テラーノベル
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帰り道。
さっきまでより静か。
でもそれは落ち着いたんじゃなくて——
“溜まってる”。
「……」
「……」
会話はない。
でも、お互い同じこと考えてるのは分かる。
(早く帰りたい)
それだけ。
鍵を開ける音が、やけに大きく響く。
ガチャ。
ドアが開いた瞬間——
「っ……」
腕を引かれる。
「おい——」
言い終わる前に、
中に引き込まれて、ドアが閉まる。
バタン。
外の音が完全に遮断される。
そのまま——
壁に押し付けられる。
「……っ」
距離、ゼロ。
さっき路地裏で止まった“続き”が、
そのまま再開されるみたいに。
「帰ってから、だろ」
低い声。
でも抑えてた分、少し荒い。
「……帰っただろ」
エリオットも引かない。
むしろ、一歩も逃げない。
視線がぶつかる。
もう、止める理由がない。
次の瞬間——
一気に距離が消える。
さっきまでの焦らしも、余裕もない。
抑えてた分が、そのままぶつかる。
「……っ、ん……」
エリオットの手が、
反射的にチャンスの服を掴む。
押し返す力じゃない。
引き寄せる力。
「ほら」
一瞬だけ離れて、
「ちゃんと来いって言ったろ」
さっきと同じ言葉。
でも意味が違う。
今度は——完全に引き込む側。
「……来てる」
息が少し乱れたまま、返す。
その声に、迷いはない。
チャンスはそれを聞いて、
少しだけ目を細める。
「なら——いい」
また引き寄せる。
今度はエリオットの方が、
先に動く。
「……っ」
ぶつかるんじゃない。
ちゃんと“合わせる”。
でも、熱はそのまま。
抑えない。
逃がさない。
さっきまでの距離も、
路地裏で止まった時間も、
全部まとめて埋めるみたいに。
「……は……」
離れた時、エリオットの呼吸が崩れてる。
でも目は逸らさない。
むしろ、少しだけ睨む。
「……満足かよ」
強がり。
でも全然強くない。
チャンスはそれを見て、
小さく笑う。
「まだ」
「……は?」
「こんなんで足りるかよ」
即答。
エリオットの眉がぴくっと動く。
「……欲張り」
「お前が言うな」
軽く言い返しながら、
そのまま距離を詰める。
今度は、さっきより少しだけゆっくり。
でも——止まらない。
エリオットの手も、
もう抵抗しない。
むしろ、
「……来いよ」
小さく、低く。
自分から言う。
チャンスは一瞬だけ止まって、
それから、少しだけ笑う。
「最初からそう言え」
そのまま——
今度はさっきよりも深く、
でもちゃんと“受け取る”みたいに。
エリオットの力が完全に抜ける。
壁に押し付けられたまま、
逃げる気もない。
ただ、近い。
それだけでいいみたいに。
「……っ、は……」
息が混ざる。
距離も、温度も、
全部曖昧になる。
さっきまでの拗れも、
意地も、
全部どうでもよくなる。
チャンスが少しだけ離れて、
「これでいいか?」
低く聞く。
エリオットは一瞬だけ黙って、
それから——
服を掴んだまま、
「……まだ」
って言う。
さっきと同じ言葉。
でも今度は、完全に意味が違う。
チャンスはそれを聞いて、
「……だろうな」
って小さく笑う。
そしてまた、
距離をなくした。
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