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第19話「隣にいるだけで」
7月18日(土曜日)。
夜空中央駅で初めて顔を合わせた二人は、映画館へ向かって歩いていた。
だけど――
まだ少しだけ、距離があった。
SNSでは何時間でも話せるのに、こうして隣を歩いていると、なぜか言葉が出てこない。
陽葵はちらっと隣を見る。
「……やっぱり、かっこいいな」
近くで見る塁は、SNSで見るよりもずっと大人っぽくて、落ち着いている。
そう思うだけで、胸がまたドキドキした。
すると、前から人が歩いてきた。
塁はさりげなく陽葵が歩きやすいように少し端へ寄り、自分が車道側を歩いた。
その自然な動きに、陽葵は気づいた。
「……優しい」
さらに駅の階段に差しかかると、塁が先に階段を上がり、振り返る。
塁「陽葵、ゆっくりで大丈夫だよ」
陽葵「う、うん……ありがとう😊」
ほんの些細なこと。
だけど、そういうさりげない優しさが、陽葵には嬉しかった。
胸の奥が、またドキドキする。
「……今日、心臓が忙しいな」
そんなことを思いながら、陽葵は塁の隣まで追いついた。
塁「陽葵、緊張してる?」
陽葵「えっ!?……ちょっとだけ😂」
塁「やっぱり?笑」
陽葵「だって……実際に会うの初めてだもん」
塁「俺も同じだよ笑」
塁が笑う。
その笑顔を見て、陽葵はまたドキッとした。
陽葵「……塁くん、笑うともっとかっこいいね」
言ってから、陽葵は自分で驚いた。
「……え、今の言わなくてもよかったのに!」
顔が熱くなる。
塁「え?」
陽葵「なんでもない!忘れて😂」
塁「いや、聞こえたけど笑」
陽葵「忘れてってば〜!」
塁は楽しそうに笑った。
そして少ししてから、陽葵を見ながら言った。
塁「陽葵も、今日めちゃくちゃ可愛いよ」
陽葵「……っ」
今度は陽葵が言葉を失った。
陽葵「……急に言わないでよ……」
塁「ごめん笑。でも、本当にそう思ったから」
陽葵は恥ずかしくて前を向いたまま、小さく笑った。
さっきまで感じていた緊張が、少しずつ柔らかくなっていく。
駅から映画館までの道。
たったそれだけの距離なのに、今日は特別だった。
今までスマホ越しだった会話が、隣で交わされている。
画面では分からなかった表情や仕草。
笑ったときの声。
そして、さりげない優しさ。
陽葵は思った。
「……もっと、塁くんの隣にいたいな」
やがて映画館が見えてきた。
塁「着いたね」
陽葵「うん!」
初めて一緒に観る映画。
そして――
初めて同じ時間を過ごす一日。
二人の夏は、まだ始まったばかりだった。
コメント
3件
わあ、第19話、読み終えました…!初めての待ち合わせ、あの距離感がすごくリアルで、胸がぎゅっとなりました。SNSではあんなに話せるのに、隣に立つと言葉が詰まっちゃう感じ、すごくわかる…。塁くんの車道側を歩くとか、階段で振り返って「ゆっくりで大丈夫」って言うところ、さりげないけど優しさが滲んでて、陽葵ちゃんのドキドキがこっちにも伝わってきました。2人の距離が少しずつ縮まる空気感が、丁寧に描かれていて素敵でした。次のデート、どんなふうになるのか気になります🌷
ミリス
956
290
脳てゃ
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