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『wrwr短編集』
マリヲネット初の短編集
あてんしょーん⚠
・ご本人様には一切関係ありません
・読んでて地雷かな、と思ったらブラウザバック
おねがいしますー。
ゾムは、馴染みのない優しげな声で目が覚めた。
目に映ったのはロボロの面だった。
「飯、早くしないと先食うで?」
彼はいつもとは違う温かな声色で、ゾムに話しかけた。
これは夢だと確信した。現実とは懸け離れていたから。
部屋に誰か来ることなどなかった。
そして、自分で発言や行動ができなかった。動かされている感覚がして、気が狂いそうになる。
「昨日夜更かししとっただけやんw」
自分の声がこんなに明るかったことはないだろう。
軍基地に来て、陽気な声を出すことは無かった。
いや、もう無くなった、のほうが正しいのかもしれない。
(俺、こんなに明るい声出せたんや…)
自分の声に驚愕しつつも、これは夢だと思い直すとまた、気分が落ち込んでくる。
すっくと立ち上がり、部屋を見渡した。
机には、やけに笑顔のトントンのサインが書かれた書類の束が置かれていた。
ベッドから飛び起き、部屋を飛び出し、食堂へと駆けて行った。
自分の機敏な動きに驚いた。基地内でこんな生き生きとした行動を取ったことはあるだろうか?
あぁ、昔は…あったかもしれないな、
(こんなに明るく話すのなんていつぶりやろ…)
(トントンの飯…やっぱ嬉しいな、)
心の中ではもう泣いていた。笑って全力疾走することも、ロボロと隣で会話をすることも、現実では妄想の中でのお話に過ぎなかったのだから。
食堂から、騒がしい話し声が聞こえてくる。甲高い笑い声も、冗談交じりのからかいも。彼らの声が、沢山重なり合って耳に伝わる。
うるさいのに、心地よかった。妬ましかった。羨ましかった。今の自分にも、こんな仲間がいたら、彼奴等と正面から笑い合って話せたら、
どんなに楽なことだろう。
▷zm side
一度まばたきした後で、薄暗い天井が目に入った。
ゆっくりと体を起こし、寝ぼけ眼を強めに擦る。
あの楽園のような世界は何処に行ったのだろうか。
食堂に一歩、足を踏み入れただけのはずだったのに。彼らの顔を見ることもできずに、夢は終わってしまった。
部屋を見渡しても、カッターと血痕、血で汚れたカーテンと床に散乱した絆創膏などがぐちゃぐちゃに散らばっているだけだった。
当然ながら、ロボロの声はしない。それどころか、誰の声も、物音すら耳に入ってこない。壁に掛かったアナログ時計の針は、まだ午前5時を指している。
「あー、ぁ…」
あの明るい声はもう出てこなかった。あんな風に話すロボロを、もう一度見てみたかった。
ひょいと窓から飛び降りて、階下の食堂へと急ぐ。
夢の世界で見たように、廊下と階段を全力疾走して食堂に行けたら…どれだけ楽しいか。
もうそんな活力も生まれない。
怯えているのは、自分だけではない。
緋色の瞳の彼も、藍色のスーツの彼も、煙草が似合う彼も、皆が皆、恐れ続けている。
あの和やかな関係に戻りたい、そう誰もが思っているのに。
なぜか、一歩を踏み出せずにいる。
▷
「…はい、」
ぼそっと一言付け加えて、無言で座る彼らに朝食を配膳する。
トントンは無表情無言で、白米をよそっている。
俺は、この空気が嫌い。
険悪なこのムードが、喋ることすらできない真っ黒の重圧が、
本当に嫌いだ。
この重圧に勝てずに、何もできない自分が一番、…
▷tn side
総統が会話をしてくれなくなったのは、いつからだっただろうか?
総統がお茶会を開こうと誘ってくれなくなったのは?
無能と呼ばれる大スターが、書類を手伝ってほしいと相談してく来なくなったのは?
豊富な知識を持つ彼の淹れる紅茶が飲めなくなったのは?
というか…最近、総統はどこで何を、…?
『戦争大国』と呼ばれていた時代は、一体どこへ行ってしまったのだろうか?
一週間ごとに、別の国とじゃれ合い感覚で戦争を起こしていたのに。
それが、我が国の特徴の一つであり、誇れることだったのに。
誰のせいで、こんなことになってしまったのだろうか。
そんな答え、ずっと前から、
…前、から……?あれ?前って…いつ?何だったっけ…?
隣で箸をおく音が聞こえ、はっと我に返る。静まり返った食堂で、誰の笑顔も笑い声もなしに昼食が終わろうとしていた。
朝食もそうだった。
もう慣れてしまった。
もう笑顔を忘れてしまった。
もう寂しさも感じなくなってしまった。
(こんな自分が一番憎い)
そんなことを考えながら、食器を洗う。
食器用洗剤がリスカ跡に沁みる。この小さな痛みも、
もう何とも思えない。
自室に帰り、昨日の乱心で散らかした部屋を片付け始める。
昨日はなぜあんなに自傷行為をしていたのだろうか。
何があったのだろうか。…何も覚えていない。
ベッドの下の隙間に入り込んだ書類を取り出した時、何かが手に当たった。
引っ張り出したものは、ゲームコントローラー。
どのくらい使っていないのだろうか。
最後に使ったのはいつだったか。
何で、誰と遊んでいたんだろうか。
楽しかったっけ?
騒いだっけ?
笑っていたっけ?
最近の暗い雰囲気より前の記憶は、
全て霧に包まれたかのように朧げになっていた。
ボロボロの手で、ゲームコントローラーを棚に戻してあげた。
▷ut side
『大先生!!訓練場行こーや!』
せやな、もう一年もずっと、剣を握っていない。
動かないとダメやな。お前の言う通りやコネシマ。
『大先生ー喫煙所行かへん?書類終わって気分ええねん』
大賛成。俺は書類終わってへんけど。
何話そっか、最近の戦果でも語ろうやショッピ。
『だーいせんせっ!次の戦争で殺した人数競おうや!!』
相変わらず怖いこと言うな、お前は。
ええで、望むところや。結局負けるんやけどな。
いつかお前を超えてやるよゾム。
1年も経つというのに、鮮明に覚えている記憶の数々。
幻聴という悪夢となって襲い掛かる彼奴らの声。
あの明るい声を、もう一度聞かせてほしかった。
自分は行動を何も起こさない癖に、妄想や願望だけをつらつらと唱え続けていた。
真っ暗なスマホ画面に映る3:30という時間。
そして、クソほど嫌いな自分の顔。
気持ち悪いくらいにやつれていて、口角は下がり、隈は濃く深く刻み込まれていた。
「見たくもねぇっつーの、」
小声で小言を吐きだし、深く溜息をつく。
最近では眠らなくても幻聴が聞こえる。
寝ても悪夢、眠らなくても悪夢。
もう、何処が楽な場所なのか分からない。
自分は臆病者だから、死ぬなんて勇気はないし、自傷なんて痛いことはやりたくない。
幻聴を聞いて、そのたびに泣きじゃくって、現実に戻ってきて、また絶望感と何とも言えない喪失感に駆られる。その繰り返しだった。
飽き飽きだ。自分の臆病さが憎い。
もう、希望を持ちたくないのに、
『!%“&%!”#\(%'&\)/』
『;@\.&%#|{`+\;!!!』
『!“)(&=~`*<+`…、』
「るせぇ…ッ、」
小粒の涙が、自分の目から零れ落ちた。
『その沈黙を破って』前編