テラーノベル
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太宰の指が中也の唇をなぞる
震えるその唇が拒絶のためではなく、ただ次来るものを待つように僅かに開かれたのを太宰は見逃さなかった
「殺せるなら殺してごらんよ」
挑発的な言葉とともに太宰が距離をゼロにする
重なり合った唇から流れ込んできたのは暴力的なまでの渇望だった
中也の喉から押し殺したような小さな甘い悲鳴が漏れる
逃げ場のない鉄の箱の中で互いの舌が絡み合い肺の中の酸素が奪われていく
中也の手はいつの間にか太宰のシャツを固く握りしめ、太宰の腕は中也の細い腰を骨が軋むほど強く引き寄せていた
「…んっ、……は……っ、だざ…」
一度離れた唇の間で銀色の糸が微かな光を反射して引かれる
中也の瞳は完全に蕩け、視線は定まらない
荒い呼吸の度に剥き出しの鎖骨が大きく上下する
「君のこんな顔…誰にも見せたくないな」
太宰の声はもういつもの彼のものではなかった
ドロリとした執着を隠そうともせず彼は中也の首筋に深く顔を埋め、吸い付くようにその白い肌に「印」を刻んでく
「………ぁっ、…ま…て…誰か来る…ッ」
外で足音が近づく
扉のすぐ向こうに自分たちの命を狙う敵がいる
その極限の緊張感が逆に二人の感覚を異常なまでに鋭敏にさせていた
見つかれば死
だがその恐怖すらも今の二人にとってはこの密室の熱を煽るスパイスに過ぎない
太宰の手が中也の服の裾から熱い肌へと直接滑り込む
「……っ、ふ………あ………」
中也が声を漏らすまいと太宰の肩に噛みついた瞬間
外でガチャリとロッカーの取っ手が動いた
「おい、こっちは空だ」
敵の無機質な声
扉一枚を隔てた死の気配の中で二人は互いの存在だけを狂おしいほどの熱量で確かめ合っていた
敵が去り再び訪れた沈黙
しかしロッカーの中の熱は下がるどころかさらに濃密に取り返しのつかない深みへと堕ちていく
「続きをしようか中也」
太宰の瞳が暗闇の中で獲物を追い詰めた愉悦に細められた
コメント
2件
めっちゃロマンチックに書かれててかっこいい書き方ですね!