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………
「唯花ちゃんと会えましたか?」
「唯花さんの夢も、あなたの|仕業《しわざ》なんですか」
「…仕業って日本語嫌い。悪役みたいで」
「では僕らが昨日、実際に巡り会ったのはどうしてですか」
「うーーん。なんだろう。
運命とか!」
真っ当な答えは期待するだけ無駄だ。
「でもある意味運命ではあるんだよね」
「どんな意味か小一時間問い詰めたいですね」
「一時間じゃないのは優燈くんの恩赦かな」
「唯花さんはあなたによく似ていました。
彼女はあなた自身じゃないんですか」
「うーーん、どうなんだろう。
私もまだ確証得てないんだよねぇ」
より一層イミフが増した。
確証も何も、全貌を理解しているのは夢中の彼女だけだ。
そこで僕は質問してみる。
「あなたの名前は何ですか」
「私の名前?」
他に誰がいる。
というかこの流れは、どこかで一度経験済みだ。
「いつか分かるよ」
「いつっていつでs…」
「いつかはいつか。
ただ一つ言えることは、
優燈くんが私と夢でしか会えないように、
私も君たちとは、夢の中でしか会えない」
「でも唯花さんの夢では、誰の姿も目にしてないそうですよ。
あなたの姿も」
「…人生そんなこともありますよ。
…時間だから行くね。
唯花ちゃんを救ってあげてね」
………
…人生。
…あの人にも人生があるのだろうか。
4度目の夢ともなると、大体会話らしくなっていた。
僕の明晰夢の習得は進んでいるようだった。
名前は聞き出せなかったが…。
今更だが、僕は夢の白髪少女も金咲唯花だと確信している。
だってあまりにも現実の彼女と共通点が多すぎるから。
奇跡や偶然、運命では施しようのない事象だった。
でも…。あり得ない。
僕の学校生活に、突如として花が添えられた。
どうやら昨日、あの一部始終を目撃していた生徒がいたらしい。
…改めて彼女は現実の存在なんだ。
他人にも彼女が見えている。
夢と現実の狭間に吸い込まれた人間が、僕だけではなかったのか、
はたまたそれらは杞憂で、ここは現実そのものでしかないのか。
一応カッコをつけるべく、男共にはナンパだと言い放っておいた。
夢が云々語っている方が、僕の人間的価値に悪影響を及ぼすと思ったからだ。
案外その漢気を認める声は多く、僕の存在感は増幅していった。
金咲さんに連絡すると、後日また出会うことになった。
文面的にあっちも何か言いたげだった。
日を改めて金咲さんと対面した。
この小洒落たカフェは、到底僕一人では御呼ばれでないオーラが、あの観葉植物からもプンプンしている。
流石に華の女子高生といった所か。
まずは僕が話を切り出す。
昨日の夢を赤裸々に語った。
すると金咲さんも、
「連日続くと最早悪夢ね。
私は一昨日も昨晩も、目の前の人を想え、と言われたわ」
「家族、ということですか?」
「シングルマザーの母は海外派遣で国内にいないし、兄弟もいないから違いそうね」
「…そうですか」
「つまりその目の前の人、に該当するのは、
優燈くん程度なの」
「……い、いやいやいや、他に候補なんてわんさかいるでしょう」
「いるのに私がどうしてこう言うの?」
「…でもじゃあどうして」
「単に女子高ってのと他人に興味がないから」
「じゃあ僕には興味があるっていうんですか」
「そりゃそうよ?
あんだけ夢で|諭《さと》されてしまったら、ほんの少しくらいは運命の人かもとか思うわよ」
そりゃそうなものなのか?
あとほんの少しは余計です金咲さん。
そんなことを考える僕を|他所《よそ》に金咲さんは、突拍子もないことを言い始めた。
「…なんで、ちょっと優燈くんに惚れてみようと思うの。
もちろん無理になったら無理だって言うけど」
言われた暁には、僕は多分死ぬと思う。
彼女は夢で僕を救ってくれた命の美人だから、突き放されたらきっと耐えられない。
でも夢の彼女は金咲さんを救えって言った。
それに縋るしかない。僕は縋ると決めた。
「不束者ですが」
「それ結婚だね。
多分2,3個すっ飛ばしてると思うよ」
「大丈夫です気が動転したんです」
「優燈くんが面白くてよかった。
それでこれからは私は唯花って呼んでよ。
私も優燈って呼ぶから」
僕史上初の女友達(先輩)を呼び捨てにする。
うん。
|流石《さすが》に無理だ、なんと言うか、身分的に…。
「まずは唯花さんでいいですか?」
「それだと冷めちゃうなぁ。私。
さっき私が無理なら無理と言うって時に、優燈は顔面蒼白してたけど、いいのかな?」
「…からかっているんですか」
「からかっているんだよ」
「唯、、、、、花」
「はーいよくできました、その調子その調子」
…正直な所も似ているんだ。
僕は彼女に惚れかけていた。