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「純愛のクロス」には復活アイテム、「マーベルストーン」が存在していた。
ゲームでは死んでしまったキャラに対して一定時間内に使う事で復活をさせられるアイテム。
転生当時、調べたが結果は出ず、断念したその存在。
王都を調べればその存在があるかもしれない、一縷の望みにかけて色々と調べ、可能性がある分野を学んだ。
しかし、この調べても特に何もなく、収穫はなかった。
錬金学の授業もただ、基礎をやるだけ。
本を読むも、復活アイテムの入手、錬成の情報も全く分からず進展なし。
一応、ゼフに情報収集も含めて探してもらっているが結果は同じであった。
ただ、わかった事があるとすれば、
「マーベルストーンは神が作りし石」
と書かれた絵本があったが全くその本の信憑性はかった。
最悪の手段で用意したいという淡い期待をしたのだが……。
でも、もう復活アイテムはないものとして考えた方がいいのかもしれない。
俺の運命のイベントまであと少し。
そんなことをやっているくらいなら訓練や実践経験をした方がいいだろう。
それに魔神の討伐方法も考えた方がいい。
俺と魔神の実力差は開き過ぎていて、可能性があるにしても本当に僅か。
やっぱりレイブンの協力を仰いだ方が良いのだろうか?
始めは俺一人で対処しようとした。
しかし、模擬戦でレイブンの強さを目の当たりにしてやっぱりこいつに全て任せた方が良いのではないかと思い始めていた。
レイブンは強すぎる。
俺が一対一でやったが、全力の彼とできるのは精々数秒だけ。
少しやり合っただけでも魔力の四割を使ってしまった。
ここまで差がありすぎると流石の俺も無理だと思ってしまう。
……てか何で数秒しか本気のレイブンと出来ないって言ったのにやる気なんだよあいつは。
そう、本当に数秒だけだけ。
それなのにレイブンは俺と月一でいいから本気でやるという約束をした。
しかも相当嬉しそうに。
拒否したいところだったが、あんなにも笑顔で言われてしまったら、断るにも断れない。
まぁ、とにかくレイブンに力を借りるにせよ、カインさんの説得が必要。最悪、ゲーム知識を話すことも考えた方がいいかもしれない。
とりあえずこのことは今考えることではない為、依頼に集中しよう。
俺は現在、クーインと依頼を受けている。
内容は王都周辺の魔物討伐と調査。
種類は問わず、とりあえず数を減らすことが目的。
どうも、例年に比べると魔物数が多く被害がでているとか……。
俺とクーインは王都から10キロほど離れた地点を彷徨っている。
「アルト、北東方面に反応が一つ。距離は四十メートルくらい……少し反応が強い」
「……分かった。周囲を警戒しつつ、ゆっくり向かおう」
『探知』の魔法を使っているクーインから知らせを受けた為、俺は対象がいる方向へと進んだ。
俺とクーインが現場に着くとーー。
「「………」」
その光景を見た俺のとクーインは思わず息を呑む。
そこには巨大な片刃斧を片手に持ち、人間の三倍ほどの大きさのオーガがいた。
オーガは俺とカインさんが倒したBランク相当の魔物だ。
……どうするか?
倒そうとすれば倒せる。
一対一でも無理をすれば倒せるのだが、イベント前のため怪我するリスクは避けたい。
本来ならば退散するべきだが、今回はクーインがいるため、倒せるだろう。
本当に運がいい。
正直俺は金を必要としている。
何を買うかは決めていないが、高価なアイテムを手に入れるためにお金は必須。
俺は単体で歩くオーガを見ながら作戦を考え始める。
すると、考えている俺を心配になったのか、隣のクーインが話しかけてきた。
「アルト……どうする?」
「討伐しよう。今、安全に倒すための策を考えた」
「……早いな」
「あいつ倒せば金貨五十枚は行くけどどうする?」
「………」
クーインは俺の話に少し悩む。
学園はかかる費用は基本無料。
しかし、生活必需品などの購入は実費だ。
そのため、平民のクーインには今回の俺の提案は魅力的。
クーインは少し考え、答えを出した。
「安全なんだよね?」
「あぁ、大丈夫だ。クーインと俺がいれば平気だ。それと一つ付け加えると、俺はオーガを相手に一対一でも勝てる」
「……分かった、信じるよ」
クーインはそう言い、オーガ討伐を決意。
その後、短い打ち合わせをして作戦決行準備を始める。
ただ、作戦を伝えた時に少し「マジかこいつ」みたいな顔をされたのは見なかったことにしよう。
俺とクーインは作戦準備を即座に整え、それぞれ配置についた。
俺はオーガの見張りをしながら、クーインは罠の設置終了まで待機している。
待機をし始めて一分ほどが経ち、土埃が上がった。
それが罠完成の合図。
作戦についてだが、今回は実質クーインは一人だけ。
まずはクーインの土魔法で深さ一メートル、直径四メートルほどの穴を作る。
念のため穴の中には尖った円錐型の棒状のものを複数設置。
クーインはその穴から二十メートルほど離れた位置に待機し、俺が穴のところまで誘導し、落とし穴で転倒させ『部位強化』での攻撃で倒れたやつ相手に首を切り落とす。
その際に、クーインには奴が転んだ瞬間魔法で地面を操作して、拘束してもらう手筈となっている。
「ふぅー」
俺は頭の中でもう一度作戦を整理した後、大きく深呼吸をする。
そして、剣を抜き、体に魔力を流し『身体強化』を発動する。
近くにあった手頃の石を拾い、そしてオーガに向かって本気で投擲する。
「ギャ!」
俺の投げた石はオーガの頭に直撃し、頭を押さえながら声を上げた。
そしてーー
「こっちに来い、のろま!!」
「ガーーー」
俺は大声でオーガを挑発。
言葉が通じたのか、それともただ声に反応したかは不明だが、オーガは咆哮しながら走ってきた。
俺はそれを確認しながら全力で逃げた。
……俺って逃げることしかしてないけど、良いのだろうか?
そんな考えが一瞬よぎるも、俺はとにかく逃げる。
穴までの距離はおよそ五十メートルほどで、俺のオークの距離は二十メートル。
「余裕!」
そう声を出しながら走り続けた。
数秒走り続けるとクーインが待機している場所に辿り着く。
今いるフィールドは林。
木はたくさんあるものの緑は少なく、見晴らしが良い。
「アルト!!」
俺を視認したのか、クーインは大声で俺の名前を呼ぶと魔法を発動させ、オーガ拘束のための理由の為、長さ一メートルほどの杭状のものを作成する。
俺は穴のある場所の目印部分で足をつき、穴を飛び越える。
そしてーー。
ズボ!
「ギャウ!」
俺の後を追ってきたオーガが声を上げるとともに穴で転倒した。
「いけ!」
「グギ!」
オーガが転倒したタイミングで、クーインが魔法を発射。
オーガの四肢に杭が刺さり身動きが取れなくなる。
これで死んでくれないかなと思ったが、相手は死ななかった。
それを確認後、転倒しているオーガに体を向け左足に魔力を流し『部位強化』を発動。
八相の構えからオーガの首目掛けて斬りかかる。
「ガギャ!!」
オーガはそう声を出しながら姿を魔石へと変わった。
「……終わったな」
「……うん」
随分と呆気なく討伐終了したので俺とクーインとコメントに困る。
「とりあえず、今日はここまでにして帰るか」
「……そうだね」
俺の提案にクーインは了承。
オーガの魔石を回収し、王都へと帰還した。