※BL・R18無・ふかあべ・学パロ
となっております!
地雷注意です⚠️
授業始めのチャイムが鳴ると同時に、俺はスマホを取り出してゲームアプリを開く。誰もいない屋上。グラウンドから聞こえる体操の声。俺は毎日、学校に来ても授業を受けることなく屋上でゲームをしている。
でもこんなことをしていると、毎時間必ずあいつがやって来る。そして、それをどこか楽しみにしている自分がいることに最近気づいた。
ガコン、と立て付けの悪い屋上のドアが開き、顔を覗かせたのは……
💚「あーもう、またゲームやってるよ……」
クラスの学級委員長、あべちゃん。彼と俺は中学の時からの知り合い。
💜「なぁに。また来たの?あべちゃん」
💚「『なぁに』じゃないよ全く……授業くらい出なって!」
💜「別に授業くらい出なくたって内容分かるし〜」
💚「テストの点数は悪くなくても、授業日数とかあるでしょ?」
💜「あー大丈夫大丈夫。そこはちゃ〜んと計算してるから」
ゲームする手を一切止めず、俺は得意げにそう言った。そういうことじゃないんだよ……と隣でため息をつくあべちゃん。
💜「ため息つくくらいなら、俺のことなんて放っとけばいいのに。なんでそんなに俺に構うの?」
💚「放っとける訳ないじゃん!……大切なクラスメイトなのに」
💜「……ふーん?」
大切なクラスメイトねぇ……。そう言われても、授業受ける理由にはなんないし。
ていうか、何その言い方。
「大切な」って、どういう意味?
💜「……戻らなくていいの?授業進んでるでしょ」
💚「良くないよ。でも、ふっかが一緒に来るまで戻らない」
💜「えー何それ。俺の良心に訴える作戦?」
💚「ハハハッ、まあそんなとこかな」
スマホ画面から少し視線をずらすと、いたずらっぽい笑みを浮かべているあべちゃんと目が合ってしまった。その瞬間、顔を少し赤くして慌てて目をそらすあべちゃん。
……んん?なんだ、今の??
💜「……あぁ!負けちゃった」
考えているうちに、ゲームの敵が迫ってきていたようだ。画面に目を戻すと、いつの間にかゲームオーバーの文字が。
💚「ちょうど良かったじゃん。さ、授業戻ろ?」
💜「いや、全然良くないんだけど?」
期待に溢れたキラキラの笑顔で俺に手を差し伸べるあべちゃん。
……今回くらいは、行ってやるか。
💜「はあ……しょうがないな。分かったよ、授業行く」
ゲームの画面を閉じ、あべちゃんの手を取って立ち上がる。
💚「良かった!そう言ってくれると思ってたよ」
💜「はいはい……」
俺があべちゃんと教室に戻ると、先生もクラスメイトもみんな驚いた顔で俺を見た。まあ、滅多に授業に出てない奴が不意に戻ってきたら、誰かってびっくりするだろう。
「これは、どういう風の吹き回しだい?」
💜「……まあ、こんな日もありますよ」
先生の言葉を軽く受け流し、教科書とプリントを取り出して先生の話に耳を傾けた。
授業が終わると、俺はすぐに屋上へ戻った。授業の内容はもう既に知っていることばかりで、やっぱりつまらなかった。
ドアから離れたところに座り込んでゲーム画面を開いた瞬間、またしてもあいつがやってきた。
💚「ねぇ、戻るの早すぎなんですけど」
💜「別にいいじゃん。出る予定の無かった授業、ちゃんと出たよ?」
💚「友達と話すより、ゲーム?」
💜「……友達って言えるほどのやつ、あのクラスにいないし」
💚「そうなの?え、俺は?」
💜「お前は別だよ。中学から一緒だし」
俺の言葉に、明らかに動揺しているあべちゃん。
……だから何なの、その反応は。
💚「……ふ、ふーん?」
あべちゃんは目を泳がせながらそう言うと、俺の隣にしゃがんで話題を変えた。
💚「あ、ずっとそのゲームやってたんだ」
💜「なに、知ってるの?」
💚「俺も家で結構やってる。ランクはシルバーくらいだったかな?」
💜「シルバー?まあまあ上じゃん」
💚「でもふっかはゴールドじゃん」
💜「まあね?」
まさかあべちゃんも同じゲームをやっていたとは。なんだか嬉しい気持ちになる。
……あれ、でも。
💜「あれ、あべちゃんってゲームやらないんじゃなかったっけ。初めの頃の自己紹介で、ゲームは全くって言ってたよね?」
💚「あー、言ったね。でもなんだろ、ふっかがずっとゲームやってるから、俺も何かやってみよっかなって思ったんだよね。まさか一緒のとは思わなかったけど」
え、俺がきっかけ?何だよそれ、照れるじゃん。……いや、ちょっと待って、一緒のゲームって偶然じゃなくない?だって、
💜「この前さ、俺にめっちゃゲームのこと聞いてきたことあるじゃん?もしかしてその時から始めた?俺と同じの」
💚「……バレた?」
やっぱりふっかは勘が鋭いなー、とはにかむあべちゃん。一つ一つの行動がなんだかあざとくて、可愛くて、愛おしくて……
💜(あ、これたぶん……俺、あべちゃんのこと好きだな)
突然、そんな自覚が湧いてきた。考えてみれば、俺の頭からあべちゃんの笑顔が消えることはないし、屋上に構いに来てくれるのがすっごく嬉しい。それに、あべちゃんはよく俺のことを意識しているような行動を取ってる。
俺の思い込みかもしれないが、たぶん、あべちゃんも……
💚「ん、ふっか?どうした?」
そう言って、俺の顔を覗き込むあべちゃん。その顔を見て、俺は思う。
💜(……仕掛けてみるか)
今から俺がする質問に過剰な反応を見せれば、あべちゃんも同じようなことを考えているのだろう。こんなことを短時間で思いつくなんて、俺って天才かも。
💜「ね、あべちゃん」
💚「なに?」
💜「……付き合ってくれない?」
💚「……は?!な、何言ってんの?!」
顔を真っ赤にして慌てふためくあべちゃん。
あー、やっぱりあべちゃんもそうなんじゃん。
あべちゃんの気持ちを確認したところで、俺は少し話を逸らす。
💜「ランクマ。そろそろあるでしょ、ゲーム内のスペシャルランクマッチ。プラチナ目指してんだけど、なかなか難しくてさー」
俺が「付き合って」と言ったのはゲームのことだと理解(誤解)したあべちゃんは、徐々に落ち着きを取り戻してきた。
でも、俺の仕掛けはこれだけじゃない。
💚「あ、ランクマ?……全然いいよ!力になれるかわかんないけど、いつでも声掛けて。あ、ならフレンドになった方が効率良いよね?えっと、たしか……」
あべちゃんは、ポケットからスマホを取り出してゲーム画面を開く。夢中でフレンドコードを探している、その頬に。
……チュッ
💚「……えっ?!」
目を見開いて俺を見るあべちゃん。俺はそんなあべちゃんに向かって、言った。
💜「付き合ってほしいのは、ゲームだけじゃないんだけど」
その瞬間、あべちゃんの顔が一気に赤くなる。
授業開始のチャイムが鳴っていたけれど、今の俺たちにはもう、全く聞こえていなかった。