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「どうしたのよ? なんか眠そうなのよ」
「や……なんかユメミがわるくてな。アサからキツかった」
「ココに来てから色々トラブル続きですからねー。ちゃんと休んだ方がいいですよ」
「そ、そうだな。かえったらユックリするさ。あむっ」
大体お前らが悪いという言葉は飲みこんで、ピアーニャは目の前に差し出されたスプーンをパクッ。
「ぴあーにゃ、おいし?」
「……うむ、おいしいぞ」
すっかり観念したピアーニャから返事がもらえたアリエッタは、ぱぁぁっと花が咲いたような笑顔を見せた。
『うっ、かわいい……』
アリエッタの笑顔を直視した周囲の大人達が胸や顔を押さえて悶え、ピアーニャがジト目でそれを眺める。
「コもちもいるだろーに、ムスメとかで、なれてないのか?」
「それはそれ、これはこれですよ。こんな天使としか言いようがない女の子の笑顔とか、悶絶ものですって」
「ああ、いっぱい食べて元気に育ってほしい……そんな気持ちでいっぱいだ」
「落ち着け、お前は独身だろ。なんで色々省略して父性に目覚めてんだ」
パフィとウベルの超激マズ料理対決が終わって、倒れた者達はちゃんとした施設のあるトランザ・クトゥンに運ばれていた。レジスタンスも一緒になってシーカー達を運ぶのを手伝い、その事を疑問に思ったシーカーが「いいのか?」と聞くと、レジスタンスはため息をつきながら「なんかもういいや」と答えていたという。
ウベルの暴走とパフィの料理を見て、どっちもどっちだなと悟ったらしい。というか料理の能力ってなんだよ、普通に食べさせてもらう分には良い事づくめじゃん……と、パフィが抱えている2つの大きなお肉の塊の場所を見ながら、自分達の考えを改め始めていた。
治療に関しても、超マズいだけの健康に良い物を食べたせいで気を失っているだけなので、時々水でも飲ませながら休ませておけば大丈夫と判断された。
そうしてのんびりと経過を見ていると、ブロント・エンドからネフテリア達がやってきた。アリエッタは当然、気絶した大切な妹分の元へ駆けつける。一緒にいたドルナ・ケインは、同じく気絶したシーカーの男に添い寝をしてしまったが。
「えっと、何してんの?」
「ほら、俺様もこんな風に女になっただろう? だからコイツも喜ぶかと」
「風穴の空いた股間みせながら、そーゆー事言うのやめてくんない?」
ドルナとしての透明部分は、服ごと穴が開いたようになっており、場合によっては丸出しよりもいかがわしい。しかも実体が無いので、現在その辺りをどうするか、本物のケインと相談中。こんなのをヨークスフィルンに返して、本当に大丈夫かと悩むネフテリアであった。
そして1日が過ぎ、2重の悪夢から目覚めたピアーニャは、アリエッタから頑張った事を褒められ、世話されていた。本人からしてみれば、悪夢がまだ延長しているようなものである。
「おーい、テリアー」
「なーにー?」
「きょうは、ブロント・エンドのちかくにホウチしてる、パフィのゴーレム?をテッキョしにいくぞ」
「あーあれね。はーい」
「はぁ、はやくかえりたい」
ミューゼのウッドゴーレムは元々魔法で出した物なので、すでに消してある。しかしパフィのツインテイラーは作りっぱなしの料理なので、食べるなどの処分をするまで消える事は無いのだ。
本日はそれを処分し、あとはゆっくり過ごしたいと夢見るピアーニャだった。
ここは亜空間。それぞれの世界の外にある場所。神々はここから自分達の作った世界を見守っている。
そんな空間で、1体の神が焦ってどこかに話しかけていた。
「やめなさい! そんなことをしたら、せっかく作ったその世界も……」
「………………! ………………………!!」
「ええ、ええ、気持ちは分かります! ですが、やりすぎです!」
「………!! ………………! ……~!!」
(ダメですね、完全に錯乱している……)
焦っているのはイディアゼッター。誰かを説得しようとしているが、状況は芳しくない様子。
「……………………!!」
「いいえ全力で邪魔させていただきますよ。やってしまっては貴方が確実に後悔します。そして当分の間は力の行使を──」
「…………!」
「あっこら! 仕方ない、すぐに封印します!」
「………………」
「ふぅ、しばらく大人しくしていてくださいね」
よくない結果になってしまったのか、痛恨の表情で虚空を見つめている。
相手との会話も終わり、少しうつむいて、この後やるべき事を整理。出した結論は……
「あんな大問題が2つもやってきては、錯乱するのも無理はありませんが……。はぁ、仕方ありません。手伝いにいきますか……」
そう言って、イディアゼッターは亜空間から姿を消した。
「あーあ……もうこんなにむらがって……」
ピアーニャは目の前の光景に、ため息をついた。
所変わってブロント・エンドの近く。パフィ達が全員目覚め、ケインを含むサイロバクラム人以外の全員と、暇しているソルジャーギアが集まり、ツインテイラーの処理へとやってきた。
しかしそこで見たのは、小麦で出来たツインテイラーを貪る野生動物達の群れ。近くから遠くから、様々な動物達がその巨体に群がり、ムシャムシャと齧りついている。
「まぁパフィの作る料理は美味しいですから」
「そ、そうだね……」
いつも食べてるミューゼの評価は高いが、その高い評価をそのままマイナスに逆転させた料理を食べたばっかりなピアーニャとクォンが、ものすごーく微妙な顔で返答に困っていた。
「このまま放っておいたらどうなるか分からないわね」
「そうですね。もし縄張りに帰らなかったら、ブロントにも影響でそうです」
地域の情勢を心配するネフテリアに同意したのは、途中で泣きながら家に帰ってこれまで姿を見せなかったラクスだった。
「えっと、なんでここにいるの? ツインテール派はあっちよ?」
「いえ、王女様の下で働きたいんです。信用できないなら雑用でもなんでもします! なんなら足置きとして使っていただいても!」
「近い近い」
ツインテール派から寝返ったばかりなので、やはり信用するに値しないところなのだが、雑用でいいというならエルトフェリアで働いてもらうのもありと、ネフテリアは考え直していた。ついでにサイロバクラム人がどういう事を出来るか知る為、観察対象として近くに置いておきたかったというのもある。若いクォンだけでは情報源としては心もとないのだ。
「で、結局どうしたらいいのかしら? 放っておいたらますます動物達が寄ってきますよ?」
エンディアは素直にツインテイラーを作ったパフィに聞いた。何故かパフィの胸をチラチラ見ては、自分の大きさと見比べて、ちょっと悔しそうにしている。
しかしパフィはそんな事を気にしない。素直に提案を述べた。
「食べきれなかったら、燃やして灰にしたらいいのよ。肥料に使えるのよ」
「それだ」
火をつければ、動物達も離れて、ツインテイラーも処分出来て、ついでに良い野菜が採れるようになって、一気に解決である。
パフィから出てきた提案は採用され、協力者全員に通達された。
「それでは周囲に散開し、動物達を見張れ! 落ち着くまで警戒態勢だ!」
スタークがソルジャーギア達に指令を出した。
これからツインテイラーを盛大に燃やす。その時必ず動物達がパニックになるので、自分たちに襲い掛かってきたりコロニーの方に走っていかないよう防衛任務に当たるのだ。
「それじゃあミューゼ、お願い」
「みゅーぜ、がんばれー!」
「まっかせなさい!」
アリエッタの応援もあって、やる気が一気に振り切れたミューゼが、まず魔法を発動する。
「【縛蔦網】!」
沢山の蔦が、ゆっくりとツインテイラーを覆っていく。蔦を巻き付ける事で、さらに燃え広がりやすくするという作戦である。
しかも、蔦にびっくりした動物達が警戒し、その場から離れていく。
「おぉぉすげぇ……」
「魔法だ、本物だ!」
サイロバクラム人達は大興奮。それを見ているシーカー達はニヤニヤ。
蔦が全体に巻き付いた後は、ネフテリアの出番。高火力の火魔法で火をつけたら、あとは動物達の暴走に気を付けるだけである。
「それじゃ、消し炭にするわよー」
手を掲げると、火の玉が現れる。それをさらに練り上げ、巨大な火球に変化させた。
『うおおおお!!』
サイロバクラム人の興奮は最高潮。なんなら動物より先に暴走しかけているようにも見える。
と、その時だった。
「ドルティパスの群れだ!」
誰かが叫んだ。
声のした方を見ると、確かに沢山の鳥が物凄いスピードで森の中から走ってくる。
『ギョオオオオオ!!』
バキバキバキッ
無数のドルティパス達はクチバシを回転させ、木をなぎ倒しながら長い足でドタドタと迫ってきている。
「いかんな。全員後退! 整列! 射撃用意!」
スタークが大声で命令すると、ソルジャーギア達はドルティパスがくる方向から距離を取り、横一列に並んだ。そしてアーマメントを構えた。
それを感心しながら眺めるネフテリア達とシーカー達。
「城の兵士も負けてないわよ。でも帰ったら隊長に聞かせてあげよっと」
「それもう、ブカたちがカワイソウなメにあうの、きまったようなモノだろ」
「あのアーマメントは? エーテルガンより強いの?」
「あれはですね──」
ソルジャーギアが並んだと言っても、クォンとラクスはネフテリア達の所に残っている。前に出ない代わりに解説とサポートを言い渡されているのだ。
ドルティパス達がソルジャーギア達の射程圏内に入った時、スタークの号令が響き渡る。
「撃てー!」
「撃ちますっ【爆花散】!」
号令で最初に撃ったのは、ネフテリアだった。掌に集めた火が、火山から噴火したかのように射出。無数の赤い弧を描き、ドルティパス達に降り注ぐ。
辺りにはドルティパスの悲鳴と、地面に着弾した時の爆炎や砂煙が巻き上がり、ソルジャーギア達を凍り付かせた。
「え?」
スタークが目を丸くして、ネフテリアの方にギギギッと顔を向ける。
「てへ☆ ばっちり号令通り!」
可愛いポーズをとって誤魔化す王女様。いきなりのアクシデントで、作った火のやり場に困ったから面白半分で撃っちゃった☆ などと正直に言う事はしないのであった。