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外の足音が遠ざかるのと入れ替わるようにロッカーの内の酸素は二人分の熱で限界まで薄れていった
「…っ、手前正気かよ…」
中也の声はもはや震えていた
太宰の手が腰のホルスターを避け、皮膚を焼くような熱さで内腿へと滑り落ちる
理性が「ここは戦場だ」と警鐘を鳴らす
だが肌に触れる太宰の指先がその警鐘を甘い痺れで塗り潰していく
「正気なんて君と出会った日に捨てたよ」
太宰の言葉は呪いのように中也の耳を塞いだ
逃げ場のない鉄の箱
背中には硬く冷たい壁
前方には自分を食らいつくそうとする最愛の宿敵
中也は観念したように太宰の首に回した腕に力を込めた
「…あぁもう勝手にしろ」
「その代わり途中で止めたらぶっ殺すからな」
その言葉が引き金だった
狭い空間で衣類が重なり合う音が大きく響く
太宰の手が中也のベルトを解き、剥き出しになった肌が冷えたロッカーの壁に触れて中也の体が小さく跳ねた
それを逃さぬように太宰が自身の体躯で中也を壁へと釘付けにする
「…んっ、あ………だざっ…!」
重なり合う体温
結合部の熱が脳を麻痺させる程の快楽となって脊髄を駆け上がる
中也は声を漏らすまいと太宰の肩に深く歯を立てた
口内に広がる鉄の味と太宰の低い喘ぎ
痛みが快楽を加速させ二人は暗闇の中で互いの存在を深く激しく貪り合った
震えるロッカー
外の世界では死と隣り合わせの戦場が続いている
けれどこの一畳にも満たない檻の中だけは二人だけの誰にも犯されない暴力的な聖域となっていた
「愛しているよ、中也」
果てる直前、太宰が耳元で紡いだその言葉が嘘か真実かさえ中也にはわからなかった
ただ爆発するような熱の中で中也は確かに太宰という名の深い淵へと自分から実を投げ出していた