車を来賓用の駐車場に停めようとしたがイッバイだったので、仕方なく正門から少し離れた場所に駐車する事にした。
車を降りて正門へ向かったが、確かこの時間は鍵がかかっていたような…。
正門の前まで行くと、インターホンがあったのでとりあえず押してみた。
「どちら様ですか?」
「こんにちわ。私は3年5組の紺野遥香の父親です。いつも娘がお世話になっております」
「今日はどうされました?」
「娘が忘れ物をしたようで、持って来るように頼まれまして」
「そうですか。今職員の者を向かわせますので少々お待ち下さい」
ギィィィ…ガチャ…‥
職員の人を待っていると突然鍵が開くような音がした。
試しに扉を横にスライドしてみた。
すると、鍵がかかっていたはずの扉が開いてしまった。
たぶん、遥香がやったのだろう。
「お待たせしました」
「あの…すいません」
「何でしょう?」
「正門の扉開いてますけど…」
「本当ですか?」
「はい、確かに開いてます」
「そうですか…誰か閉め忘れたみたいですね」
「そうみたいです」
「それなら、どうぞお入りになって用事を済ませてきて下さい」
「はい、ありがとうございます」
それから僕は、学生の下駄箱を通って校内に入り2階にある遥香の教室まで急ぎ足で歩いた。
すると通りすがりの学生に何度も挨拶をされた。
随分と礼儀正しいので、さすが県下でもトップクラスの学校は違うなと感心させられた。
そして遥香の教室の前に着くと、後ろのドアから教室の中を覗いて遥香の姿を探した。
何か前にもこんな事があったような…‥
まるでデジャビュでも見ているかのような感覚だった。
違う…‥
これは葵と2人でW高校に来た時、葵から見せられた未来の映像と同じなんだ…。
そうか…あの映像は未来の僕が見たものを映像化したものだったんだ。
それから直ぐに遥香を見つけた。
【遥香っ】
僕は心の中で遥香を呼んでみた。
亜季ちゃんを呼んだ時のように…。
すると…友達とお喋りをしていた遥香は突然振り返って僕を見つけると、手を振って応えた。
「・・・・・」
やっぱり…‥
「パパ、来てくれたんだね。ありがとう。でも、何で仕事休みなのにYシャツにネクタイなの?」
「遥香の手前、格好悪い姿で学校に来る訳に行かないだろ」
「そっか…でもパパは格好いいから、普段着だって大丈夫だよ」
僕のもとに駆け寄って来た遥香はそう言うと、腕を組んで寄り添ってきた。
「はいこれっ」
僕は来た道を戻りながら、頼まれていた物を遥香に渡した。
「よかったぁ。これがないと助けられない所だったの…」
「誰かを助けに行くのか?」
「うん、とっても大切な人を…」
遥香の不安そうな表情と、妙に甘えてくる態度で何となく想像できた。
「危ない事をしようとしてるんじゃないだろうな?」
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