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大正
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資料を翻訳してまず分かったのは、彼らが住んでいた世界とその環境についてだ。
彼らの住む世界にも昼夜があり、季節が存在していた。
資料には日中の日差しや、夜に見える星を思わせる記述があったのだ。
もちろんファンタジー的な要因かもしれないが、地球と同じように自転・公転している惑星だったのかもしれない。
当たり前に思えるかもしれないが、ダンジョンとは異世界あるいは異次元なのだ。揃っていることに異質さを感じる。
また、予想通りこの世界にはいわゆる「モンスター」「魔物」が存在し、人々の脅威になっていたようだ。
武器の重要性は地球以上。副葬品に武器が多いのも納得だ。死後の世界にも魔物がいると考えたのかもしれない。
そして、このダンジョン、墓地に埋葬された人々について。
翻訳された文章から分かったのは、
彼らが、とある「コミュニティー」を築いていたこと。
そして、それは四つの「氏族」から構成されていた。
ということだ。
特徴的なのは、この「族」が武器で区別されていたということ。
武器の種類は『剣』『槍』『弓』『魔法』。(どうやら『魔法』は武器扱いのようだ。)
これらはスケルトンダンジョンに登場した主な武器であり、五層目に登場したスケルトンの種類まんまだ。
そして、これらの武器に関する記述は、どういうわけか他の部分よりも詳細に【翻訳】された。
翻訳を進めると、彼らの使っていた武器とその変遷について知ることが出来た。
最も重要なのは二つ
「魔法の発達・繁栄」と「弓の衰退」
だ。
**********
初期の魔法に関する記述には、攻撃系の魔法やそれを表すような表現が無いことが分かった。
その代わりに、魔法は補助的な運用がされていたようだ。
二層目で見つけた羊皮紙には、「魔法」「傷」「治す」などの回復魔法を思わせる記述があった。
一方で、三層目以降の紙片からは攻撃系の魔法に関する記述が増える。
特に「魔法」の後に「撃つ」という動詞が登場したのは三層目からだ。
これは、魔法使いスケルトンが三層目から登場したこととも少なくない関係があるだろう。
逆に、弓に関する記述は階層が進むごとに減っていく。
上層部の資料には「弓」に関する記述もそれなりに見られた。
しかし、階層が進むにつれて急激に「弓に関する記述」や「弓」という語句自体が減っていったのだ。
どうやら、時代を経るごとに発展していく攻撃魔法に遠距離攻撃のポジションを奪われてしまったようだ。
三・四層目に出現しなかった弓使いスケルトン。
その期間、この地下墓地(ダンジョン)には弓使い達は埋葬されていなかったのかもしれない。
三層目以降、弓使いたちが存在しなかったのか、存在したにも関わらず墓地に埋葬されなかったのか...
副葬品に弓はおろか矢すらなかったことからも当時の状況が察せられる。
普通の武器の流行り廃りであれば何の問題でもない現象。
だが、彼らは氏族を武器によって区別していた。
ここが問題を生んだのだ。
具体的に言えば、弓使いが差別・迫害されていた疑惑が翻訳を進めていくうちに深まってきた。
内容から考えるに、氏族間の対立・迫害があったことは間違いないだろう。
残念なことに、ここに関する資料は内容がぐちゃぐちゃだったり、隠蔽・改竄しようとした痕跡がある。
だが翻訳された文中に度々、差別表現と思われる語句や、コミュニティ内で冷遇されていた事実が見つかった。
******
例えば「杖なし」という言葉。四層目あたりの資料から見つかった言い方だ。複数の資料から見つかったので日常的に使用されていた語句だと推測される。
一見、「杖を持つ魔法使い」と「それ以外」を区別する言葉に見えるのだが、どうもそう単純ではないようなのだ。
四つの氏族のうち「魔法使い」は発展し、「弓使い」は衰退した。
では「剣・槍使い」はどうだったのか。
彼らの氏族は時代が進んでも、魔法が発達しても衰退することはなかった。魔物をその身で押しとどめる「近接職」が必要だったからだ。
どうやら、彼らの使う「長剣」「長槍」は「魔法の杖」と同様の「杖」としての扱いを受けたようだ。
つまり「杖なし」という語句は、彼らのような長柄の武器を持たない、弓矢使い、加えて短剣・短槍使い達を差別した用語だったのだ。
確かにそれまでの層と比べて、短剣も短槍も副葬品として見つかることは少なかった気がする。
・・・五層目で錆びた短剣をドロップした剣士スケルトン。彼は何を思ってこの武器を持っていたのだろうか。
また、これらの武器(短剣・短槍・弓矢)はどうやら、暗殺などに用いられることが多く、それも迫害につながっていたようだ。
魔物という生命力の高い生き物には効果の薄いこれらの武器でも、人に対してなら十分な脅威だ。
現に、「隠された品」関係からは、暗器のような一見使い方が分からない短剣や遠距離物理攻撃系の武器が見つかった。
これらのことから、「弓使い」たちが氏族ごとコミュニティの後ろ暗い部分に追いやられていたことが分かった。
暗部を担当したから迫害されたのか、迫害によって暗部に追いやられたのか。
また、コミュニティ内で冷遇されていたことも分かる。
例えば初期の資料では
「コミュニティの代表を決定するには、剣・槍・弓・魔法、それぞれの氏族から承認を得る必要がある」という記述が見つかった。
だが、時代が進んだ後の資料では
「コミュニティの代表の決定は、剣・槍・魔の合議で」という文言に置き換わっていた。
コミュニティを築いた四つの氏族の内の一つにもかかわらず、代表者の決定からハブられてしまったわけだ。
このように、様々な資料から「弓」氏族の差別や没落が伝わってくる。
だからこそ気になるのは、なぜ五層目に再び「弓使いスケルトン」が現れたのかだ。
コメント
1件
このエピソード、めっちゃ面白かったです!特に「杖なし」という差別用語の構造——魔法の杖と長剣・長槍を同列の「杖」扱いにして、弓や短剣を使う者を排除したロジックが生々しいですね。武器の変遷から氏族間の力関係や差別の実態が透けて見えるのが、まさに考古学的な面白さ。そして「なぜ五層目で再び弓使いが現れたのか」という問いで締める伏線の置き方が絶妙です。続きが気になる…!