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小枝の折れる音がひとつ、ふたつと近づいてくる。
少女はただ、音のする方を見つめた。
葉の隙間から一人の少年が現れる。
年は、少女とそう変わらない。
背は少女より少し高い。
彼は驚いたように目を丸くし、すぐに言葉を探すように口を開いた。
「…..こんなところで、何してるの?」
少女は答えない。
声が出ない。
少年はしばらく訝しげに彼女を見つめ、しかしすぐに表情を和らげた。
「……迷った?」
少女はゆっくり瞬きをする。否定でも肯定でもない。
少年は困ったように息を吐き、けれどどこか安心させる声音でつづけた。
「ここ、危ないから…..
とりあえず、僕の家に来ない?」
少女は返事をしないまま少し首を傾ける。
少年は無理強いするように見えなかった。
ただ、放っておけないという気配が全身から静かに滲み出ていた。
「歩ける?」
少女は、ほんのわずかに足を前に出してみせる。
それを見て、少年は小さく笑った。
「じゃあ、こっち」
そういって歩き出す。
少女は、そのひとつ後ろを静かについていった。