〈あらすじ〉
見合い話を持ち掛けられたが、きちんと向き合えないお嬢様に突然キスをした執事。
言葉で表せない感情に戸惑うお嬢様と真意の分からない執事の行く末は…⁉︎
「おはようございますお嬢様、朝ですよ」
なんだかこの会話、デジャブだ。
「起きる…」
昨晩のこともありあまり気が進まないが目を開け、 軽く伸びをして朝の空気を感じる。
すると執事はこの世に存在しないものを見るような目つきで私を見てきた。
「そんなに見つめてどうしたの? 」
訝しみ尋ねると、執事は言いづらそうに
「珍しく寝起きがいいのだな、と…」
と、あからさまに目を逸らしながら答えた。
「失礼ね、私だってすぐに起きられることくらいあるわ」
軽口を叩きながらも内心穏やかではなかった。昨日のこと、話題にされないよね?
本当は今にも逃げ出したい衝動でいっぱいなのに。 あれは私にとってファーストキスだった。夜、執事と触れた唇をベッドの中で何度も撫ぜた。ベッドメイキングしてくれた執事の微かに残る匂いに胸がドクドクと脈打っていたのを今も鮮明に思い出す。
普段は匂いなんて感じないはずなのに、何故か昨晩は執事のことが頭の中を埋め尽くして体中が疼いていた。
なんだか恥ずかしくてシーツを引っ掻いたり唇を触ったりしていると、よく眠れず悶々としたまま朝を迎えていた。
「それはそうと、早く朝食をいただきに行きましょう」
気まずくて話題を変えようと無意識に執事の手を引き階段の側まで行くと、突然執事が立ち止まった。
「お嬢様は昨日のこと、何とも思ってないのですか?」
恐れていた事態になった。
“昨日のこと”とは昨晩のキスのこと。
折角そのことには蓋をして今日を仕切り直そうとしていたのに。
「何とも思ってないわけないじゃない!
どうしていきなりあんなことしたの… ? 」
少しきつい言い方になってしまった。
感情のままに言葉を投げつけるのは私の悪い癖だと執事が教えてくれたっけ。
永遠を感じさせるほどの重い沈黙を破ったのは執事だった。
「…お嬢様にお見合いして欲しくなかったんです。お嬢様のことを一番知っているのは私で好きなのも私なのに、他の者に嫁ぐ姿を想像したら居ても立っても居られなくなってしまって…」
“好き” 唐突に頭で処理を始めたその二文字は混乱を極めるには十分だった。
執事を見ると胸がドキドキして、話していると胸が弾むのは、私が執事を好きだから…?一度認めてしまえばあとはすんなり理解できた。私も執事のことが好きなんだ。
「すみません、変なことを口走って」
「いえ、違うの! 」
一気に腑に落ちたあの感情を今伝えなければならない。 そう思ったときには既に執事の言葉を否定していた。
あとは私が想いを伝えるだけだ。
「私も…す、好き、よ…//」
執事は星のように瞬きながら手を私の背中に回した。距離がグッと縮まり、顔が触れてしまいそうなほど近づいた。
執事の胸が早鐘をつくように高鳴っているのが服の上からでも分かる。
「朝食、一時間ほど遅れてもいいですか? 」
執事の誘いを合図に、再び自室へ戻りベッドへ縺れ込んだ。
続く
次回🔞です💕
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