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dz「qn?大丈夫?」
mn「なんか変な音したけど、…。」
仲間たちの心配するような声が聞こえる。
あれ、落ちた音、聞こえてたのかな…。…気をつけないと。
「…大丈夫、物落としただけ。」
or「ほんま?ならええけど…。」
「…ほんま。」
orが俺を気遣ってくれた、?…なんか、うれしい。
でもそれを悟られるのは、なんだか癪に触るので、いつも通りのトーンで返す。
…というか、さっきはなんで落ちたんだろう。てっきり夜と朝だけだと思っていたのに…。
そう考えてはいるものの、何も結論は出てこない。別に痛みは一瞬なので耐えればいいや、ということになり、思考を別のところへ向けた。
「…ほら、bnさん、早く進めて?」
bn「え、でも…qnチャン、大丈夫なの?」
「大丈夫、平気です。」
悟られないよう、いつもの冗談を言うような声を出す。…でも、やっぱり優しいな。bnさんは。
卑怯者ってキャッチコピー、似合わないよ…。
bn「…ならいいけどさ。」
or「本当に何かあったらすぐ話すんやで?僕でよかったら話聞くし…。」
「…うん、ありがと。」
bn「…よし、じゃあやりますかぁ!えーっと、今日の企画はなんですか?dzさん。」
dz「いや分かってるんじゃないんかい!w」
mn「www」
少し重かった空気が、bnさんの冗談によって明るくなり、いつもの雰囲気を取り戻す。
俺はまだ痛む目を少し抑えながら、いつものように笑った。
3時間にもわたる撮影が終わった。なぜここまで伸びたかと言うと、bnさんとmnが途中でちょけだしてしまったからだ。
…いまだにみんなの前で大量のTNTを爆破させて全ロスを引き起こしたmnを許せない。
あれがなかったら絶対1時間で終わってたのに。
まぁ本人も謝っていたし、俺もそこまで気にしてはいない。
今は夕方。そろそろ夕食の買い出しに行かないといけない。昨日、全ての食材を使い果たしてしまったから。
エコバッグとスマホ、財布を持ち、スーパーに向かった。
プルルルルッ、プルルルルッ
俺のスマホが鳴っている。電話がかかってきたようだ。
「はい、もしもし。」
or「あ、qnー?今大丈夫?」
「うん、全然大丈夫。今夕食の買い出しに行こうと思って。」
電話の相手はorだった。何やらテンションの高いorは、いつもより少し早口だ。
or「あーなるほど。じゃあ今外なん?」
「そうそう。あと2分くらいでスーパー着くかなぁ。」
or「おっけー。家着いたらまた電話してもええ?」
「うん、いいよ。じゃあまた連絡するね。」
or「はーい、ありがとなー。」
「てかor、なんかいいことあったんでしょ。」
or「あ、バレちゃう〜?そうなんよ、…あ、これみんなには内緒な?」
「…ッ、うん。」
“内緒”とorがイタズラっぽく囁く。俺とorだけの秘密。この2文字に少し心臓とあの場所が痛む。
or「…あーでも、後でまた電話するし、その時に言うわぁ。」
「え、俺焦らさせるの?」
or「おん、w がんばりや〜。」
「ちぇー…。」
or「んふふ、また後でな!」
「うん、また後で。」
プツッ…
「…ふぅ。…あぶな、バレるとこだった。」
さっきのorの“内緒”の言葉でまた宝石がこぼれ落ちていたのだ。昨日見た時よりも、少し大きく、透明感が大きくなっている宝石。…重症化、してるのか?
だとしたら、今日の昼、orの声を聞いただけで。“好きだ”と思っただけで溢れた理由もつく。
昨日調べた内容を思い出す。
これはあまり関係ないかも、と考えていたが、今となってはとても重要なことのように感じる。
…それは、涙を流しすぎて痛みを感じなくなった時。『人体結晶化』という現象が始まるのだ。この現象が始まると、日に日に体が結晶化していく。そして最期まで結晶化が進むと、死に至る。というものだ。
俺は先ほど溢れた宝石を夕日にすかしながら歩く。やはり、綺麗だ。そう思わずにはいられない。だって、彼の瞳の色をしているのだから。
そんな浮かれたことを考えていた俺は、誰かにバレるかもしれないという危険性を全く考えていなかった。
dz「あれ、qn。なにしてるの?」
「っへ、?!」
俺の目の前に立って、優しい笑みを浮かべていたdz。…まずい。彼は元医大生だ。バレる、かもしれない。いつもよりポーカーフェイスを意識しながら返事をする。
「えっと、夕飯の買い出しに…、?」
dz「ほへぇ、さすがだね。ちなみに、何作る予定?」
「んー、まだ決定ではないですけど、親子丼とかですかね。今日ショートで見て、食べたくなったんですよ。」
dz「いいじゃん、親子丼。作ったら写真ちょうだい?」
「はい。」
どうやらバレてはいないようで、気づかれないよう、そっと息をつく。
dz「ところでさ、qn。」
「…?はい、」
dz「その青い宝石、どうしたの?まさか、誰かへのプレゼント?」
「…っ、!」
気づかれてしまった。まずい。やばい。どうしよう。
dzさんは勘が鋭い。変なことを言うと、もう絶対隠し通せなくなる。
…いやまて、隠す必要はあるのか?dzさんは元医大生。何か解決策や、予防、進行を止める方法を知っているかもしれない。
…話さない後悔より、話して後悔。
俺は意を決して、優しい微笑みを浮かべて、こちらの言葉を待っている彼に向かって口を開く。
「…涙石病って、知ってますか?」
dz「え、涙石病?それって確か、奇病の一種だったよね。前、SNSで流行ってたの、見たことある。」
「そうなんですね。俺、昨日?の夜から発症してるみたいで、…。何か知らないですか?」
dz「んー…。僕が大学生の時、あんまり奇病の勉強しなかったからなぁ…。…あ、でもわかるかも。」
「本当ですか、!?」
dz「うん。確かみるぴえが本を持ってたはず…。ちょっと借りれないか聞いてみるね。」
「…ありがとうございます。」
dz「じゃあ、また何かわかったら連絡するね。」
「はい。」
みるぴえ、とはdzさんの奥さんのあだ名だ。あだ名の正式名称、?は、『みるくぴえん』だそうだ。
dzさんでも知らないこの病気。治るのかな。まぁ、両思いになったら大丈夫らしいけど。
…あぁ、想いを伝えるのって苦しい。振られるかもしれない。嫌われるかもしれない。…もう、一緒に遊べないかもしれない。
そっか。怖いんだ、俺。
orに嫌われるのが。
話せなくなるのが。
遊べなくなるのが。
怖いのが、苦しいんだ。
あーあ、orも俺のこと好きだったらいいのに。
そうしたら、なんの問題もなく、この病気も治るのに。