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まだ齢8の直哉は父親から「お前と同い年の男で呪力0の猿が居る」と聞いて、廊下を駆けていた。呪力0の猿?そんなん、面白いから見に行くに決まってるやん。女中が何か自分に注意しているが聞こえないふりをする。多分、「廊下を走ってはいけません」ぐらいのことなのだろう。あー、面倒臭い。
あ、おった!あいつが多分呪力0の、さ…る…?直哉はその男を見た瞬間、身震いがした。どう見ても同い年の、8歳の子供が纏っているようなオーラではなかった。圧倒的強者。あれのどこが猿なのだ?むしろ、ゴリラじゃないか。気づいた時にはその男は直哉の目の前に立っていた。
「お前、俺になんか用かよ。」
「え、いや…あの…。」
「君、めっちゃ強いな。」
「……は?」
甚爾はその言葉がまるで理解できなかった。異国の言葉のように。この俺が?強い?猿だぞ?呪力0の。その日会った恐らく同い年であろう子供は、会う度に強い強い、甚爾くんはこの家でいっちゃん強いなぁ、と言ってきた。最初はただ単に適当なことを言って俺の反応を楽しんでいるだけなのだろうと思っていた。しかし、そいつの目はキラキラと輝いていた。…こいつ、嘘はついてねぇんだな、と確信した。そう考えると一気に興味が湧いてきた。その日から、そいつと仲良くしてみることにした。
「そういえば、お前の名前聞いてなかったな。名前は?」
子供が持ってきた柿を咀嚼しながら言った。
「禪院直哉。甚爾くんの従兄弟やで。」
「あ”ー、次期当主候補の直哉か。」
「せやで!」
「なんか、お前見てると元気出てくるな。」
「そうなん?甚爾くんが元気なら俺、嬉しいわぁ。」
「………お前って、俺の事好きなのか?」
「へ?うん、まぁ、せやな!」
「甚爾くんがこの家でいっちゃんかっこようて、強くて、凛々しくて、大好きやで!」
直哉はにこっと笑いながら言った。
きゅん。…きゅん?あ、これが…恋ってやつか?
「そぉか、俺もな、直哉が大好きだぜ。」
「…んえ?」
「ほ、ほんまに?甚爾くんも、俺の事好きなん?ほんまに?」
直哉は子犬みたいに俺の周りをぐるぐる回りながら聞いてくる。はぁー、可愛い。
「本当、本当。」
「じゃあ、俺ら、両想いってやつやな!」
直哉と甚爾は笑い合った。
「おい、猿。」
そう言われて振り向いた先には俺を猿だ、猿だと虐げるやつが居た。
「最近直哉様に媚び売ってるようだが、お前みたいなやつ相手にされてねぇぞ。」
そう言って俺を殴る、蹴る。
バキッ、ドカッ。
…あ、この気配は。
「…甚爾くん?」
そこには直哉が立っていた。恐らく俺を探していたのだろう。残念だったな、モブその1。
「な、直哉様…!?」
「おい、お前。甚爾くんに何してんねん。喧嘩売っとんのか?あ”?」
「い、いやこれは…!こいつが直哉様に生意気をやっているので躾を…!」
「そんな言い訳効かんのや。俺の”甚爾”に手ぇ出したこと、後悔しぃや。」
俺が瞬きをする間にモブその1は遠くに吹っ飛んでいた。多分、投射呪法を使ってシメたのだろう。
「直哉、さっき俺の事呼び捨てで呼んだだろ?」
「え、ほんま…!?ごめん!甚爾くん!」
「いや、別にいいんだよ。同い年なんだから、その方が親しみやすい。呼び捨てで呼んでくれよ。」
「おん、分かった。…甚爾。」
「ふは、なんだ?直哉。」
「甚爾のことは俺が守ったるからな。」
「直哉のことも、俺が守ってやるよ。」
「「ずっと一緒に居ること、約束。」」
その日以来、俺への虐めがめっきり減った。
禪院直哉
俺の甚爾をいじめる奴は●す。たまに「甚爾くん」呼びが出ちゃう。甚爾への虐めをめっきり減らした犯人。
禪院甚爾
俺の直哉をいじめる奴は●す。直哉が可愛い。