レイブンとの戦闘が一件で俺の生活を大きく変わった。
まぁ、変わったといくよりかは周りが寄り添ってきたと言うべきだが……。
「君の噂はきいたよ!よかったら今度うちに来ないか?歓迎しようーー」
「あの、婚約者はいるのかい?もしよかったら僕の妹をー」
「君の実力を見込んで良かったら将来我が家のお抱えのーー」
「君は将来有望だ!ぜひーー」
現在俺は貴族子息から絡まれている。
まぁ、初めの頃と比べればまだマシなのだろう。
でも流石に鬱陶しすぎる。
俺の周りに貴族が集まりすぎている原因で平民は寄り付かない。
俺は平民グループにいるクーインに視線を向けるも……話しかけるな?みたいな視線を返してくる。
そこで俺はクーインに見舞いに行った時のことを思い出す。
俺は心配で見舞いのために寮の部屋を訪れた。
しかし、クーインは気を遣って少しお高いお菓子買って行った時には何もなかったかのようにけろってしていた。
俺はその光景を見て人の心配を返せよマジでと思った。
念のため心配になって話を聞いたらただ面倒くさいだけだったとか……。
本当に俺の心配返せよ。
心配して損したじゃん。
俺がそう言う思いを込めて睨みつけているとクーインから「僕がいない授業はどうだった?」と授業で何があったのかと、無理やり会話の流れを変えようとしてきた。
俺はため息をつきながら今日のレイブンとの一件を話したら「え、そんな面しろ……大変なことがあったのか。僕の無理をしてでも参加すれば良かったよ」とか抜かしやがった。
それでこっちは命がけでやったんだぞと文句を言うと「つまり学園最強と言われているイゴール家の人と互角にやり合ったのか!あぁ、なんで僕はついてな……その場にいなかったんだ」とか本音が漏れているものの、その場にいなかったことへの後悔していた。
俺は「薄情者!」と言って退室しようとしたら、「大変だったね。ちょうど美味しいお菓子があるし、休んでいくと良いよ」
と言ってお菓子を手渡してきた。
こいつは親切で言っているのだろうか?
てかそれ俺のお菓子……。
突っ込むの面倒臭いため、その後は少し会話をし、持ってきたお菓子を全て食べてやった。
そのときクーインは残念そうな顔をしていたが、ざまぁみろ!と思った。
口には出さなかったが。
その後会話は続き、悩みは何かあるかと言う話題なった時、クーインはお金に困っていると相談された為、後日一緒にギルドの依頼を受ける約束をして、解散した。
そんな一幕があったが、クーインは元気にやっている……平民の友達と共に。
基本的に俺とクーインはクラスでは絡んでおらず、放課後か夕食のみ一緒にしている。
そのせいで俺はボッチとなり、変なやつらに絡まれてしまっている。
まぁ、クーインにはクーインの交友関係がある。
俺は文句を言わずに我慢しているが……。
それにしてもあきないのだろうか?
こんな考え事、回想に浸っている最中にも気にせずに話しかけてくる貴族子息連中。
流石にどうにかしなきゃいけない。
でも、どうしようもない。
だって、話をかけようにも何話せば良いかわからないし。
だが、そんな俺にも手を差し伸べてくる神様……否、女神がいた。
「皆さん……あまり多勢から話しかけられてアルトさんが困っていますよ」
俺が困っているのを察したのか、サリーが貴族子息連中を諌めてくれた。
あぁ、あなたは女神か……。
「アルトさん大丈夫ですか?」
「はい!」
俺の活力は女神サリーを前に完全復活!!
サリーの言葉に元気よく返事で返す。
「そうですか……ならよかったです。……それにしても、アルトさんってすごいんですね。あの時のレイブンは本気でした。そのレイブンと互角にやり合った。……危険と判断してカインさんがやめを掛けなければ勝負はどうなっていたかわかりませんね」
そうサリーは俺を褒めてくれた。
でも、このまま俺強者ですよアピールしたいけど、なるべく勘違いはさせたくない。
サリーを騙したくないという理由で。
そのため、俺はサリーの誤解を解くことにする。
「いえ、多分やめが掛からなくても、数秒で勝敗は決しましたよ」
「そうなのですか?」
かわいい。
「……はい。レイブンにも話をしましたが、俺が本気の彼と戦えるのは本当に数秒だけですよ」
俺がそう話すと、ふと、ある考えが浮かぶ。
俺の手の内、バラした方がいいんじゃね?
そうすれば無駄な勧誘なくなるし、サリーからの評価は下がるかもしれないけど、今後のことを考えるとそっちの方が楽かも……。
人間は楽な方に逃げたくなる。
その事に納得しながらも、話を続ける。
「実は俺魔力量平均の半分しかないんですよ。それにレイブンと互角に攻防ができたのは俺のオリジナルの無属性魔法を使って自身を強化しただけなんですよ」
俺の言葉にざわついていた周囲は静まり返る。
目的は達成したかな?
俺の株は下がり、面倒ごとから解放されたな。
サリーからの折角の評価が落ちてしまうのはショックだけど、まぁ、良いかな。
しかし、話は思っていた方向とは全く違うベクトルへと進んでしまう。
「つまり、アルトさんは自身の才能を跳ね除けて、努力のみであれほどの実力を身につけたと?」
「うん?」
あれ、思っていたより高評価?
「それに加えて自身で無属性のオリジナル魔法を作ったと……。アルトさんは本当に凄い方なのですね」
サリーは驚き、感心しながら俺のことをまたも称賛した。
それに加えてサリーの発言で周囲のざわめきが先程よりも増していった。
これは後々判明した事なのだが、俺が作ったオリジナルの魔法の数々は思っていた以上に重宝されるようなものだったらしい。
どのような人でも無属性魔法は誰でも使える。
つまり、努力次第で、特に身体強化を主につかう騎士の人たちからしたら『部位強化』の類のものは奥の手となりうる存在なのだ。
俺は自分の行った功績を見誤っていた。
そのせいでこの件がきっかけで俺は学園中から注目の的となった。
この時の俺はまだ知らないが、今回の話が貴族の子息からの流れて国から俺の編み出したオリジナル魔法の王国騎士たちに教えてほしいとの申し出が来た。多額の依頼料と共に。
俺はそれを見た時、驚くあまり気絶しそうになったのは先の話。
その後、俺はサリーの発言に「そんなことないですよ」と答えたものの、俺への勧誘は一層増してしまう。
だが、サリーが俺に気を使い、「無理な勧誘はするべきではありませんよ」と笑顔で発言してくれた為、勧誘は続かなかった。
サリーの笑顔はとても綺麗だが、怖かった。その笑顔をみた貴族子息の人たちは震え上がっていた。
俺自身、その笑顔を直接向けられたかったな……と変な事を思い始めてしまった。
……この話は置いておこう。
ただ、わかることは少なくともしばらくは平穏な学生生活を続けられそうだとわかった……もちろんぼっちでだが。
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