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#怪異
イキリ火の玉
946
ミニバンが広場に停まり五人の男女が降りてきた。ザワザワと騒がしくなった村人の間を趣味の悪い小豆色のスーツ着た太ったハゲ親父が真っ赤なパンツスーツ姿の美人を連れて歩いてきた。親分とその愛人のミサだ。
三人のチンピラもあとに続く。安田とちぃこは車に残っているようだ。
「オヤジさん……」
梶はすでに表情を消していた。
「おう、梶、テメエ、いったいどうなってんだ?」
親分は怒りの籠もった声で梶を睨みつけている。さっきまで放心していたのがウソのようだ。
「これはこれは、親分さんかのう」
「なんだ? じじい」
「オヤジさん」
「ワシはこの村の村長みたいなもんじゃ」
梶の言葉を遮って奥原はニコニコ顔で親分に話しかけた。
「どうぞどうぞ、こちらへ。ほら、お前ら、親分さんを奥へ案内しなさい」
奥原の態度に気をよくしたのか親分は怒り顔が収まり案内されるまま奥原が座っていた場所にミサと並んで座った。
「なにもない村じゃもんですみませんのう。ほれ、親分さんにお茶を出すんじゃ。一番いい湯飲みでな」
奥原の態度は今までと一変していた。まるで親分に媚びを売っているようだ。やはりヤクザの親分相手だとこうも変わるのかと努は何となく残念な気持ちになった。
「子分さんは、これで全員ですか? よかったらみなさんにお茶と食事を出しますが」
「もう一人と女が車に残っているが茶は俺とこいつだけでいい」
親分は親指でミサを指した。
「ほうほう、そうですか」
奥原はニコニコしている。だがその目の奥は笑っていない。それに気づいたとき努は奥原の態度が変わった理由がわかった。
梶が隠そうとした情報だ。今の会話だけでこちらの人数と性別を知られてしまった。努は梶を見たが表情にはなにも出ていなかった。
「しかしヤクザさんというと鉄砲とかいつも持ち歩いとるんですかの?」
「いつ警察に調べられるかも知れねーから精々刃物くらいしか持ち歩かんよ」
「ドラマとは違うんですのう」
「そりゃあそうだ、はっはっはー」
有名人にでもなったつもりなのか親分は気分良さそうに笑い声をあげた。武装の情報を渡した事に気づかずに。
「しかし親分さん、いったいどこに行こうとしていたんですかのう?」
まずい。努は思った。さすがに自分とちぃこを殺しいく途中とは言わないと思うけど『組の金を盗んだこのガキを懲らしめに』とでも言われると、さっき嘘をついたことがばれる。
努は左手の指先をチラリと見る。昨夜の爪先の拷問を思い出してズキリと痛く感じた。
今はまだヤクザも村人も味方じゃない。これ以上、親分に余計なことを言われるのはまずいと思った。
「ああっ! あの、すみません!」
努が突然大きな声を出したので、親分も村人も全員が視線が集まる。
「なんじゃ?」
話を邪魔されたからか努には愛想笑いをする必要がないからか、奥原の笑顔は消えていた。
「えっと……」
助けを求めるように梶を見たが変わらぬ表情で黙っていて目すら合わせてくれない。答えは自分で見つけるしかない。
――考えろ。トイレに行きたいってのは……ダメだ、勝手に行けと言われて親分との会話が続けられる。
「なんだよガキ」
怒りを含んだ親分の声。すぐにキレる性格らしい。低い怒声に負けないように努はギュッと拳を握ると指先がズキンと痛んだ。その痛みで思い出して親分の隣、ミサを見た。一晩明けたのにバッチリ化粧がされているその女は親分の愛人で美人のサディストだ。
「この先の建物って拷問部屋ですよね?」
静寂……そして爛々と輝くミサの瞳。ミサなら拷問という言葉に興味を持つと思った。そして親分はミサには弱い。
「ねえ、なにそれ? 本当?」
ミサが嬉しそうに訊いてきた。
「このすぐ先ですよ。なんか、いろんな器具とかありました。ねえ、梶さん」
「……ああ」
梶の表情は読めなかったが怒ってはいないようだ。
「ねぇチャーさん、アタシ見てみたいなぁ」
「そうかぁ? おい、ジーさん、それを見せてくれ」
ミサに甘い親分だが本人も興味があるのかすでに腰を浮かせていた。
「いや、あれは……」
村長は言い訳を考えているようだったが、さっき話したときに拷問する場所だと認めている。すでに努が話に割り込んだ理由はうやむやになって拷問屋敷に行く流れになっていた。
たぶん、あとは梶が親分と打ち合わせをしてくれる。努はそう思いホッと胸をなで下ろした。
コメント
1件
第11話読んだよ〜!😭✨ 努くんの機転、まじでヒヤヒヤした…!親分に余計なこと言われるの防ぐために拷問部屋の話出すの、めっちゃ頭いいし咄嗟の判断すぎて痺れた🥺💕 しかもミサの「見てみたい」で流れ変わるの、キャラの関係性活かした伏線回収っぽくてエモかった!梶さんの表情読めないのも気になる〜!次どうなるの?待ちきれないよ🔥