのだけれど、見ない事にしてあげましょうか。
──なにはともあれ、私の中の脅威の一つは減ったと思う。
これで少しは平和になるかなぁ。
続く
あとがき
遅くなって誠に申し訳御座いませんでした。そして最近浮上してなかったけど生きています。
rouleau「ゴリラのその後は番外編にて…♡」