テラーノベル
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通知は、
短かった。
ジュン
切れない。
それだけ。
理由も、
説明も、ない。
でも、
十分だった。
会ったのは、
夜でも、店でもない。
人通りのある、
明るい場所。
それでも、
空気が重い。
「……やった通りにした」
ジュンは、
先にそう言った。
「優しくしなかった」
「期待も、
残してない」
「でも」
言葉が、
詰まる。
「切れない人が、いる」
その言い方が、
すでに答えだった。
その人は、
来なくなっていない。
連絡も、
減っていない。
むしろ。
「……増えた」
ジュンの声が、
少し低くなる。
「“分かってる”って言う」
「俺が仕事だってことも」
「距離があることも」
「全部、理解してるって」
——危ない。
理解している“ふり”が、
一番、境界を壊す。
「でもさ」
ジュンは、
苦笑する。
「行動が、
止まらない」
わたしは、
すぐに聞く。
「自分から、
連絡してる?」
「してない」
「店の外で、
会ってる?」
「……会ってない」
「お金、
受け取ってる?」
「それは、
仕事だけ」
——条件は、
守っている。
だから、
厄介。
「その人ね」
わたしは、
静かに言う。
「切られてないって、
思ってる」
ジュンが、
顔を上げる。
「“理解してる”って言葉は」
一拍。
「諦めじゃない」
「“待てる”って意味」
ジュンの、
喉が鳴る。
「本気にさせた覚え、
ない」
ジュンは、
言い切る。
「でも」
わたしは、
重ねる。
「本気にさせたかどうかは、
決めるのは相手」
沈黙。
「切れない理由、
分かる?」
わたしは、
問いかける。
ジュンは、
首を振る。
「“終わらせる言葉”を」
ゆっくり言う。
「一度も、
使ってないから」
「切ったつもりでも」
「相手の中では、
“保留”」
「保留は、
一番、残酷」
ジュンは、
目を伏せた。
「……じゃあ、
どうすればいい」
声が、
少しだけ弱い。
「今回は」
わたしは、
はっきり言う。
「嫌われる覚悟が必要」
ジュンが、
息を止める。
「守るために、
嫌われる」
「理解されなくても、
線を引く」
「それができないなら」
言葉を、
切る。
「この仕事、
向いてない」
長い沈黙。
車の音。
遠くの話し声。
「……怖ぇな」
ジュンは、
小さく言う。
「でも」
一拍。
「逃げるより、
マシか」
その夜。
メッセージが、
一通だけ届く。
ジュン
明日、
線を引く。
既読は、
つけない。
代わりに、
一文だけ返す。
R
それでいい。
切れない人は、
悪意で来るんじゃない。
希望を、
自分で育てただけ。
だからこそ。
一番、
終わらせにくい。
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