「えーーーっと、ご趣味は?」
「この関係性で今聞くのか? それを」
明彦は姉の友人だ。麗のこともいつも気に掛けてくれ、それこそ妹のように可愛がってもらってきた。
何なら昨日も、今度映画でも見に行こうかと連絡を取り合っていたくらいには長い付き合いだ。
「……そういう流れかなーって。あ、でもそういや、アキ兄ちゃんの趣味って知らんかも?」
「趣味以外に大切な問題があるだろう。どうして私と結婚しようと思ったの? と上目遣いで可愛く聞くとか」
その言葉に麗は口元を拳で隠して、キュルンと明彦を見上げている己の姿を想像した。
「なんでやねん!」
シーーン。美しい日本庭園で鳥のさえずりと、ししおどしの音が響く。
麗はツッコミが滑ったのを全身で感じていた。
明彦は本気だったのだ。本気で上目遣いで可愛く聞かれようとしていたのだ。
「…………いや、なんで私と、結婚しようと思ったん? あ、姉さんに私が危ないって聞いて助けに来てくれたん? それなら、適度なところで婚約破棄してくれてええからな。迷惑かけてごめん」
明彦には結婚のことは全く伝えていなかった。不安は隠していつものように楽しく会話していただけだった。
それなのに知っていたということは姉が明彦に頼んでくれたのかもしれない。
「このことに麗音は一切関係ない。あいつには助けなんか求められてもいない」
「え?」
(あ、いやそっか。そりゃあそうか。私、姉さんの婚約者を奪ったことを本人には伝えてないし。今アメリカに逃げている姉さんが知るわけないか。あれ? なら、アキ兄ちゃんはどうやって私の結婚を知ったの?)
「麗、俺を見ろ。よそ事を考えるな」
麗は顔を上げた。
「麗は今日から俺の婚約者だ。俺が麗と結婚したいから結婚するんだ、わかったな?」
「わかったけど、なんで?」
「それは……その、だな」
「うん」
「だからだな……ときに、その、麗は好きな人、いるのか?」
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